公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 防犯ボランティアを盛り上げる、学生たちの力

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.74
担当:安全インストラクター 武田信彦



3年ぶりに開催された、学生向けの防犯ボランティア研修会

2022年12月23日、「セーフティかながわユースカレッジ」が開催されました。神奈川県と神奈川県警察本部が主催する、学生を対象とした防犯ボランティア研修会です。コロナ禍の影響を受けて3年ぶりの開催となりましたが、夏と冬の2回開催することができました。今回、私も3年ぶりに講師とファシリテーターを務めました。ユースカレッジには、かれこれ10年ほどかかわっており、講師のほかテキスト作成なども担っています。全国的に見ても継続的かつ実践的な研修会で、県知事名が入った修了証が授与されるなど、主催する県や県警の意気込みをも感じます。

 さて、ちょうど多くの学校で終業式を迎えたタイミングだったので参加人数には不安がありましたが、予想の60名を超えて100名もの学生のみなさんが来場されました。今回はとくに高校生の参加が多かったことが印象的でしたが、これまでの開催では、専門学校生や大学生、さらに中学生も参加するなど、学年や学校を超えた交流ができることもユースカレッジの魅力といえる部分です。広い会場にて、「講演」「実技」「情報交換」の3部構成で実施しました。


講演では、市民防犯の必要性やあり方、大学時代から防犯ボランティアにかかわってきた私の立場から、やりがいや魅力などを紹介。実技では、コミュニケーション力に重きを置いた「身を守るコツ」や「逃げる技」を練習。情報交換では、参加者同士でグループを作り、「参加しやすいボランティアのスタイル」について考え、アイデアを出し合いました。

ボランティア活動を通して得られるもの

最近、自治体や警察においては「地域防犯力の強化」がテーマになることが増えてきました。長年地域で取り組んでおられる防犯ボランティアのみなさんが、高齢化や人数減少などの課題と直面していると言われているからです。その中で「次世代の防犯力」として学生防犯ボランティアへも熱視線が注がれています。しかし、単に「人数を増やすため」の推進であれば、その輪が広がることはないと思います。なぜなら、ボランティアは自発的な姿勢が原点であり、そのためには「やってみたい!」と思える要素が不可欠だからです。


  学生防犯ボランティアの推進で大切なことは、「なぜ必要とされているのか」「どんな役割や活動ができるのか」をしっかりと明示していくことです。その点に気づけている学生のみなさんは、地域の中でいきいきと力を発揮しています。大学生であれば、サークル等の団体が多く、高校生等であれば、学校の校外活動として参加するスタイルが多いようです。とくに学校がサポートしている場合は、担当の先生方のご理解やご協力が欠かせません。「危険なことがあるのでは...」「学生に負担があるのでは...」などの誤解や不安を払拭すべく、正しい情報を広げることがもとめられています。


 今回のユースカレッジでは、学生のみなさんのアイデアや意見にもたくさん触れました。一人ひとり主体的に考えている姿勢が、とても頼もしく感じました。社会課題を知る、自治体や警察と協働する、アイデアを実践する、地域のみなさんや子どもたちと触れ合う、そして、仲間たちと協力する。防犯ボランティアに参加することで、これからの人生で役立つ多くのエッセンスを得ていただきたいと思っています。

うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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