公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 先生たちと考える、児童・生徒の防犯力向上【前編】

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.68
担当:安全インストラクター 武田信彦



学校が行う防犯教育において大切な、2つの視点

この季節は学校の教職員の方々を対象とした安全・防犯の研修会が多く開催されます。今年度私が担当しているのは、神奈川県・千葉県・長野県・愛知県・滋賀県・長崎県の各教育委員会が行う研修会です。ちなみに、各地で実施されている安全に関する研修会の状況は、文部科学省の
学校安全」のページで見ることができます。

 児童・生徒を取り巻く「安全」には、防災・交通安全・防犯を含む生活安全など幅広いテーマがあるため、対策や啓発を担う学校現場のご苦労も多いことと思います。その中で私が担当している「防犯」について、学校の教職員の方々にお伝えしている内容を今月から2回にわたって紹介したいと思います。扱うテーマは、おもに以下の2点です。

1) 連携・協働で取り組む通学路の防犯対策(地域の対策)
2) 児童・生徒への防犯指導のコツ    (個人の対策)

 

このコラムでもくり返し述べているとおり、犯罪被害リスクが高まる「子どもだけ」の状態が生まれやすい日本の社会の中では、「みんなで見守り、助け合う」ことが欠かせません。とくに、子どもたちが通う学校を中心として、身近な大人、地域、そして、子どもたち自身も含めて、連携・協働の力を発揮し、安全を守ることがもとめられるのです。

連携と協働で取り組む、通学路の防犯対策

学校内での業務を担う教職員の皆様が、学校外での防犯パトロールまで行うことは現実的ではありませんが、たとえば、登下校時に校門で見守りを行うことは防犯効果を高めます。さらに、通学路の見守りを行うボランティアのみなさまへ、教職員の方々があいさつや声かけをすることも、ボランティアの方々にとっての大きな励ましとなり、活動継続のモチベーションアップとなるのです。

参考資料として、私も助言を務めている、
文部科学省「登下校見守り活動ハンドブック」をぜひ参照ください。

児童・生徒への防犯指導の注意点

 

さて、見守り・助け合いの輪を広げることが重要である一方、現状ではどうしても「子どもだけ」で行動する場面が生じてしまいます。そうした場面でも対応できるよう、児童・生徒自身の「自分を守る力」が欠かせません。その力を引き出すのが、「防犯指導」と呼ばれる安全教育の取り組みです。

 私も経験していますが、そもそも「防犯」を説明することにはどうしても難しさが存在します。人と人とのかかわりから生じること、さらに、世の中には悪意や犯意が存在することを伝えなければいけないからです。私は、以下のように説明しています。

 外で、
 人から、
 こわいこと、いやなことをされないように、
 心や体をまもること。

 「不審者」、「犯罪者」、「悪い人」、「知らない人」...などの言葉は使用しません。差別的な意識や誤解が生まれることがあるからです。防犯はとてもデリケートな分野で、使用する言葉を間違えれば、暴力や差別をも容認してしまう危険性があります。教育現場は、児童・生徒への影響力が大きいため、防犯指導を担う教職員のみなさまはとくに細心の注意を払う必要があります。

 犯罪の手口や被害状況などについても、詳細な内容を伝えることでトラウマ等が生じてしまうことがありますので、一定の配慮がもとめられます。また、悪意や犯意ばかりをクローズアップするのではなく、見守り、助けてくれる人の存在についてもていねいに伝えましょう。このあたりのバランスが崩れると、「地域の人とは、あいさつしない!」などの過剰な防犯意識が広がるきっかけになってしまいます。

 児童・生徒への具体的な防犯指導のコツについては、【後編】でご紹介いたします。

うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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