コラム
防犯 「子ども110番の家」の意義とは
専門家コラム:防犯編VOL.58
担当:安全インストラクター 武田信彦
引越しを機に設置しました
この夏、お世話になった東京・豊島区を離れ、世田谷区の穏やかなエリアへ引っ越ししました。これまでは賃貸マンションでしたが、戸建てでの新生活です。掃除や植物の手入れをする際、ご近所や地域のみなさんとのあいさつや会話が自然と生まれています。
さて、移転作業が落ち着き、続いて行ったのが、子どものための緊急避難所の役割をする「子ども110番の家」の登録申請です。私が防犯の仕事をしていることも申請の理由の一つですが、新居が角地にあり、目の前には子どもたちや家族連れが利用する小さな児童公園もあるため、安全と安心の両面での効果が期待できると考えました。
「子ども110番の家」の設置は全国的に取り組まれていますが、地域によって名称などは異なります。世田谷区では、黄色いプレートに「こどもをまもろう110番」と書かれています。設置の申請先は教育委員会でPTA等を支援する担当課です。地域によって、申請・管轄を担う機関や部署は異なると思われます。
「子ども110番の家」の意義と課題
「子ども110番の家」の意義としては、おもに2つあると考えられます。
①地域全体で子どもたちを見守り・助ける環境づくり
本来、身近な大人が付き添うことが一番の防犯ではあるものの、日本では習慣的に子どもだけで行動する機会が多く、さらに身近な大人と子どものライフスタイルがなかなか合わない現状においては、地域全体による見守りや助け合いが不可欠です。「子ども110番の家」を設置することで、その意思を示すことができます。
②子どもの対処力「逃げる」をサポートする
子どもだけになりやすい環境下では、子ども自身の「自分を守る力」も欠かせません。状況をよく観察して危険を予防する力、人との距離感の取り方、そして、助けをもとめたり逃げたりするなど対処する力です。とくに危険から逃げるときは、「助けてくれる人がいる所まで行く」ことが重要です。近くにいる人をはじめ、公共施設、なじみのある施設や商店などに助けをもとめること。「子ども110番の家」も、その場所のひとつです。生活エリアの中で、緊急時に逃げ込める選択肢が多いほど安心です。日ごろから確認しておくことが万が一のときに役立つでしょう。
一方で、「子ども110番の家」への加入、継続確認などには課題もあると思います。申請に際しては、個人情報を提供するだけでプレートを受け取ることができました。手軽ではあるものの、活動の意義や責任範囲、注意事項(緊急時以外子どもを自宅に招き入れないなど)も確認する必要があると思います。地域により違いがあるかもしれませんが、保険適用がされる点は安心感をおぼえました。
「子ども110番の家」の毎年の継続確認は、校区の小学校PTAのみなさんが担っています。地域の連携・協働の面では顔を合わせることは重要ですが、担当範囲が広い場合は負担感が増してしまいます。
設置を機に、あらためて制度の意義、効果や課題などを検証してみたいと思います。
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。