公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

ネット GIGAスクール時代に必要な情報教育とは

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:ネット編VOL.32 担当:石川 千明


GIGAスクールとは

GIGAスクール※1とは、全国の児童・生徒 1人に1台のコンピュータと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組みのことです。
2019年から段階的に実施する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大からオンライン学習の必要性が高まり、計画を前倒しして2021年3月末にはほぼ全小中学校が整備されたと言われています。

また2023年3月末には全国の高校1年生にも拡大され、情報1が共通必履修科目になり全員がプログラミングを学ぶようになります。※2

GIGAスクールでは「情報活用能力」を育成するために
①情報活用の実践力(文字入力、インターネットの情報の適切な活用)
②情報の科学的な理解(プログラミング的思考の育成、コンピュータの仕組みの理解等)
③情報社会に参画する態度(情報モラル 情報発信による他人や社会への影響、危険回避等)等を学習します。
※1 GIGAスクール構想について
※2 高等学校における1人1台端末の環境整備について



トラブル多発中?

学校だけでの利用ではなく、家庭学習でも利用していくことになりますが、学校のコンピュータを持ち帰って子どもたちがすぐにしたことは学習ではなく動画の長時間視聴でした。
これまででもゲーム、スマホの利用だけでも四苦八苦してきたのに、子ども部屋で勉強しているのかと思ったら動画を真夜中まで見ていて睡眠不足から体調が悪くなってしまった等も相談を受けました。

利用のしかたなどを話し合わずに自由にさせてしまうと、どうしても子どもたちは楽しい方に流れてしまいます。また保護者へGIGAスクールがめざすことの共有が無いため、保護者が置いて行かれていることにも問題があるように感じます。



起こった問題から考えなければいけないこと

学校でもGIGAスクール端末を使ったトラブルは多く聞かれています。 学校のIDを利用してのシステムでいじめが起こり、それを苦に被害者が命を絶ったという大変悲しいニュースを聞かれた方もいらっしゃると思います。端末を使っての校内での盗撮問題も起こっています。

家庭での長時間利用も、これらの問題も根っこを辿ればGIGAスクール端末の問題ではありません。
その行動がどういう意味を持つのか、起こりうる問題を予測する力、その前にそれは人としてやっていいことなのかダメなのか、ひとりひとりがよく考え行動できることが必要なのです。



GIGAスクールがめざすもの

GIGAスクールでは、未来へ続くデジタル社会を生き抜くためのスキルを学ぶプログラムが、初等教育の時期から丁寧に組まれています。
ただ2019年から段階的に進める予定だったものが、コロナ禍で一気に始めることになってしまい、教える側の大人の準備が間に合っていない状況ですが、それもやがて時間とともに解決していくでしょう。

GIGAスクール教育を語るときに、避けることができないキーワードが『デジタルシティズンシップ教育』※3です。
デジタルシティズンシップ教育は、私たちの日常生活において、テクノロジーを使う人々が「善きデジタル社会の担い手」を目指すための教育です。

テクノロジーを使うひとりひとりが責任を持って使用するということはどういうことか、デジタル社会での人権教育の側面があります。学校で学んで終わりではなく、学校や家庭の生活の中で起きた問題をどう捉え、どう解決していくのかを皆で考えることが大事です。
※3 デジタルシティズンシップとは何か――1人1台時代のデジタルシティズンシップ


デジタルを『使わせない』から『使う』時代へ

GIGAスクールが始まったことでデジタルを使わせない時代から積極的に使わせる時代に大きく舵を切りました。
スマホの利用を議論していた時はルールをどうやって守らせるか?ということで議論してきましたが、GIGAスクール時代にかわり、子どもたち自身が自分ごととしてトラブルを回避したり、自律しながらより良い活用するための教育が必要になります。

そのために私たち保護者も自律してデジタルを利用できるスキルを身につけ、より良い利用の仕方を親子で話し合い、未来へつながる使い方を考えていけると良いでしょう。



石川千明公式サイト

NPO法人 奈良地域の学び推進機構・理事、京都府警察 ネット安心アドバイザー

石川 千明さん

(株)カプコンでゲーム企画を担当。 退職後web企画制作、コンサルタントとして活動。'01年~子育て支援グループいこま育児ネット設立、'08年~自治体、学校等でICT支援活動を開始。それらの経験また母親目線から、わかりやすくネットトラブルの現状と対策を解説する。生駒市人権審議委員(22年任期満了)、森のムッレ教室リーダー、防災士など多方面で活動中。

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