コラム
防犯 新しい様式による子どもたちの安全セミナー
安全インストラクター武田信彦のコラム
「一般市民による防犯とは?」(第44回)
今は感染防止対策が何より大事
コロナ禍の終息が見えず、まだまだ不安な日々が続いています。一方で、大人向けの研修会や講演、児童向けの安全セミナーも少しずつ再開。しかし、従来とは実施の方法も異なり、「感染防止」を第一とした環境づくりが大前提となっています。大人向けの講演では、参加者全員のマスク着用、検温、手消毒、換気、さらに参加人数を大幅に減らしたうえで、互いの距離をとった形での座席配置を行っています。また、講師の演台には飛沫防止用のアクリル板を設置。例年行っていた、参加者同士の交流や体験の時間は「なし」となりました。
また、学校での児童対象の安全セミナーも再開しています。大人向けの講演と同様に、感染防止を第一に徹底して取り組んでいます。参加人数は最小限に絞り、前後左右の児童とは一定の距離をとって座ってもらい、講師を含めて全員がマスクを着用したうえで実施。さらに本来は、声や体を使った参加型の防犯体験が効果的なのですが、「密」となるため行いません。
そもそも子どもたちの学びは、ほかの人とのコミュニケーションから育まれることが多いため、密を除いた形でプログラムを実施することの難しさを感じています。
児童自らの気づきを促す雰囲気づくり
しばらくは安全セミナーも、感染防止対策を施した上での実施が続くでしょう。終始、座学で行うことがメインとなり、子どもたちの集中力を保つにも工夫がいりますが、なるべく子どもたち自らの「気づき」をうながすように趣向を凝らしていきたいと思っています。
さて、実際の安全セミナーでは、このコラムでもこれまでに紹介している「『子どもの安全教室』実施プログラム」の画像を用いて、通常よりも少しゆっくりとしたペースで、子どもたちへの質問や投げかけをはさみながら進行しています。また、重要なポイントでは、講師自らが実演を行うなど、わかりやすく解説するようにしてます。
たとえば、周囲への観察力(予防力)を解説する場面では、子どもたちに背を向けた状態から「だるまさんがころんだ!」の合図とともに子どもたちのほうへ振り返ります。前だけではなく、左右や後ろへも意識を向ける大切さを瞬時に伝えることができます(写真)。また、距離感については、感染防止の「ソーシャル・ディスタンシング」を活かすことができます。特に大人の手が届かない最低限の距離感について、「大きい前ならえ(腕2本分)」や「体操隊形にひらけ」の際に体験する長さを実演して解説します。
身を守る力は、子どもたちが学校や家庭で身につけたコミュニケーション力の延長であるため、日ごろから慣れ親しんだ言葉を使うことで、自分事として理解しやすくなります。また、安全セミナーをきっかけに、朝の会や帰りの会などの時間にふりかえりや確認を行うことで、日常の生活の中で活きる実践力が育まれていきます。その意味でも、教員のみなさまとの情報共有や協力・協働が欠かせないのです。
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。