コラム
防犯 中高生へ伝える、防犯の大切さ
専門家コラム:防犯編VOL.70
担当:安全インストラクター 武田信彦
防犯は、小学校の思い出?!
先日、高校の教職員のみなさま対象の研修会にて講師を務めました。テーマは、高校生への防犯指導のコツについて。ちなみに、「子どもの防犯対策」といえば、おもに小学生を対象にすることがほとんどです。中高校生の防犯で扱われる内容としては、加害防止の視点による非行防止や、違法薬物等の危険性を伝えるもの、SNSによるトラブル防止を目的としたネット安全利用についてなどが多いように感じます。
また、「いかのおすし(防犯標語)」や「防犯ブザー」など、「小学生時代にやったこと...」すなわち、防犯=小学校といったイメージをもつ中高生も少なくないのではないでしょうか。
しかし、行動範囲や活動時間帯も広がり、ひとり行動が急激に増える中高生にこそ、あらためて防犯の大切さ、具体的な対策などをしっかり伝える必要があります。防犯とは、犯罪から身を守るだけではなく、自分を守ること、自分を大切にする価値観を再確認するテーマでもあるからです。
なお、私の著書「活かそうコミュ力!中高生からの防犯」(ぺりかん社)も、ぜひ参考にしていただければと思います
自分がもつ防犯力を知る、SOSを伝える大切さ
私が、中高生に防犯を伝える際、始めに伝えることは、「身を守ることと、暴力はちがう」です。すでに様々な情報を得ており、「正当防衛」といった言葉が使われることもあります。しかし、正当防衛への誤解が多いように感じます。あくまでも、自分の心や体を守るために必要な力の行使であり、「やっつける」ことではありません。「仕返し」として、ネット上に個人情報をさらす様なことも、人を傷つける行為です。過剰な暴力や行為に対しては、厳しい責任が伴うことを知っておく必要があります。
また、中高生の場合は、地域特性を反映した犯罪等の状況についても伝える必要があると思います。伝える際は、トラウマ等が生じないように注意する必要がありますが、小学生よりも具体的な対策を知っておくことがもとめられます。また、個人の防犯力については、全世代共通の内容となりますが、予防力、距離感、対処力等について、段階ごとに分かりやすく伝えることをおすすめします。私の場合は、「逃げる技」を実技として練習することがあります。攻撃性が無い、危険な状況から逃げるためのコツです。
そして、大切なことがあります。「助けて」を人に伝える心の準備です。街中でも、ネットの世界でも、「助け出してもらわなければ、助からない状況がある」ことを知っておく必要があるのです。自分や身近な人の力だけではどうにもならない場面がある...。そんな時は、すぐにSOSを発信してほしいのです。いま、社会全体で「助けて」を受け止める環境が広がっています。電話のみならず、メール等でも相談できる窓口が増えています。しかし、「助けて」の選択肢を知らなければ、助け出してもらうことができません。
「逃げる」、「助けてを伝える」は、弱いことでも、恥ずかしいことでもなく、いわゆる「護身術」として自分を守るために必要な方法であると知ってほしいのです。
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。