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<ベネッセこども基金MeetUp2020>「外国にルーツをもつ子どもの学びの現状」参加者からの質問への回答~茨城NPOセンター・コモンズ横田様編~

経済的困難を抱える子どもの学び支援

2020年12月5日に行われたMeetUp2020で、視聴者の皆様からたくさんの質問をいただきました。茨城NPOセンター・コモンズ横田様への質問のご回答です。

Meetup概要と当日の動画はこちら

認定特定非営利活動法人茨城NPOセンターコモンズ 

茨城NPOセンターコモンズグローバルセンター


*以下の質問への回答はこちらで一覧できます。

参加者からの質問への回答~茨城NPOセンター・コモンズ横田様編~


子ども支援の活動はいつどのように行われ、どのような方が指導者として参加していますか? 学習支援のマニュアルはありますか? 学習支援の活動を、コロナ禍でどのように実施していますか? 活動場所の確保、そのための費用の確保はどうしていますか? 通訳、翻訳者をどのように集めていますか? 高校生のサポートはどのようにしていますか? 団体の活動が広がり、発展した理由は何ですか?どうしたらきめ細やかな活動を拡大できますか? 活動を開始したいが、どこから始めたらよいかわからない。何から始めたらよいでしょうか。 学習教室や学童の参加者はどのように募集し、どのくらいの方が集まりますか。リーチは難しくないでしょうか。 「子どもの最善の利益」とは何と考えますか? 日本人が持つ、偏見、思い込みなどをどのように解決したらよいでしょうか。 行政との連携はどのように行っていますか。コツや肝などがあれば。。 小学校の先生方に、外国ルーツの子どもの言葉の壁問題を理解してもらえる情報(サイト、参考文献など)はありますか? 外国ルーツの子のLDなど発達障害が疑われる子どもの対応はどうされていますか。情報は対応のご経験はありますか? 障害のない外国ルーツの子どもでも「合理的配慮」を要望できるのでしょうか。 茨城県の特別選抜(3教科受験)の合否の判断はどうしているのでしょうか。 母語教育と思考の関係が知りたいです。第二言語とは何が違うのでしょうか。 子どものサポートには保護者が欠かせないと思われますが、その観点で保護者サポートはどの程度していますか。 家庭科教育が専門ですが、家庭科教育だからこそ外国人生徒に支援できるあり方は何かありますか。 日本国籍を持っている子どもと持っていない(持てない)子どもの違いは何でしょうか。

子ども支援の活動はいつどのように行われ、どのような方が指導者として参加していますか?

■アフタースクール/小中学生毎週土曜日14:00~16:00
 *コロナの影響で休止中 ■学童保育/平日夕方

学習支援はフルタイム2名、パート2名、多文化保育はフルタイム2名、パートタイム7名、責任者1名。そのほか学習支援や通訳翻訳で必要に応じて協力いただく有償メンバーが10名。
近くの高校生も入れ替わりで8名くらい学童に来てくれています。

学習支援のマニュアルはありますか?

レベルがバラバラなので、多様な日本語指導や学習指導用の教材やプリントを用意し一人ひとりに合わせて使用しています。
中学生など母国での教科学習が進んでいる場合は、母語の用語集をもちいて母語から理解する方が効果的な場合もあります。

学習支援の活動を、コロナ禍でどのように実施していますか?

登校できない6月までは学童保育も閉鎖、学校再開後は利用児童が減少しています。
中学生向けに土曜に実施していたアフタースクールが教える大学生が来られないこともあり停止が続いています。
オンラインでの対面での日本語や学習の支援は今年からできるようになりました。

活動場所の確保、そのための費用の確保はどうしていますか?

"水害で使われなくなった民家を自分たちで改修してその一部を教室にしています。改修はまちづくり会社をつくり、そこが借入をしたり国の補助を得て3千万円で行いました。
学習支援や保育を行うNPOは会社に家賃を払っており、会社はその収益で借入を返済するスキームにしています。"

通訳、翻訳者をどのように集めていますか?

もともと学校で通訳をしていた人やハローワークで通訳をしている人に声をかけ、パートタイムながらほぼ毎日動ける通訳が学習支援員や保育スタッフをしながら必要に応じて翻訳や通訳もしています。それ以外は、大学などを通じて留学生に声をかけるなどして都度依頼しています。

高校生のサポートはどのようにしていますか?

学校への支援は小学校中学校がメインで、高校の場合は、高校からの要請があれば訪問しています。日本語指導の教材の照会があれば本を貸してみたり、進路指導での相談があれば出前キャリアセミナーもします。今後、高校生同士の横のつながりづくりを計画しています。

団体の活動が広がり、発展した理由は何ですか?どうしたらきめ細やかな活動を拡大できますか?

10年前に県の緊急雇用予算での委託ではじめた際、県にもノウハウがなく、他県の例を参考に親向けイベント、プレスクール、進路ガイダンス、放課後の補習などから始めました。
県の委託がなくなったあとも、民間助成を毎年申請し、そのたびに新たな要素を加えてきた結果、活動の幅が拡大しました。来る相談を断らずに対応を模索した結果、対応能力が拡大しました。

活動を開始したいが、どこから始めたらよいかわからない。何から始めたらよいでしょうか。

私は、子どもの不就学が気になったので、教育委員会、日本語教室、派遣会社、などブラジル人に接点のある人に声をかけ、情報共有をする会議を開きました。
ママ単位であれば、外国人ママの体験や想いを聞く料理講習会を兼ねた食事会をPTA企画で行うことをお勧めします。通訳さえいれば実行できます。

学習教室や学童の参加者はどのように募集し、どのくらいの方が集まりますか。リーチは難しくないでしょうか。

チラシを近くの学校で配布してもらいます。有償だと配布してもらいにくいときもあります。
子育てサロンは保育園での配布を市を通じて依頼しています。けれど一番は外国人の人とよくつながっている人からSNSで流してもらうことや、口コミの方が伝わりやすいです。
紙芝居などの楽しいイベントだと日本の親子連れも参加しやすいです。

「子どもの最善の利益」とは何と考えますか?

自分の人生を自分で決められること。
今支援している小学6年生は、親が中学進学を拒否します。国に連れて帰り嫁に出すときに教育が邪魔になると思い込んでいるためです。別の家族は、就労できない資格で国にも帰れず、自律援助ホームの利用も困難です。(就労できないから)
いずれのケースも自分はどうしたらいいかわからないまま絶望したり、無気力無責任になったりしがちです。この縛られた状況からどうしたら解放されるかを考えています。

日本人が持つ、偏見、思い込みなどをどのように解決したらよいでしょうか。

報道や一部の問題事例によりステレオタイプになりやすいので、直に外国人当事者(まじめに頑張っている人の方がいい)の話や想いを通訳を交えてでもきくと見方が変わりやすいです。
通訳や状況を知っている人が「なぜこうなるのか」を説明することで、日本人側が歩み寄ろうと態度を変えることもあります。

行政との連携はどのように行っていますか。コツや肝などがあれば。。

最初からお金を出してと言っても実績を見せろと言われるのがわかっているので、まず民間助成で、本来行政がやるべき事業を自主的に行います。また、学校への通訳派遣や翻訳などを積極的に引き受け、現場から「あそこには世話になっている」という声がでると市役所なども相談してくれるようになります。

小学校の先生方に、外国ルーツの子どもの言葉の壁問題を理解してもらえる情報(サイト、参考文献など)はありますか?

今回紹介された文科省のサイト、
静岡県浜松の「浜松NPOネットワークセンター」のWEBに外国ルーツのこどもの教育に関するリンク集があります。
(→こちらをご覧ください)

外国ルーツの子のLDなど発達障害が疑われる子どもの対応はどうされていますか。情報は対応のご経験はありますか?

就学前の保育園児と親で市の児童発達支援の相談室に相談にいったり、親が希望する場合児童相談所の検査に通訳が同行したりしました。
就学済みの場合、学校と連携して保護者に特別支援に通級するメリットを伝えたり、当団体の学童で様子をみながら、学校や学童でどのような配慮や指導をするか情報交換をするなどしています。
特別支援学校よりも、通訳がいて母語で話してくれる人がいる学校がいい場合もあります。

障害のない外国ルーツの子どもでも「合理的配慮」を要望できるのでしょうか。

障がい者差別禁止法のように法で規定されているわけではないでしょうが、考え方は同じだと思っています。ここは日本だから、とか、本人の自助努力や適応ばかり求めるのではなく、試験問題にルビをふるなど、同じスタートラインに立てるように配慮することはすべきだと考えます。それがあることで本人の意欲も引き出しやすくなります。

茨城県の特別選抜(3教科受験)の合否の判断はどうしているのでしょうか。

国数英の点数と面接の評点、中学の内申書などから選抜しているものと思います。高校ごとに、特例選抜が2名、3名、6名などいろいろです。それをこえた応募があれば総合点が高い生徒から選抜されるのではと思われます。
また、日本語での意思疎通がどれくらいできるか、3年間続けられる気持ちがあるかも面接でみていると思います。

母語教育と思考の関係が知りたいです。第二言語とは何が違うのでしょうか。

下記リンクのサイトがとても参考になります

関西母語支援研究会

子どものサポートには保護者が欠かせないと思われますが、その観点で保護者サポートはどの程度していますか。

保護者の困りごとにできるだけ協力しています。
就職、通院、日本語指導、家探し、銀行口座づくり、DVや生活保護の相談対応、保育料減免まで。
親も日本語習得に努力し話せる場合、幼児期から家でも日本語で話すことが多いですが、そうした親にも母語の重要性を伝えます。言葉の遅れなど発達のことで悩む親とは一緒に専門相談機関にいったり、当会でできる母語つきの療育支援を行ったりもします。

家庭科教育が専門ですが、家庭科教育だからこそ外国人生徒に支援できるあり方は何かありますか。

小中学校では、進学後のことを考え、読み書き、漢字、算数が少しでも積みあがるように国際教室で教えています。理科、社会、家庭科は母学級で学んでいると思いますが、配慮が弱い場合、授業についていけないことが多いと思います。
日本食に慣れていない子どもは野菜不足から肥満傾向、便秘や体調不良が起きやすいです。親の帰宅時間が遅いと就寝時間が遅く生活リズムができていないことで登校渋りもおきます。
家庭の状況が違うことを教員側が知る必要があります。
その子のルーツの国の料理を紹介したり、芋や豆の原産国としての母国を紹介したりすると、自国の文化に興味や誇りをもち意欲が高まることもあります。保護者の協力もえて食育をしてはどうでしょうか。

日本国籍を持っている子どもと持っていない(持てない)子どもの違いは何でしょうか。

将来なれる仕事に違いがあります。警察官や自衛官には日本国籍がなければなれません。教員や保育士も採用する自治体が国籍条項を有していれば正規の職員にはなれません。選挙権などの権利主体になれるかどうかでも差がでます。
日本国籍がない場合、在留資格、カードがなければ日本に長期に滞在することができません。

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