コラム
防犯 入学前に知っておきたい、子どもの防犯対策 ~後編~
専門家コラム:防犯編VOL.64
担当:安全インストラクター 武田信彦
コラムをお読みいただき、ありがとうございます。さて、前回に引き続き、子どもの防犯対策についてです。
子どもの防犯対策においては、大人や地域全体で「子どもだけにしない」環境づくりをすることが何よりも大きな力となります。とはいえ、現状では「子どもだけ」になる瞬間も多く発生しているため、今回は子どもたちへの防犯指導のポイントを解説いたします
子ども自身も知っておく「ひとりにならない」
屋外での犯罪被害リスクは、子どもだけになる瞬間において高まる傾向があります。大人や地域の取り組みのみならず、子ども自身も「ひとりにならない」を意識することが防犯対策の第一歩といえます。お住まいの地域の特性等をみながら、お子さまと一緒に、なるべくひとりにならないための方法を考えてみましょう。
「まわりを観察する」が、自分を守る第一歩
もしひとりになってしまったら、「自分で自分を守る」ことが必要となります。自分を守る基本は、「まわりをしっかり観察する」ことです。危険な雰囲気を素早く察知して予防するとともに、犯意や悪意ある人にコントロールされないための「抵抗力(逃げる、叫ぶ)」を示すこともできるからです。たとえば、「だるまさんがころんだ」で振り返る練習をするなど、まわりを観察する練習をしてみましょう。
「あいさつ」は、安全の力にもなる
犯意や悪意ある人との接触を避けるために、「人とあいさつをしない」のがよい方法にも感じられます。しかし、街中には、子どもたちを見守り、助けてくれる人が大勢います。あいさつは、見守り・助け合いをはぐくむ基礎といえるもの。とくに、防犯ボランティアや交通安全指導員等のみなさんとは元気にあいさつしましょう。また、元気で大きな声は、「抵抗力(叫ぶ)」を示すことにつながり、犯意や悪意ある人を遠ざける効果も期待できます。
さわられない、つかまれない「長さ」を知る
あいさつは大切ですが、一方で、さわられない、つかまれない距離を保つことも重要です。大人の手が届かない程度の長さを意識できるよう、「おにごっこ」などを通して練習することをおすすめします。また、見守りを行う側も、子どもたちへの過度な接触は避けるべきです。健全な声かけやあいさつとともに、人との適度な距離感をお互いに意識し合うことが安全・安心につながります。
キッパリ断る「できません!」
人と接する中で、誘われる、お願いごとをされるなど「おかしいな...」「変だな...」と感じることがあったら、「できません!」としっかり断りましょう。「おかしいな...」「変だな...」の判断基準はとても難しいものですが、身近な大人が知識や経験を活かして伝えることが一番効果的です。日ごろのお子さまとの会話の中で、「それは変だと思う」「私は嫌だな」など、判断基準を明確に示すことで、「断る」ための知恵や力がはぐくまれていきます。
自分で決めてよい「逃げる」タイミング
「怖い」と感じたら、すぐに逃げることが大切です。ポイントは2つ。1つめは、「逃げるは、自分で決めてよい」。ひとりの時は、誰も教えてくれません。迷うこと、難しいこともあるかもしれません。それでも、逃げるは自分で決めてよいことと伝えましょう。 2つめは、「助けてくれる人がいるところまで逃げる」。大人に保護されるまでが「逃げる」です。途中で逃げるのを止める、現場に戻る...は絶対にしてはいけません。日ごろから、「助けてくれそうな人」がどこにいるのか、お子さまと一緒に確認しておきましょう。
「助けて」を伝えることも護身術
「危険を感じたときは、「逃げる」とともに、「助けて」を伝えることも自分を守る力となります。防犯ブザーを鳴らす、近くにいる人に大きな声で助けをもとめるのもよいでしょう。まずは逃げて、保護された際に情報を伝えるのでも大丈夫です。日ごろから、気になること、不安に感じることなどを「子どもが伝える→大人が受け止める」環境をつくっておくことも重要です。お子さまからSOSを受け取る、不安な様子があるような場合は、所轄の警察署へ連絡・相談しましょう。自宅や学校を管轄する警察署やその電話番号を事前に調べておくことをおすすめします。
子どもたちへの防犯指導では、犯意や悪意がある人(危険なこと)の存在を伝えなければいけない一方、子どもたちを見守り、助けてくれる人たちの存在も伝えることが大切だと思います。そして、子どもたち自身も「自分を守る力」をもち、具体的かつわかりやすく伝え、言葉や行動で示していけるよう体験を積むことが重要です。
公財)ベネッセこども基金では、子どもたちの防犯力を引き出すための「子どもの安全・安心ハンドブック」、「子どもの安全教室実施プログラム」を用意しています。ぜひ、活用いただければと思います。
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。