公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

ネット 三つ子の魂百まで~乳幼児期にスマホやネットは必要?~VOL.2行動編

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:ネット編VOL.18 担当:岡田 典子


乳幼児期の体験の必要性

子どもの言葉の獲得は、身近な大人の生の声からです。

家族が大勢いた昭和初期とは違い、今は家庭内の大人は少なく、近所の大人から声をかけられる機会もほとんどない子どもも多くいます。 そんな子どもたちの語彙力の減少を、30年前既に小学校教諭たちが心配し始めていました。
一方通行で一方的に流れるTV、ビデオ、CD、スマホ等から得る言葉は非常に少数です。 脳の発達が著しい乳幼児期に言葉のシャワーをたくさん浴びせましょう。 たくさん語り掛け、言葉をいっぱい溜めてあげると、それが、話す、書く作業に繋がります。

そして、いっぱい抱っこをしてあげてください。嬉しい、楽しい思いを増やすことで、どんどん脳を刺激してあげましょう。 いっぱい抱っこしてもらった子どもは、愛着形成により思春期に折れない力を自分の中に太く育んでいきます。 読みがたりやわらべうたは減った大人の数を補い語彙を増やします。

お話の世界は間接体験ですが、実体験と同じように子どもの中に沁み込みます。 何より大事なのは実体験です。子ども同士の遊びの時間・空間・仲間を保障してあげましょう。 遊びの体験が、子どもたちを心身共に健康に育みます。 遊びからいろんな人を知り、社会事象を知り、言葉、コミュニケーション力、想像力、集中力を育みます。 それが、生きる力となります。乳幼児期にやり残した体験を後でやり直しに要する時間は、3倍と言われています。



おすすめの絵本

実際に読みがたりにはどんな本が適しているでしょうか。以下に例をあげてみました。

【0~1歳児から楽しめる絵本】へ参照
・0歳児は、言葉への期待と、聞く力が育つ時期
・1歳児は、言葉を覚え始める時期(象徴機能と想像力の芽生え)
【2~3歳児から楽しめる絵本】へ参照
・2歳児は、言葉の意味が分かり言葉にする力が育つ時期
・3歳児は、思いを言葉にして伝える力が育ち始める時期
【4~5歳児から楽しめる絵本】へ参照
・4歳児は、言葉でものを考え始める時期(思考機能と想像力の育ち)
・5歳児は、考えたことを言葉にしていく時期(自制する力が育つ)


【0~1歳児から楽しめる絵本】 【2~3歳児から楽しめる絵本】 【4~5歳児からお奨めの絵本】

【0~1歳児から楽しめる絵本】

『いないいないばあ』松谷みよ子文・瀬川康男絵・童心社(1967年)
『あそびましょ』松谷みよ子文・丸木俊絵・偕成社(1977年)
『もこもこもこ』谷川俊太郎作・元永定正絵・文研出版(1977年)
『どうぶつのおやこ』薮内正幸絵・福音館書店(1966年)
『でてこいでてこい』林明子作・福音館書店(1995年)
『りんご』松野正子文・鎌田暢子絵・童心社(1984年)


推薦:京都南この本だいすきの会

【2~3歳児から楽しめる絵本】

『はらぺこあおむし』エリック・カール作・もりひさし訳・偕成社(1976年)
『ねずみくんのチョッキ』なかえよしを作・上野紀子絵・ポプラ社(1974年)
『ちいさなねこ』石井桃子作・横内襄絵・福音館書店(1963年)
『ちびゴリラのちびちび』ルース・ボーンスタイン作・いわたみちる訳・ほるぷ出版(1978年)
『しろくまちゃんのほっとけーき』わかやまけん作・こぐま社(1972年)
『おふろだいすき』松岡享子作・林明子絵・福音館書店(1982年)
『三びきのやぎのがらがらどん』マーシャ・ブラウン絵・瀬田貞二訳・福音館書店(1965年)


推薦:京都南この本だいすきの会

【4~5歳児からお奨めの絵本】

『おおかみと七ひきのこやぎ』フェリクス・ホフマン絵・瀬田貞二訳・福音館書店(1967年)
『てぶくろ』エウゲーニー・M・ラチョフ絵・内田莉莎子訳・福音館書店(1965年)
『かにむかし』木下順二文・清水崑絵・岩崎書店(1959年)
『だいくとおにろく』松居直再話・赤羽末吉画・福音館書店(1962年)
『かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダック作・新宮輝夫訳・冨山房(1975年)
『あおくんときいろちゃん』レオ・レオーニ作・藤田圭雄訳・至光社(1967年)
『しんせつなともだち』方軼羣作・君島久子訳・村山知義画・福音館書店(1987年)
『はじめてのおつかい』筒井頼子文・林明子絵・福音館書店(1976年)
『じごくのそうべえ』田島征彦作・童心社(1978年)
『おしいれのぼうけん』古田足日・田畑精一作・童心社(1974年)
『おじさんのかさ』佐野洋子作・絵・講談社(1992年)
『のにっき』近藤薫美子作・アリス館(1998年)
『まちんと』松谷みよ子文・司修絵・偕成社(1978年)
『トビウオのぼうやはびょうきです』いぬいとみこ作・津田櫓冬絵・金の星社(1982年)


推薦:京都南この本だいすきの会



最後に

文部科学省は、新学習指導要領で生きる力を「知学力・徳人間性・体健康・体力のバランスのとれた力」と表現しています。 そして、生きる力を育むための3本柱に「①知識・技能②思考力・判断力・表現力③学びに向かう力・人間性」をあげています。 生きる力を育むことで、便利な道具を賢く楽しく使えるようになります。 スマホを使ったり文字を書くという技術は、健康な土壌に崩れない土台を作った後で体得していく力です。

『三つ子の魂百まで』、乳幼児期に大切に育んだ力が、その先の人生を豊かにします。
あなたのお子さんに、今、スマホやゲームの時間は必要ですか?




この本だいすきの会(京都南支部)

京都府警察ネット安心アドバイザー/近畿総合通信局e-ネットキャラバン準専任講師/人権擁護委員/放課後児童支援員

岡田 典子さん

幼稚園教諭、子育て支援のNPO副理事長を経て、子どもたちの健全育成への関わりを深め、2008年より主に京都府内小中学校・高校を中心に情報モラル教育の講師として尽力。現在、放課後児童支援員として児童館に勤務しながら人権擁護委員としても、情報モラル講座や人権教室を実施。読みがたりや昔ばなしの再話研究にも力を入れ、特に乳幼児の保護者に「スマホより絵本とわらべうたで子育てを」と伝えている。

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