コラム
防犯 「聖域なき防犯対策の大切さ」
安全インストラクター武田信彦のコラム
「一般市民による防犯とは?」(第36回)
も、全国で防犯関係の講演会が開かれています。講師として各地をめぐりながら最近とくに強調しているのは、「聖域なき防犯対策」の大切さです。すなわち、「ここは大丈夫」「ここは安心だね」を勝手に決めないこと。防犯の取り組みでは、このように安全・危険を決めつけてしまうことがときどき見受けられます。
・知らない人に気をつけよう
→ 知っている人、面識がある人は大丈夫
・この道は危ないから歩かないように
→ ほかの道は安全だから大丈夫
・放課後の時間帯がとくに危ない
→ 朝の登校時間は大丈夫
・外を歩くときは気をつけよう
→ 集合住宅や自宅の前は大丈夫 など
「ここは大丈夫」と決めつけるのはもちろんのこと、「ここは危ない」「ここは気をつけよう」と指摘することで、意図せずとも防犯上の聖域を設けてしまうこともあるのです。
他人に対する意識の向け方にも注意が必要です。特定の社会的背景を持った人や、外見だけで「危ない人かもしれない」と決めつけることは、差別につながるだけでなく、雰囲気や外見で判断して「この人は大丈夫」といった安心意識を持つことにもつながります。
街を防犯の視点で見るときにも、同じことが言えます。きれいな街、人通りが多い道、明るい商店街...だから安全だよね、と決めるつけることは防犯の聖域となってしまうのです。聖域を設けた瞬間から、「気をつけなくても大丈夫」といった心の隙が生まれやすくなります。
学校安全の現場でも、ときどき気になることがあります。侵入者は正面玄関から入って来る想定、業者と思われる人は顔パス、正門は利便性のために少しだけ開けたまま...。「大丈夫だよね」「あり得ないよね」が、防犯上の聖域となり想定外の事態を生み出していくのです。
「犯罪はいつどこで起きるかわからない」という気持ちを忘れないこと。いつでも周囲に意識をむけて、「想定外だった...」が起きないよう、備えておきたいものです。
安全インストラクター
武田 信彦さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。 子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。