公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

ネット ネットの専門家も、家に帰れば一人の父親

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:ネット編VOL.15 担当:高橋 大洋


保護者からのよくあるご質問

子どもたちのネット利用について、保護者や教員向け研修講師を10年以上続けています。研修会後に時折出るのが、「高橋先生のご家庭では、どのようにネット利用を制限されていますか?」というご質問です。
わが家には子どもが二人います。姉と弟、いま中3と小6です。
今回のコラムでは、父親としての私自身の取り組みを、小6の息子に焦点を合わせてご紹介します。



機器の機能制限はどこまで?

小6の息子が現在使えるネット機器は、「ノートパソコン(MacBook Air)」と「Nintendo Switch」の二台です。専門家なら、さぞガチガチに機能制限をかけていると思われがちですが、そうでもありません。せいぜい「利用時間数・時間帯」や「成人向けコンテンツの制限」くらい。どれもメーカーが提供する標準機能で出来る範囲です。



大切にしていることは「寝る!」「遊ぶ!」

実のところわが家では、ネット機器で何をしているかよりも、「キチンと寝ているか」と「(ネット以外の)毎日の遊びが充実しているか」の方を大事に考えています。
具体的には、子どもたちのスクリーン視聴は原則、夜8時まで。(もちろん15分くらいの超過はありますが...笑)。その後、布団でお気に入りのマンガや本などを読んでいますが、9時には消灯です。朝は学校の有無に関わらず、遅くとも7時過ぎには起きるのが原則です。低学年の頃はもう少し早く寝ていましたが、小6の今は、昼間、身体を動かして遊んでいれば、このサイクルがちょうど良いようです。「誰かの家に集まってゲーム」が減った分、外遊びの友だちが見つけやすいのは、新型ウイルス禍の意外な効能でした。



子どもは見ていてほしい、知ってほしい

最近、父親として特に意識しているのは、「(遊びを)見ていてほしい」「(好きなものを)知ってほしい」という彼の期待に応えることです。子ではなく親が先に行動・態度を変えようということです。
彼がお気に入りのユーチューバーの動画は、正直、親として感心する内容ではありません。
でも、頭から否定してしまったら、彼は隠れて、一人で見るようになるでしょう。そもそも、個々の動画が子どもの将来に有益かどうか、親が見通せるわけもありません。今後の成長とともに、違う(もっとマシな...笑)動画を自分で見つけるはずだ...とヤキモキする毎日です。



もっとラクに考えよう

ネットの利用について真剣に考えるほど、保護者は「何もかもが心配」という心境に陥りがちです。しかし子育てには、ネット以外にも、考えるべき、取り組むべきことが山ほどあります。
ネット利用に関して注意する範囲を意図的に減らし、その分、子どもの生活全体に目を向けるほうが、結局は親子ともにラクに、いい形で前進できるはず。新しいアプリや流行りのコンテンツのことはお子さんから学びながら、保護者は社会経験や常識を提供できる関係が理想ではないでしょうか。
私も引き続き、一人の父親として、わが子と向き合っていきたいと思います。



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株式会社ミヤノモリ・ラボラトリー 代表取締役

高橋 大洋さん

テックコーチ。フィルタリングやセキュリティなどIT企業勤務をきっかけに、「ネットとのつきあいかたをオトナにも分かりやすく」に取り組む。子どもとネットの問題についての調査・研究や教材開発、指導者養成の他、保護者・教員向け研修講師としても活動。著書(共著)『学生のためのSNS活用の技術』(講談社)。子どもたちのインターネット利用について考える研究会 事務局、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA) ネットセーフティ教育プログラム事務局、ピットクルー株式会社 契約パートナー、国立大学法人小樽商科大学 非常勤講師。札幌市在住、中学生・小学生の子育て中。

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