コラム
防犯 広がる学生防犯ボランティア
安全インストラクター武田信彦のコラム
「一般市民による防犯とは?」(第39回)
新年が始まりました。安全で穏やかな一年になりますように。 さて先日、自治体が主催する、学生防犯ボランティアを対象とした研修会にて講師を務めました。この研修会はかれこれ10年近く開かれており、とくに学生が主体的に参加していることが特徴的です。自治体の担当職員とともに、学生の実行委員が内容を企画し、ポスター制作や会場での司会進行も高校生が担っています。今年の研修会でも、各地域で活躍する学生防犯ボランティアのみなさんが多数参加しました。
思い返してみると、私が防犯活動を始めたのは大学1年生のときです。当時は、「防犯ボランティア」というものがはっきりと確立していなかったので、学生が参加できる分野としてはほとんど認知されていませんでした。逆にそのような状況だったからこそ、モチベーションが高まり、たくさんの学びを得ることができたのかもしれません。特に、世代を越えてさまざまな人々と出会い、ともに地域活動を行ったことは、学生生活だけでは得られない貴重な経験となりました。社会や地域が抱える課題と向き合い、「自分たちにも何かできる!」と実践する大人たちの姿が、学生だった私には大きなメッセージとなったのです。現在、講師として学生防犯ボランティアのみなさんと出会うたびに、市民防犯の意義や効果についてだけでなく、活動を通して得られる経験が、人生やキャリアへのすばらしいエッセンスになるということも欠かさずに伝えるようにしています。
昨今の防犯ボランティアの高齢化や減少にともない、若手ボランティアの育成や推進が積極的に行われるようになりました。しかし、単にマンパワーを増やすという目的ではなかなか活性化しないでしょう。学生の柔軟なアイディアを活かす、得意なことを活かした取り組みを後押しする、世代を越えた連携や出会いを通して学びを得るなど、学生のみなさんに「ぜひ参加したい!」と感じてもらえる環境づくりが重要だと考えています。 実践の場、学びの場、そして経験を得る場として防犯ボランティアが認識されれば、安全・安心の輪をさらに大きく広げることができるのではないでしょうか。
安全インストラクター
武田 信彦さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。
子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。