公益財団法人ベネッセこども基金

活動実績

MeetUp2021#2 『社会的養護のもとの子どもの現状と課題』

経済的困難を抱える子どもの学び支援

12月6日、ベネッセこども基金MeetUp2021#2『社会的養護のもとの子どもの現状と課題』をオンラインにて実施しました。


児童養護施設などで育つ子どもたちのよりよい育ちや学びについて、児童養護施設の施設長と児童養護施設の支援をしている当財団の助成団体の代表の方々にご登壇いただきました。

当日の映像と資料、時間内に回答できなかったご質問についての登壇者からの回答が準備できました。

◆当日の映像はこちらから

※一部のデバイスからは、ご覧いただけない場合があります。

※万一、画像から動画が視聴できない場合は、こちらのURLからお試しください。

MeetUp2021#2『社会的養護のもとの子どもの現状と課題』



※ご視聴後はぜひアンケートにご協力をお願いいたします。

ベネッセこども基金MeetUP2021#2『社会的養護のもとの子どもの現状と課題』アンケート



◆投影資料はこちらから

早川悟司氏_社会的養護とその背景にある『児童虐待』そして市民の役割を考える.pdf

村上綾野氏_HUG for ALL活動紹介.pdf



◆質問への回答はこちらから
※質問の回答はこちらから一覧でもご覧いただけます。

MeetUp#2 QA.pdf

質問1 児童養護に関わるための資格とは?
 ※事務局回答
質問2 施設の心理士の役割や、心理士と職員の連携はどのようなもの?
 ※早川様ご回答
質問3 子どもの自立、自律への対処について知りたい!
 ※早川様ご回答
質問4 入所理由による子どもへの対応の方法は異なる?
 ※早川様ご回答
質問5 一時保護の期間延長が気になる 
 ※早川様ご回答
質問6 里親制度の現状が知りたい!
 ※早川様ご回答
質問7 虐待、マルトリートメントを無くすにはどうしらたよい?
 ※早川様、村上様、大山様ご回答

質問1 児童養護に関わるために取得した方がよい資格は何ですか?

※事務局より回答

もの生活に直接関わり、支援をする職員として配置基準も定められている職種が「保育士」「児童指導員」です。
本日ご発表いただいたチャイボラが運営するチャボナビサイトで詳しい説明をしています。

詳しくは、 チャボナビサイト をご確認ください。

児童福祉法により、医師や看護師の配置も定められています。


質問2 施設の心理士の役割や、心理士と職員の連携はどのようなもの?

トラウマや愛着の問題を抱えた子も多いと思いますが、施設の心理士さんの役割や、心理士さんと職員さんの連携など教えて頂けると幸いです。 また、外部の心理士が施設に関わる際に気を付けることなどありましたら伺いたいです。

※早川様よりご回答

心理士の役割について、国の通知では(1)対象児童等に対する心理療法、(2)対象児童等に対する生活場面面接、(3)施設職員への助言及び指導、(4)ケース会議への出席、(5)その他、となっています。
外部心理士との連携も含めて、具体的な支援は児童自立支援計画書に沿って実施しています。ケア職員の場合は、日常生活上で子どもの不適切な行動に対して時には指導的、あるいは否定的に関わらなければならない場面もありますが、心理士は日常生活とは一線を画し、子どもにとって常に中立的・肯定的な存在として関わることができます。
また、子どもと職員の関係性に対しても客観的に助言する役割も期待されています。


質問3 子どもの自立、自律への対処について知りたい!

高校まではある程度援助ありますが、大学を目指す時の支援はまだ手薄かと思います。 社会に出た瞬間から自立・自律を要請される子供にどう対処されているのか?お聞きしたいです。

※早川様よりご回答

近年は文科省の就学支援制度等、高等教育進学に関する金銭的な支援は充実しつつあります。それでも、高校卒業を契機にアパート等で一人暮らしに移行することが未だに多く、昼間の生活と夜の生活が一遍に変わることで生活が崩れ、中退に至ることも少なくありません。
当施設では高校卒業後20歳までの措置延長、さらに22歳年度末までの社会的養護自立支援事業による入所支援継続を標準にしています。この間、ステップルームと称している近隣のアパートを使って一人暮らしの体験を繰り返します。個別のアセスメントに基づく「社会的自立に向けた支援計画書」を策定し、段階的・計画的な地域生活移行に向けた支援を行っています。


質問4 入所理由による子どもへの対応の方法は異なる?

児童養護施設には、虐待だけではなく、親と一緒に過ごすことができない子も一緒に生活していると思うのですが、施設に入所した理由によって子どもたちへの関わり方や支援が違うのか気になりました。

※早川様よりご回答

現在、家庭裁判所の許可は要しておらず、児童相談所の職権保護となっています。これについて国連からは批判があり、司法の関与が求められています。来年度の児童福祉法改正に向けても、現在国において議論がされています。


質問5 一時保護の期間延長が気になる

一時保護を2ヶ月越える場合、家庭裁判所の許可を取るのでしょうか?

※早川様よりご回答

子ども一人ひとりに合った支援ができるように、個別のアセスメント票を用いて支援ニーズを子どもと自身の間・職員間で把握・共有し、自立支援計画書を策定します。これらは定期的、あるいは必要に応じて見直し、職員間で支援に齟齬がないように努めています。


質問6 里親制度の現状が知りたい!

社会的養護が施設でなく、家庭的な雰囲気での里親制度が広まっていくとよいと思いますが、なかなか進まないように感じています。その辺りはどうなっているのか、現状が知りたいです。

※早川様よりご回答

諸外国で社会的養護における里親の比率が多い国では、地縁・血縁による里親が多数を占めています。国連は、里親を推奨しているわけではなく、第一に実親による養育を支援すること、やむを得ず里親に預けるときは見ず知らずの土地や家庭ではなく地縁・血縁を優先すること、里親の姓を里子に名乗らせる等家庭復帰の妨げになることをしないことなどを求めています。(国連・代替的養護の指針)

日本でも実親と離れて暮らす子どもの大半は地縁・血縁のある家庭で生活していますが、これらのほとんどが里親として認定されていません。日本でも「親族里親」という制度はできましたし、これらが十分に周知・活用されればたちまち日本は里親大国になる可能性があります。

一方で、現在施設で生活しているのは多くの里親が望んでいない二歳を超えた子ども達です。こうした子どもたちも里親で養育するならば、相当なバックアップ体制の整備が必要です。また、元の家庭から離れた遠隔地の里親委託、里親の姓を名乗らせる等をしていることで、実親の同意を得ることが難しくなっています。

実親が子どもと面会する際には、里親家庭に直接会いに行くことができず、平日の昼間に担当福祉司等の立会いの下、児童相談所で行わなければなりません。里親も児童相談所に引率することが求められますし、里親家庭から児童相談所が離れた場所にあることも多く、面会を一度するだけでも様々なハードルがあります。

このように現在の里親制度は子ども・実親・里親のいずれから見ても使いやすい制度になっておらず、子どもの最善の利益の観点から大きく改善をする必要があります。


質問7 虐待、マルトリートメントを無くすにはどうしらたよい?

社会的養護はあくまでも事後対策だと思っています。 それも大切な役割ですが、そもそも虐待、マルトリートメントを無くすには何が必要だと考えてらっしゃいますか。 皆さんにお聞きしたいです。

※早川様よりご回答

確かに、現在の社会的養護は事後対応という面は否めません。子どもが安全に元居た家庭や地域で生活するために、施設や里親も子どもが送られてくるのをただ待っているのではなく、自ら地域に出て行って、家庭も含めた子育てのシェア(共有)を目指すべきだと考えています。家庭を密室化せず、地域の中で育ちをシェアする仕組みを作ることで親の負担を軽減することができ、結果として虐待の予防にもつながると考えています。

※村上様よりご回答

私は、虐待やマルトリートメントをなくすために一番必要なのは「社会の自己責任論や冷たい目をなくすこと」だと思っています。
若いパパママが子どもの癇癪に立ち往生していても見て見ぬふり。「子どものことは家族の責任」「子育てできないのは親が悪い」と親御さんたちを責める人もいるのが、今の日本の「あるある」だと思います。

「子どもは社会みんなで育てよう」
「子どもを産み育てるのは大変だよね、ありがとう」
「子育てなんて困ることだらけだから、何でも頼ってね」
「初めての子育てで、うまくいかなくて当然だよ」

こんなふうに、子育てをしている家族を温かく見守り、困ったときには気軽に他人を頼ることができる社会になっていれば、追いつめられた保護者が子どもを虐待することは減ると思います。
そして何より、子育て中の方々に親身に寄り添い、大変な時には頼っていいんだよ!って言ってくれる存在があること。これが一番大きいんじゃないかと思います。

子育てに悩むパパやママに、経済的なことをはじめ、いろんなことで悩むパパやママに、虐待をしてしまったり、そのほかいろんな問題を抱えるパパやママに、「指導をする」のではなく「寄り添い、親身に支える」存在があることがきっと何より大切なのだと思います。

※大山様よりご回答

ここについては私は職員の確保と定着を促す事業をしているのでその観点から考えを述べたいと思います。

そもそも、社会的養護が事後対策であるという認識は私はありません。
施設に来た子、その親に寄り添いサポートすること自体が虐待やマルトリートメントを防ぐことになると思っていますし、施設で育った子がしっかりと施設で愛情を受け自己肯定感を高めることは虐待を未然に防ぐことにもつながります。
また、施設は今はまだ施設に入所している児童の対応に追われている部分が多いと思いますが、今後は高機能多機能化していき里親さんや地域のサポートにも注力していきます。
施設が強くなることで、救える家庭が増えると思います。

そのような観点からも私たちは職員の確保と定着が今後さらに重要になってくると考えています。

ご登壇いただきました早川様、村上様、大山様ありがとうございました!

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