コラム
ネット ネットいじめの現状
専門家コラム:ネット編VOL.12 担当:谷山 大三郎
ネットいじめの特徴
ネットいじめといっても、一言で説明することは難しいですが、例えば文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、ネットに関するいじめの項目として「パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷やいやなことをされる」と書かれています。
この調査において、ネットに関するいじめの認知件数は年々増加しており、令和元年度の調査では、過去最多の1万7924件を記録しました。いじめ認知件数は、学校でいじめを認知した数です。認知件数が増えていることは積極的にいじめを発見できていることを意味するため良いことだと考えています。一方で、いじめ全体の認知件数は同年の調査で61万2,496件を記録しており、全体の数に対してネットいじめの認知件数が約3%の割合しかありません。ネットいじめは、外部から見えにくいため、周囲の大人が発見しづらく、目に見えるいじめに比べて発見が難しく、早期発見が難しいと考えています。
対応が難しいネットいじめ
次に最近のネットいじめの具体例を記載します。ガラパゴス携帯、いわゆるガラケーが普及していた頃には、特定の特定のターゲットに対して、インターネット上で「うざい」、「死ね」などの誹謗中傷を書き込む事例が多く見られましたが、現在ではこういったいじめは少なくなっています。
子どもたちの連絡手段がSNS中心になってからは、自分が加害者として罰せられないように行ういじめが増えてきました。例えば、加害者Aが被害者Bに苦痛を与えるため、自分の SNSに「ゴリラ」「服がダサい」「ムカつく」と記載します。被害者Bは自分のことを言われていると感じ深く傷つきます。しかし加害者Aが書いた言葉は、あからさまに被害者Bを指す内容ではありません。
そのため例えば周囲の大人が加害者Aに対していじめだと問い詰めても、加害者Aは「好きなゲームのキャラクターのことを書いただけ」などと言い逃れできてしまいます。
私たち大人は何をすべきか
このように、いじめが巧妙化し、明らかないじめとわからないように進行していくため、いじめ対応の基本である早期発見、早期対応が難しくなってきています。そのため、私たち大人はこれまで以上にリアルな場で子どもたちの変化に気づけるようになることが大切です。
また子どもたちから相談を受けた時は、どんな些細なことであっても真摯に話を最後まで聴き丁寧に対応をすることです。私自身もいじめ被害者だったため気持ちがよくわかりますが、子どもたちにとっていじめの相談をすることはとても勇気のいることです。せっかく相談してくれた子どもに対して一度でも「たいしたことない」「考えすぎ」などの軽率な対応をしたら、その子どもは二度と相談してくれなくなります。彼らの話をまずはすべて受け入れ、最後まで耳を傾けること、そのうえでどのような解決を目指すか、ゆっくりと時間をかけて相談しながら話を進めることが大切と考えています。
谷山 大三郎さん
1982年12月生まれ。ストップイットジャパン株式会社代表取締役、一般社団法人てとり代表理事、千葉大学教育学部附属教員養成開発センター特別研究員。いじめに苦しむ子どもたちがいつでも相談、報告できるアプリSTOPitの普及*1、アスリートと協働して、いじめなどの悩みを相談する窓口を周知するプロジェクトの推進*2、いじめ防止啓発を目指した学校向け教材の開発に取り組む。