公益財団法人ベネッセこども基金

活動実績

『HEnDA』高校生英語ディベート大会の世界大会の様子をレポートします

よりよい社会づくりにつながる学び支援

英語ディベートは、現在、英語教育の中で最も注目を浴びている言語活動の一つです。その背景には、近年の学習指導要領改訂により、言語活動を通した指導が「英語4技能〈読むこと、聞くこと、書くこと、話すこと〉」から「英語4技能5領域〈読むこと、聞くこと、書くこと、話すこと(発表)、話すこと(やり取り)〉」へと方針が転換したことが関連しています。英語ディベートは、英語で意見を提示(発表)するだけでなく、相手とのやり取りも求められる活動であり、そうした力が自然と育まれるからです。

ベネッセこども基金は、子どもたちのこうした力がより育まれることを願い、2016年より高校生英語ディベート世界大会(World School Debate Championship、以下WSDC)を支援しています。こうした支援を通じて、英語4技能5領域の育成をサポートするとともに、世界の様々な地域やコミュニティに主体的に関わり、社会をよりよくしていける存在であるソーシャルリーダーが日本から生まれることを目標としています。

2024年のWSDCはセルビア共和国で行われました。68か国の代表選手が一堂に会した開会式で、他国の選手との交流を楽しむ合間に日本選手団からお話を伺いました。

ディベートから得られる学び

・ディベートは授業などでの発言の場に活かせるだけでなく、勉強そのもののモチベーションを上げることができます。例えば、世界史の勉強は「ディベートのときに役に立つ知識」、数学の証明は「論理的な構成展開」のように考えることが出来、勉強のモチベーションが上がります。(鐘ヶ江選手)

・ディベートは「話すこと」がメインと思われがちですが、「相手の話を聞いて理解し考えること」も重要な要素です。自分は将来医療に携わりたいと思っているのですが、患者さんや周りの人の話を聞いて理解したり、病を社会的な要因と結び付けて考えたりできるようになりたいです。(石田選手)

・英語ディベートに加えて、模擬国連の活動もしています。(2024年4月にニューヨークで行われた模擬国連国際大会に日本代表として参加)。どちらも楽しく取り組んでいますが、ディベートは表現力やスピーチ能力を磨く楽しさがあります。両活動において、国際問題や他国の考え方をリサーチするために海外の文献や記事を読むことがあり、日本ではなかなかインプットできない情報・価値観を得られることから、現在はジャーナリズムに興味を持っています。(菅野選手)

WSDCから得られる学び

・昨年度も日本代表として参加しました。海外の選手との交流がたくさんできたのでとてもよい経験になりました。一方で「世界の壁」を感じて悔しい思いもありましたので、その経験を基に今年度のチームメンバーに感情面の保ち方などのアドバイスをしました。今年度は、昨年度果たせなかった予選ラウンド突破、さらには日本チームとして一番良い結果を残せたらと思っています。(茂木選手)

・チームメンバーとの練習で大きな刺激を受けており、得た学びを学校でのディベート部の練習に反映させています。また、今回の世界大会が私にとって初めての海外渡航となりました。WSDCに向けてオンラインで海外の方と試合をしてきましたが、オンラインだと試合中心になりますので、このように現地で海外の方と交流できることは貴重な経験です。(浦上選手)

大会初日・2日目

日本代表チームは練習に練習を重ね、WSDCに備えてきました。(昨年度も日本代表として参加した鐘ヶ江選手・茂木選手は、選考会の前から「代表になる!」という意気込みで、何度も一緒に練習をしてきたとのこと。)

WSDC初日は事前調査型が2試合。強豪バングラディシュとの対戦では敗れてしまいましたが、シリアとの対戦ではジャッジ満場一致の勝利となりました。2日目は2試合とも即興型でしたが、対スロバキア戦、対エストニア戦のどちらも勝利となりました。 論題は「ユーゴスラビア紛争後の対応として、ICTY(国際刑事裁判所)ではなく、TRC(真実和解委員会)の方が良いか」など、非常に複雑なものでしたが、それに対して選手は非常に力強いディベートを見せてくれました。またそれ以上に、試合後に対戦相手と和やかに交流したり、ジャッジに真摯にフィードバックを求めたりする姿がとても印象的でした。

写真1:試合後にシリアの選手と交流する鐘ヶ江選手(右)と石田選手(左奥)

写真2:試合後にジャッジにフィードバックを求める茂木選手(右)、浦上選手(中央)、菅野選手(左)

WSDCの約2週間、日本チームがベストを尽くせるよう、みんなで応援していきましょう!

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