公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 先生たちと考える、児童・生徒の防犯力向上【後編】

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.69
担当:安全インストラクター 武田信彦



防犯力=「生きる力」

前回に続いて、学校等における児童・生徒への防犯指導についてお話していきましょう。くり返しになりますが、伝える側が心得ておくべき重要なことは、伝える内容のバランスです。

  • 悪意や犯意をもつ人がいる
  • 善意で見守り、助けてくれる人がいる
  • 自分を守る力をもっている
 

悪意や犯意ばかりを過度に扱えば、不安感や不信感を広げてしまうことにもつながります。助けてくれる人の存在、「自分を守る力」についてもバランスよく伝える必要があります。

「自分を守る力」というと特別なものに思えるかもしれませんが、私は「家庭や学校で身につけたコミュニケーション力、もしくはその延長にあるもの」ととらえています。決して特別なものではなく、「自分を守る力」のほとんどはコミュニケーション力として説明できます。

具体的な指導の内容については、過去のコラム記事もしくは、ベネッセこども基金が発行している子どもの安全・安心ハンドブックをご覧ください。

① ひとりにならない
② ひとりになるとき、どんなとき
③ ひとりだと気づいたら、自分を守る力を発揮する(あんぜんスイッチ)
④ まわりを観察する
⑤ 人との距離感を保つ
⑥ 誘いやお願い事は、きっぱり断る
⑦ 危険を感じたら逃げる
⑧ 「助けて」を伝える
⑨ 防犯ブザーの効果 など

プログラム実施上、調整することもありますが、上記のような順番で伝えることがほとんどです。自分だけにならない環境づくり、予防力、距離感、対処力、そして、対処力を補ってくれる防犯ブザーの効果について。一番大切なことは、「①ひとりにならない」をなるべく実践できるよう習慣化することです。

児童・生徒への防犯指導のコツ

日本の場合、小学校低学年でも「子どもだけ」で行動することが多く、地域や大人たちの取り組みととともに、子ども自身も防犯力を身につけておかなければいけない状況にあります。ほとんどの小学校では、全校や各学年を対象に「防犯セミナー」「セーフティ教室」と呼ばれるような防犯指導の機会を設けていますが、年1回程度実施される指導では、とても足りません。

重要なのは、防犯セミナーを「きっかけ」として、授業をはじめ、朝の会・帰りの会などで「ふりかえる」機会や「ふかめる」機会を定期的に設けていただくことです。防犯のコツや安全の大切さは、普段の生活の中で忘れてしまうことも多いからです。シンプルでわかりやすい言葉を使い、くり返し伝えることで、子どもたちの記憶にも残りやすくなります。

また、クイズや参加体験型のプログラムを活用することで、子どもたちが主体的に参加しやすくなります。参加体験的に学ぶ際にはいくつかコツがありますが、「解説」をどこに入れるのか...がポイントになります。ちなみに、私は、子どもたちの様子をみながら、プログラムの順序を下記のように調整しています。

生きる力としての防犯力は、知識や情報として得るだけでなく、実際に声や体を使って確認することで高まるものです。個人的には、まずは声や体を使うゲームなどを行い、「自分を守る力」の視点から防犯に役立つ動きやコツを子どもたち自身に考えてもらう方法が一番良いと感じています。とはいえ、実施時間、会場の広さ、参加人数によっては厳しいことも多いのですが...。

 さて、教職員研修でも好評をいただいているのが、ベネッセこども基金とともに制作した、子どもの安全・安心ハンドブック、そして『子どもの安全教室』実施プログラムです。どちらも市民防犯の視点から、子どもたちの防犯対策について具体的にまとめています。実施プログラムは、イラストのデータや、実施のコツについてまとめた資料がセットになっており、座学形式でも参加体験型プログラムでも対応可能です。ハンドブックは、ふりかえり用の教材として、また、保護者のみなさまへのヒントもまとめられています。ぜひ、ご活用ください!

なお、中学生以上への防犯指導については、著書活かそうコミュ力!中高生からの防犯(ぺりかん社)を参照ください。

うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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