コラム
防犯 小中学校へのスマホ持ち込みと、子どもの安全
安全インストラクター武田信彦のコラム
「一般市民による防犯とは?」(第30回)
これまで文部科学省では、小中学校への携帯電話やスマートフォンなどの持ち込みを「原則禁止」としていましたが、この春、一部の地域で学校への持ち込みを許可するガイドライン案が公表され、話題になっています。文部科学省も今後、見直しに向けて各方面からの声を集めていくようです。
携帯機器の持ち込み許可の背景には、特に災害時に子どもが保護者と連絡が取れるようにしようという、「安全」への意識があります。ライフスタイルが多様化する中で、いざというときの家族との連絡手段をしっかり確保することは、お互いの安心にもつながります。一方で、歩きスマホによる事故をはじめ、学校内での不適切な使用、インターネットやSNSを通してのいじめや犯罪被害など、連絡手段以外の面におけるリスクへの備えも欠かせません。
ところで、平成30年北海道胆振東部地震では、「ブラックアウト」とよばれる大規模停電が発生しました。スマホや携帯機器についても、通信障害などで一時つながりにくい事態に。災害時には、あらゆる状況が想定されます。いまの時代だからこそ、「スマホが使えなくなったら、どうする?」も、準備しておく必要があるのです。地震発生直後は、命を守るために自ら判断して行動しましょう。身を守る姿勢、安全な場所や避難所、家族との集合方法などについての確認は、定期的に行うことが一番です。
また、防犯についても、「スマホを持たせたから安心」ではありません。スマホはあくまでも連絡手段であり、直接的に身を守ってくれる道具ではないからです。予防する習慣や、人との距離感のとり方、逃げる場所の確認など、「自ら身を守る力」が欠かせません。
防災、防犯のためにスマホの持ち込みを検討...といっても、このようにスマホは万能ではありません。「大人の安心」と「子どもの安全」は、必ずしもリンクしないということを心に留めておき、いざという時本当に大切なことは何なのか、子ども目線での安全対策を考え、進めていくことが重要といえるでしょう。
※ここでご紹介した内容は、2019年4月現在のものです。
参考:初めてのスマホ安心ガイドブックはこちらからご覧いただけます
安全インストラクター
武田 信彦さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。 子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。