コラム
防犯 子どもの防犯のキーワードは、「空白をなくす」
専門家コラム:防犯編VOL.46
担当:安全インストラクター武田信彦
「子どもだけになる瞬間」がリスク高まる みんなで「地域の空白」をなくす取り組みを
「子どもだけになる瞬間」がリスク高まる
春以降、コロナ禍における防犯対策について多くの取材を受けました。こちらのコラムでもたびたび取り上げましたが、以前よりも子どもたちの周囲に「空白」が生まれやすくなったことが、最も懸念される点です。「空白」とは、「子どもだけになる瞬間」という意味です。最近、警察の防犯対策でも「空白地帯」という言葉が使われるようになりました。「地域の中で、付き添いや見守りがおらず、子どもだけになる場所」という意味で、犯罪被害のリスクが高まることが指摘されています。前回のコラムで紹介した警察庁の防犯コンテンツにおいても、子どもが被害に遭う犯罪が発生している場所として、
①道路
②駐車場・駐輪場
③公園
④集合住宅の共有部分
が紹介されています。これらは子どもたちがふだん生活している空間の中で、特に「子どもだけになる瞬間」が多いところです。
なお、「子どもだけになる瞬間」の場所や時間は、一人ひとり異なるということに注意が必要です。一律のマニュアルでは伝えきれないため、各家庭において一人になりやすい瞬間を洗い出し、可能な防犯対策を講じる必要性があります。
みんなで「地域の空白」をなくす取り組みを
私が実施する安全セミナーの冒頭では、まず「一人にならない」を確認します。それは、子どもたちにも「空白」こそが、身を守る上でリスクが高まる瞬間であることを知ってほしいからです。たとえば、集団登下校を行う、家族や兄弟姉妹と行動する、見守りボランティアのかたがいる道、お店がある道を歩くなど、あらゆる方法で「子どもだけになる瞬間」をなくすことで、犯罪被害のリスクを下げることが期待できます。なお警察庁の調査によれば、「子どもだけ」は、一人とは限らず、複数の子どもがいた場合でも被害に遭ってしまうケースが報告されています。そのため、「一人にならない」だけでは十分とは言えませんが、まずは「誰かと行動を共にする」ことが安全につながると理解し、実践いただければと思っています。
また、地域の見守りを行う際は、「地域の空白をなくす」という視点で活動範囲を設定するとよいでしょう。そのためには、
①子どもたちの行動範囲を知る
②子どもだけになりやすい場所を探す
ということを積み重ねるのが有効です。いわゆる「不審者メール」などの情報からも、空白地帯かつ被害が発生しやすい場所の傾向を知ることができるでしょう。一方注意しておきたいのは、一般市民の防犯活動は「悪者さがし」ではないということ。あくまでも「見守り」や「助け合い」の視点で活動することです。空白になりやすい場所を意識して、効果的に子どもたちを見守っていきたいものです
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。