コラム
防犯 子どもたちを守る防犯力を高めるために
専門家コラム:防犯編VOL.65
担当:安全インストラクター 武田信彦
防犯は「みんなで取り組む」ことを忘れないで
新年度を迎え、各地から防犯に関する講師依頼をいただいています。ここ数年は感染防止対策を第一に、オンラインや収録を中心に実施してきましたが、少しずつ対面形式も回復傾向にあります。そもそも、防犯の研修会が2、3年ぶりに開催されるケースも多く、主催者である自治体等の関係機関からは、見守り・助け合いの大切さや防犯意識が薄れるのではないか...という心配の声も聞かれます。
また、最近では市民防犯の視点から助言や監修を行う機会が増えています。神奈川県が新たに作成した児童向けの防犯指導用教材動画では、神奈川県警察本部とともに助言を務めました。今年度から県内の防犯指導で活用されていくことと思います。
防犯教材というと、「悪意や犯意がある人(こわい人)」がクローズアップされがちですが、「見守り、助けてくれる人たち」の存在もしっかり伝える必要があります。そうした視点も新しい教材には反映されています。動画中には、県内で活躍している防犯ボランティアのみなさんにも出演いただいています。「みんなで見守り、助け合う」をベースとしながら、子どもだけになる瞬間を想定した「自分を守る力」を伝えていくことが重要です。
大人・地域・子ども、それぞれの防犯力を重ね合わせよう
栃木県では、防犯に関するワーキンググループの座長を務めています。これまでも、県内各所で市民防犯の大切さやコツを伝えてきましたが、安全・安心な地域がさらに広がるよう、県庁や警察本部をはじめ、自治体、防犯協会、教育委員会、PTA、各団体等とともに知見やアイディアを共有し、提言をまとめるべく知恵を絞っています。子どもたちや地域の安全・安心を守るために欠かせない地域の防犯力。とくに私は、「既存の防犯力」「潜在的な防犯力」そして「新たな防犯力」、それぞれを活性化するための支援やアイディアが重要だと考えています。
このような防犯力を高めるために大切なことは、領域を超えた連携・協働です。「みんなで見守り、助け合う」姿勢を見せるとともに、それぞれがもつ防犯力を重ね合わせていくことで、さらに効果を発揮するのだと思います。「子どもに防犯ブザーを持たせればよい」「地域のボランティアが、がんばるしかない」...など、子どもだけ、地域だけに防犯対策を背負わせてしまうようなアプローチは健全ではありません。私は、みんなで取り組む環境の中で、身近な大人ができること、地域ができること、子ども自身ができること...それぞれの力が発揮されるイメージを持つことを忘れないように心がけています。
そして、「みんなで見守り、助け合う」環境を広げるためには、世代や領域を超えて防犯の知識や意識を共有することが欠かせません。犯罪被害リスクが高まりやすい「子どもだけになる瞬間」をなくすべく、それぞれができることを重ね合わせていくことがもとめられるのです。
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。