公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 防犯の両輪をなす、「警察防犯」と「市民防犯」

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.55
担当:安全インストラクター 武田信彦



 先日、警察庁からの依頼を受けて警察学校で講師を務めました。警察学校といえばテレビドラマの舞台にもなり話題を呼びました。ドラマで描かれたのは新人警察官を対象とする「初任科」でしたが、今回お話をさせていただいたのは、各警察本部において防犯や生活安全を担当しているベテランの警察官を対象とした「専科」です。防犯に関する専門知識を習得する専科課程において、私は「警察防犯と市民防犯のちがいと協働・連携のコツ」をテーマに講義を行いました。制服姿の警察官のみなさまが、最後まで熱心に耳を傾けてくださいました。
 日本の防犯ボランティアは平成14年以降に活性化してきましたが、「地域住民の自主性」と「政府の施策」の両輪で成り立っていることが特徴だと言えます。現在でも警察・自治体・教育委員会等が地域の防犯ボランティアの推進や支援を行っているのもその表れです。一方で、長らく警察防犯の観点からの指導が行われてきた背景からか、警察防犯と市民防犯の境目があいまいであったり、連携・協働のバランス感覚が難しく感じられたりするという課題も生じています。そのあたりを整理し、わかりやすく伝えるのが私の役割です。


市民防犯の範囲と効果を知ることの大切さ


 講義では、市民防犯を専門に歩んできた私の視点から、警察防犯と市民防犯の領域を整理し、それぞれの強みを生かした連携・協働のコツをお伝えしました。とくに、子どもたちの安全に大きな力を発揮する「見守り」の意義や効果、可能性をくわしく解説。そもそも、防犯の分野に「見守り」という言葉が取り入れられていることがその存在意義の大きさを物語っています。
 また、警察による抑止力を伴う直接的な防犯とは異なり、市民防犯は「犯罪が起きにくい環境づくり」や「助け合いの環境づくり」をめざす間接的な防犯です。そこで欠かせないのが、「笑顔」や「あいさつ」。コミュニケーション力を発揮することで、地域の中に「安全のバリア」と「安心感」が広がります。とくに「自然監視」と呼ばれる「人に見られている」ことで悪意や犯意が表出しにくくなる犯罪(わいせつ、つきまとい、悪質な声かけなど)に対しては、さまざまな形で地域にかかわる人が増えることで防犯効果が高まります。
 防犯というと「犯罪や非行と相対する」というイメージが根強くありますが、地域の人々のゆるやかなつながりや優しい見守り合いこそ、市民防犯の強みであることを伝え続けていきたいと思います。



うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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