公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 今こそ、見守りと助け合いの力を!

子どもの安心・安全を守る活動

安全インストラクター武田信彦のコラム
「一般市民による防犯とは?」(第43回)

安心して日常を取り戻せるように


 世界的にコロナ禍が長期化し、その対策も新たなステージへと移行しています。日本でも、段階的に自粛の解除、学校の再開などに向けた動きが始まりました。感染予防をしながら日常生活も取り戻していかなければならず、緊張感やストレスを抱えた生活が続くことでしょう。 さて、子どもたちの防犯対策、さらに健全な地域活動を再開する上でも、いま一度、一般市民ができる防犯(市民防犯)のあり方を確認することが重要ではないかと思います。  学校の再開により、子どもたちが地域の中を歩く機会が増加します。とくに「地域的空白」における犯罪被害が懸念されるため、防犯ボランティア等による見守りが欠かせません。社会全体で「子どもだけにならない環境」を整えていく努力が求められます。一方、感染予防に気をつかう生活が続く中で、一部、暴力的な声かけ、ハラスメント、苦情なども発生しており、地域住民間の軋轢や意識の分断などが懸念されます。さまざまな不安が渦巻く状況であるからこそ、防犯として何をめざすのか、その目的や意義、効果などをあらためて確認しておく必要があります。

市民防犯の強みは、「見守り」と「助け合い」


 このコラムでも過去に述べていますが、私が提唱する「市民防犯」とは、「一般市民ができる防犯」のことです。警察の防犯が直接的防犯とするならば、市民の防犯は間接的防犯といえるものです。なぜなら、特別な権限や武器の所持が許されず、あくまでも一般市民としての範囲内で行うものだからです。その目的や活動内容は以下のようなものです。


 市民防犯がめざすこと = 犯罪が起きにくい環境づくり(間接的防犯=自然監視)
市民防犯にできること = あいさつや健全な声かけによる「見守り」や「助け合い」

 悪意や犯罪行為を探す、対峙することではなく、子どもたちや地域住民に目を向けて、「大丈夫ですか?」の気持ちを向けていく活動です。その姿を示すことで、悪意や犯罪が近づきにくい雰囲気を生み出していきます(自然監視)。さらに、あいさつや健全な声かけにより、地域に安心感が広がる効果も期待できます。

 いま、感染予防のため、人との距離を保つ、お互いにマスクをするなど、地域で人々が交流しにくい状況が続いています。しかし、子どもたちや地域の安全を守るための活動は不可欠ですので、「見守りの気持ちを届ける」想いを持ち、これまで育まれた各地域の安全文化をしっかり継承していっていただければと思います。



うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。

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