コラム
防犯 入学前に知っておきたい、子どもの防犯対策 ~前編~
専門家コラム:防犯編VOL.63
担当:安全インストラクター 武田信彦
子どもの防犯上、注意すべき場所とは?
春の足音も聞こえ始め、新年度が近づいてきました。全国で多くの子どもたちが小学校へ入学する季節を迎えます。早くコロナ禍が終息し、通常のコミュニケーションがとれる環境となるよう願うばかりです。
さて、入学シーズンに気になるのが、子どもの防犯対策です。小学生になると、子どもだけで行動することが多くなり、行動範囲も広がる傾向にあります。今回と次回のコラムでは、入学前に知っておきたい、子どもの防犯対策をまとめてみたいと思います。
参考となる資料としては、警察庁や文部科学省から公開されている、以下のコンテンツがあります。どちらも私が助言を務めており、市民防犯のテイストを多く反映いただいております。ぜひご活用ください。
さて、警察庁の調査研究によれば、屋外での子どもの犯罪被害の多くが「子どもだけ」でいるときに発生しています。とくに、以下のような場所での被害が多いと指摘されています。
①道路(路地や田畑などがある道)
②駐車場・駐輪場
③公園
④集合住宅の共用部分など
参考になる情報である一方、これらは「答え」ではなく、あくまでも「ヒント」です。
みなさんの生活エリア内に、上記のような場所がなければ大丈夫、というわけではありません。また、「そのような場所を避ければ犯罪にあわない」という防犯上の正解でもないのです。
さらに、④集合住宅の共用部分は、大都市圏を中心として整理された統計データであるために導き出されたもので、わかりやすくいえば「自分の家の周り」ということです。「うちは戸建だから大丈夫!」というわけではないのです。
「子どもだけになる瞬間」をなくすために
被害の発生が多いと指摘されている場面を見ると、共通点が浮かび上がります。
それは、「子どもだけになる瞬間」です。
日常を送る中で「子どもだけになる瞬間」に犯罪原因を抱えた者と遭遇してしまうと、犯罪被害が発生する危険性がある...ということです。とくに子どもをねらう犯罪は、「誰もいない」、「誰にも見られない」環境で発生しやすい傾向があります。
さらに警察庁のリーフレットでは、「植栽や塀で見通しの悪い公園では、子供たちが複数人で遊んでいても注意が必要です」との指摘が入っています。友達同士で遊びに行くから安心...とは言えないのです。大人が同行することが、何よりも強い防犯対策となるでしょう。
子どもの防犯対策を考える上では、犯罪被害リスクが高まる「子どもだけになる瞬間」をなくすことが、最も重要であるといえます。護身術や防犯ブザーの携行など、子ども個人による対策はもちろんですが、可能なかぎり安全な環境を整えることが大切なのです。 それでは、「子どもだけになる瞬間」をなくすためにできることとは?
1)身近な大人ができること
- 可能なかぎり付き添う(付き添うことは過保護ではありません)
- 集団登下校等の集合場所まで付き添う、迎えに行く
- 玄関先などで見送る(手を振るなどすると効果的) など
2)地域ができること
- 防犯ボランティア、子ども110番の家など見守りや助け合いの環境づくり
- いわゆる「ながら見守り」など、生活の中でのさりげない見守り
- 気になることがあれば警察へ連絡・相談 など
3)子どもができること
- できるだけ友達やその保護者等と歩く
- 地域のボランティア、商店など、人がいる道を歩く
- 万が一のときに逃げこめる場所を事前に把握しておく など
子どもと保護者の生活パターンが合わないことも多く、常に付き添うことが難しい現状があります。そのため、地域の善意の力や、子ども自身の力や知恵も欠かせません。これらの防犯力が重なり合うようにして、「子どもだけになる瞬間」をなくす、減らすことが何よりも重要な防犯対策となります。
入学前に、近所や通学路をお子さまと一緒に歩いてみることをおすすめします。環境に慣れるだけでなく、「助けてくれる人の存在」も一緒に確認してみてはいかがでしょうか。
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。