活動実績
【外国ルーツの子どもの学び支援】キャラバン in 大阪で新たな「つながり」づくり

開催のきっかけ
ー外国ルーツのこども支援団体への助成を通じてー
2024 年時点で日本国内の在留外国人は約 377 万人(総人口の約 3%)。離島や山間部などでも増加傾向にあり、支援の担い手不足といった課題が明らかになっています。
ベネッセこども基金では、「経済的困難を抱えるこどもの学び支援」助成を通して外国ルーツのこどもの学び支援に取り組んでいる各エリアの団体と連携する中で、地域によって出身国の傾向や課題の背景が違うことから、団体の活動が地域ごとに独立しやすく、知見や情報共有の場が不足していることが見えてきました。
そこで、外国ルーツのこども・若者向け専門教育支援機関である YSC Global School とベネッセこども基金が協働し、支援団体ネットワークの立ち上げに向け始動しました。
キャラバン in 大阪
「注目してや!うちらの力‼ 地域・学校・行政発 ~多文化多言語の若者の「はたらく」を考える~」
ネットワーク構築のためまず実施したのが、外国ルーツのこどもの支援者と関係者の交流や意見交換の場づくりを行い、全国各地を回る「キャラバン」企画です。
2024 年度は香川、北海道の 2 か所で開催し、2025 年度は大阪からのスタートとなりました。

大阪市は外国人住民が 5.97%と、政令指定都市の中で最も高い比率(2023 年 9 月時点)であり、何十年にもわたり多様な文化や言語を持つ子どもたちを支援してきた先進地域です。今回のキャラバンでも、「教育」から一歩進んだ「就労」をシンポジウムのメインテーマに、実践事例を紹介し、今後の取り組みに繋げてもらうことを目的としたプログラムとなっています。

■1日目:シンポジウム開催
基調講演として、(公財)とよなか国際交流協会事務局長の山野上 隆史さんが所属する「子どもの夢応援ネットワーク」での実践事例と、課題の報告がありました。
2018 年頃から就労支援に取り組む中で「支援の制度整備が進んでいない」ことが見えてきたそうです。
また、家族と渡日した、あるいは日本で生まれ育った外国ルーツの若者は、言語の壁や日本社会の中で自身のアイデンティティの揺らぎを実感したり、在留資格の壁に当たったりと、日々困難を抱えながらも、十分な支援がない現状があります。
今の若者たちの"次の世代"まで見据え、日本社会を支える一翼を担ってもらうと同時に、「ただ働ければ良い」のではなく、やりがいや自己実現に繋がるかどうかも含め、「多言語多文化を活かす『はたらく』の未来をしっかり描きたい。そのために必要なことを皆さんで明らかにしていきましょう。」と提起されました。
当事者の声パネルトーク
―「わたしの"はたらく"のいま...」―
次に、当事者である多文化/多言語ユースの声を聞きました。

▲左から、コーディネーターの金 光敏(キム クァンミン) さん、当事者ユースの栫・ウィリアン・勇輝生 さん、児玉・ダ・シルバ・ライイス・カツラ さん
パネリストの二人はどちらもブラジルにルーツを持つ若者です。日本で生きていくため、家族を支えるために日本語は必然的に身に着ける必要がありました。しかし母国語ではない言語を学ぶには、授業進度とのずれがなかなか埋められず苦労することもあったそうです。また、学生の頃は外国での生活や母国に行きたいという夢を持っていた二人でしたが、日本で生活に苦労する家族を置いて自分の希望を叶える決心がつかず、夢をあきらめた経験があります。

「こどもの頃の自分が、今のように声を上げることはできなかったと思う。現在同じ境遇のこどもや若者のために、支援者の人たちが声を吸い上げて、いろいろな形で発信してくれたら嬉しいです。」と語る栫・ウィリアン・勇輝生 さん

「『外国人が頼っても良いのかな?』と不安に感じることも多い。外国ルーツの若者が頼りやすい居場所が、今以上に増えてくれたらいいなと願っています。」と語る児玉・ダ・シルバ・ライイス・カツラ さん

最後にコーディネーターの金さんからは、「在日外国人の就労は、当人だけでなく家族全体に関わる大きな課題です。また、日常会話は堪能でも実際の就職には客観的に証明する資格がどうしても必要となります。"資格受験のために仕事を欠勤すると賃金が減ってしまう"というジレンマに悩む若者も多いため、後押しできる制度があればと考えています。今回参加してくれたパネリストの皆さんは3か国語を話せる方もいます。それらの能力を日本が活かせればさらに経済活性や地域活性が進むはずです。」と問題提起があり、「困っている外国ルーツのこどもたちを支援する」という発想ではなく、「この人たちの可能性をどう育むのか?」という視点で考えていきたいと締めくくりました。
パネルディスカッション
―多文化多言語が活きる『はたらく』の未来―
シンポジウム後半は、学校、地域の支援団体、行政それぞれの現場で支援や制度立案に取り組むパネリストの方々と共に、実践事例の共有と議論を行いました。

▲左から、山野上 隆史さん(コーディネーター)、
パネリストの森山 玲子さん(大阪府立大阪わかば高等学校教員)、
山本 晃輔さん(関西国際大学准教授)、
上田 マルセラ マユメさん(島根県東部高等技術校定住外国人就職支援コーディネーター) 、渡部 大輔さん(島根県東部高等技術校 副校長)、
森 貴昭さん(厚生労働省 職業安定局 外国人雇用対策課 課長補佐)
各パネリストからの発表を受けて、参加者の意見交換に向けて4つのキーワードが提示されました。
●就労に向けた支援はどうあるべきか
●外国人を受け入れる事業所とどうつながり、開拓するか
●切れ目ない仕事、生活をどう支援するか
●在留資格はどうあるべきか
参加者意見交換
―それぞれの立場で取り組めることを再認識―
最後に、参加者同士での意見交換の時間が設けられ、シンポジウムで問題提起されたテーマや参加者自身が現場で感じている課題感、これまでの成功事例等について話し合いました。

グループによって議題は様々でしたが、一部では「高校卒業が就職の前提条件にも関わらず進学先の選択肢が限定的である」ことや、「受け入れ企業の日本語要求レベルが高すぎる」といった課題が共有され、「過度な日本語レベルを要求するよりも、多様性を受け入れる社会への変革が必要だ」という意見が挙がり、「そのためには、企業向けに意識変容のプログラムも必要」であることも議論されました。
また、「成功事例やロールモデルを収集し、関係者へ共有すること」の重要性も議論になり、初日のシンポジウムを終えました。

■2日目:教育現場でのフィールドワーク
シンポジウム翌日は、大阪市内にある学校の日本語教室・民族学級の授業を見学しました。

大阪府立大阪わかば高等学校では「N論理国語」という授業を見学しました。違う国のルーツを持った生徒が一緒に同じ授業を受けるため、それぞれの母国語毎にネイティブの先生が授業内容を通訳し、学生の理解を深めています。また、要所で授業を区切り、全員が十分に理解してから先に進めるきめ細やかな支援があり、参加者は感心した様子で見学していました。
参加者の感想
―共感やつながりが、次の取り組みの原動力に―
2日間にわたり開催された今回のキャラバン in 大阪。参加者の感想を一部ご紹介します。


教育から就労という新たな切り口での情報共有に加え、孤立しがちな支援者の方々が互いのエピソードに共感し、つながりを持つ機会となったことで、参加者の満足度が高いプログラムとなりました。
運営に関わっていただいた皆様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

3月には北陸でのキャラバンを実施予定です!
ご興味のある方はぜひベネッセこども基金の Facebook アカウントをフォローして情報をお待ちください
構成/中屋葉月