コラム
ネット ゲームのやりすぎ、なぜ怒られる?
専門家コラム:ネット編VOL.7 担当:石川 千明
勉強やスポーツはやっても怒られないのに、なんでゲームだけ怒られる?
「勉強やスポーツをやっても怒られないのに、なんでゲームだけ怒られるの?」 子どもたちからよく聞かれる質問です。
みなさんがお子さんから聞かれたらなんと答えますか?
「ゲームは***だからダメ」
乱暴になるから、勉強ができなくなるから、依存症になるから、・・・
いろいろな理由を話しますが、ホントにゲームをやりすぎたらみんながそうなるのでしょうか。
乱暴になるから? 勉強ができなくなるから? 依存症になるから? まとめ<保護者の方にお願いしたいこと>
乱暴になるから?
今、流行っているオンラインゲームの中には、オンラインボイスチャットを使って仲間としゃべりながらゲームをするものがあります。ゲームを一緒にプレイしているような感覚にもなり、エキサイトすると乱暴な言葉遣いになってしまうことがあるようです。
学校からも「死ね、どけ、邪魔」など、単語で命令をするような言葉遣いが見られるという相談も来ています。
ゲームをしたらみんなが乱暴になるわけではありませんが、日常的にそういう言葉遣いになっていると感じるなら「そんな言葉遣いはダメよ」ときちんと注意するなど、人同士気持ちよく過ごせる関係作りを促すことも必要です。
また、もしゲームが原因と感じるなら、
・一人でゲームをさせないようにする
・ヘッドフォンとマイクを使ってゲームの世界に没頭するようなプレイスタイルにならないようにする
など、まずは子どもの環境を考えてみましょう。
勉強ができなくなるから?
私は医者でも学者でもないので、医学や学術的な調査から話すことはできませんが、ゲームがとても楽しいことは知っています。
単純な話で、一度楽しいことを知ってしまった脳は、楽しくない勉強をしたくなくなります。勉強をしても脳が拒否してしまっては入るものも入りません。ゲームは楽しいけど「勉強が嫌になってしまうほどやってはダメ」ということです。しかし、ゲームは勉強やお手伝いなどをしてからやるといった子どもの意志だけに頼ることは難しいのが現実です。
ですから、保護者がゲーム機やスマートフォンを与える前に与える前に安全設定をしておきましょう。
<やりすぎ防止機能の例>
・スクリーンタイム(iOS)、ファミリーリンク(android)時間管理やアダルトコンテンツの制限、レーティング(年齢制限)等の設定ができます。
・みまもり設定(スイッチ)年齢制限や時間管理などができます。
・各種ゲーム機にはペアレンタルコントロールがあります。時間制限や課金設定、子どもの年齢を設定しておけば年齢にあっていないゲームはプレイできないなど保護者が管理できます。
このような機能を上手に利用しゲームや利用するコンテンツを管理してみましょう。
参考:安心ネットづくり促進協議会『子どもとネットのトリセツ』
「もう大きいんだから自分で考えてやりなさい!」と言ってしまいがちですが、ゲームの楽しさを覚えてしまった脳はなかなか理性が効きません。
理性で動けるようになるのは13歳以降とも言われていましたが、幼児期からゲームをし続けていた子どもは13歳になっても、なかなか時間のコントロールを自力でするのは難しいと感じています。
もし、少しの時間も我慢できない、自分で時間がコントロールできない、嘘をついたり隠れてゲームをしている、昼夜逆転している、などがみられる場合は、次項のゲーム依存について考えてみてください。
依存症になるから?
やめたくてもやめられないことを依存症というそうです。麻薬、アルコール、ギャンブルの依存症はお聞きになったことがあると思いますが、やめたくてもやめられないという点ではゲームも同じです。
2019年5月にWHOはオンラインゲームなどが原因で1年以上、正常な社会生活が送れなくなったことを「ゲーム障がい」という名前で依存症のひとつとして認定しました(2022年施行)。
病気として認定しなければいけない、それくらい世界中にゲームがやめられなくて困っている人が増えたということです。
勉強やスポーツを24時間続けてすることは難しく、依存症になりにくいけど、ゲームは24時間以上でも続けてプレイできるため、身体を壊したり、学校や会社にいけなくなってしまうことが起こり、結果依存症になってしまう可能性があります。
ゲーム障がいにはワクチンや特効薬はありません。依存になってから回復するのは果てしなく時間がかかります。そして他の依存物のようにゲームを法律で規制することはできませんので、回復したように見えても、すぐにスリップ(元の状態に戻ること)してしまいます。
現在は就学にも様々な形があり、学校にいくことだけがすべてとは思いませんが、学業に専念できる大事な時期にゲームに多くの時間を使いすぎて学生生活を失敗してしまうと後々の人生も狂ってしまうことも考えられます。
まとめ<保護者の方にお願いしたいこと>
子どもをゲーム障がいに陥らせないためにゲーム機を取り上げるだけでは解決しません。
ゲームには「依存症になる可能性が高いこと」、「そうなると特効薬がないこと」などをきちんと説明した上で、子どものリアルな毎日が楽しいものになるよう、保護者が、子ども自身に関心を持ち、子どものリアルの中での体験を増やすこと、対話などの人同士のコミュニケーションをとるといった、発達に応じた適切なサポートを続けていただければと思います。
石川 千明 さん
(株)カプコンでゲーム企画を担当。 退職後web企画制作、コンサルタントとして活動。'01年~子育て支援グループいこま育児ネット設立、'08年~自治体、学校等でICT支援活動を開始。それらの経験また母親目線から、わかりやすくネットトラブルの現状と対策を解説する。