公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

ネット 大人も子どもも スマホを賢く楽しく使えるように

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:ネット編VOL.30 担当:岡田 典子


1.赤ちゃんとスマホの出会い

1)ママが先かスマホが先か

10年程前、京都府内の産婦人科医師からお聞きした話です。子どもの健康や親子のコミュニケーションのことを考えて,スマホの持ち込み禁止をしたら、受診する妊婦が減ってしまい,仕方なく意に反して,スマホ持ち込み許可するしかなかったということでした。

今や時代の波に飲み込まれてしまい,当たり前になった光景。立ち合い分娩,初授乳時等で,新生児は,ほぼ皆,ママからスマホを向けられます。もしかしたらママの顔より先にスマホを見る赤ちゃんもいるかも知れません。ひよこは最初に見たものを親と認識しますが,ママの顔をスマホと思っている子がどこかにいるのではないかと思ってしまいます。

2)子どもは、親の背中を見て育つ

赤ちゃんにとっては、生きる為に必要な,おっぱいやミルクを飲ませてくれる親が一番大事な存在で,その親がすること全てが安心安全なことです。そしてその後も親がすることを真似ていろんなことを知り,いろんなことができるようになっていきます。
生まれた時から自分にとって安心安全な親が使っているスマホが,危険なものでもあるということは全く知り得ません。だから,危険への認識ハードルは低くなります。

例えば,ベビーカーや自転車に乗せているときに,車が来ていないからと赤信号で渡っていると,子どもは赤信号は進むものと刷り込まれて育ちます。成長して道路を赤信号で渡ろうとしたときに「赤で渡ったらダメ」と怒っても,その子は赤は進む色として育てられたのですから怒っても仕方ありません。同じように,スマホの使い方も親のする通りに使用するようになることでしょう。子どもはいつも親の背中を見ています。



2.子どもが事件に巻き込まれる現状

1)日本のインターネット・スマホ利用の現状

令和4年5月27日総務省が公表した通信利用動向調査による情報通信機器保有状況及びインターネット利用端末に関するデータを見てみましょう。
インターネット利用の割合は,82.9%ですが,13歳から59歳は各年齢で90%を超えています。特にGIGAスクール構想がスタートしたので,小学校~高校まではほとんどの子どもが学校でタブレットを使った授業をしている状況なので,ほぼ100%となっています。

令和3年通信利用動向調査 ポイント(令和4年5月 総務省)を加工

2)SNSがきっかけになった子どもの被害の現状

警視庁公表の2021年の統計を見てみましょう。18歳以下の児童で1500人近い被害が出ている「児童ポルノ事犯」では,自画撮り被害が35.3%を占めています。
また, SNSに起因する犯罪の中では「児童ポルノ事件被害」は多くなっています。

警察庁「なくそう子供の性被害」統計データを加工

被害児童が活用しているサイトの統計を見ると動画や画像でコミュニケーションを取るものも多く見られます。YouTubeを赤ちゃんから見るケースも益々増えているといいます。それは、動画や画像に対する危険へのハードルを益々低くしていっています。健康被害についてはまだ調査が進んでいないので,想像の域であることは否めません。
また,親子で一緒に楽しんで観ることはいけないことではないと思います。でも、事件被害に遭う子どもは増え続けているのは事実です。
どのようにすれば、時代のツールを安全に楽しく使えるのでしょうか。

警察庁「なくそう子供の性被害」統計データ」

スマホやゲーム等インターネットに繋がる器機は道具です。道具を上手く使う為にはルールが必要です。家電を買ったら取扱説明書が付いています。使い方,部品等の名称,したらいけないこと,危険なこと,相談窓口等がいっぱい載っています。ところが、元々いつでも気軽にできる電話から始まった携帯電話には取扱説明書がありませんでした。その後メールや検索が可能となり,スマホ時代となった今,できないことを見つけるのが難しい程何でもできるものとなりました。

ところが,取扱説明書がないまま使う大人は,失敗してしまう人が続出しています。しかも逮捕されたり,何億円もの賠償責任を負ったり。大人がこんな使い方なのに,子どもに危険だからダメと言えるのでしょうか。子どもたちの講座で「いくつになったから使えるというものではなく,ルールもなく使って大きな失敗をしている大人は使ってはいけないよね」といつも話しています。そして,大人の失敗を真似しない為に,「ルールを作って守ろうね」と。

是非,ご家庭で大人も子どもも一緒にルールづくりをしてください。
どんなルールを作ったらいいのか悩まれた時には、以下を参考にしてください。

3.スマホを賢く楽しく使えるルールを

1)ルールづくりのポイント

  • 子どもの事情や意見も聞き,家族みんなで一緒に話し合う
  • 具体的ではっきり分かるルールにする
  • 皆ができるルールを作る
  • 守れなかった時にはどうするかも、皆で考えておく
  • 時々見直し、その時に合うルールにする
  • 皆が常に見て確認できる場所に掲示する

2)ルールの例

  • 1:マナーやコミュニケーションについて
    ・食事中,会話中,入浴中,勉強中,歩いているときはスマホには触らない
    ・人(相手)の気持ちを考える
    ・勝手に画像、動画を送らない
  • 2:使う場所について
    ・決まった場所(親がいる部屋,リビング等)で
    ・自分の部屋、寝室には持っていかない
    ・おうちの人の見える場所で
  • 3:使う時間について
    ・( )時まで
    ・一日( )時間
    ・おうちの人が「終わり」と言うまで
    ・勉強した時間と同じだけ
  • 4:課金について
    ・使うときはおうちの人に相談する
    ・お小遣いの中で使う
    ・1か月( )円まで
    ・インターネットでお金は使わない
  • 5:出会いについて
    ・知らない人とやり取りをしない
    ・ネットで知り合った人とは合わない
    ・個人情報は絶対に書かない、教えない

*個人情報について,お子さんと一緒に確認しましょう。 名前・住所・生年月日・学校名・学年や組・おうちの人のこと・塾・クラブ・よく行く場所・顔写真・友だちのこと・IDやパスワード等




この本だいすきの会(京都南支部)

京都府警察ネット安心アドバイザー/近畿総合通信局e-ネットキャラバン準専任講師/人権擁護委員/放課後児童支援員

岡田 典子さん

幼稚園教諭、子育て支援のNPO副理事長を経て、子どもたちの健全育成への関わりを深め、2008年より主に京都府内小中学校・高校を中心に情報モラル教育の講師として尽力。現在、放課後児童支援員として児童館に勤務しながら人権擁護委員としても、情報モラル講座や人権教室を実施。読みがたりや昔ばなしの再話研究にも力を入れ、特に乳幼児の保護者に「スマホより絵本とわらべうたで子育てを」と伝えている。

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