コラム
防犯 地域を守る、"市民防犯"のあり方
専門家コラム:防犯編VOL.78
担当:安全インストラクター 武田信彦
「市民防犯」と「警察防犯」は、治安維持のパートナー
今年度も、全国各地で防犯ボランティア研修会や、児童・生徒向けの防犯セミナーの講師を務めています。マスク着用も原則として個人の自由となり、お互いに顔が見える環境も少しずつ戻ってきていますね。研修会やセミナーが、地域の防犯力アップにつながればと思っています。
"地域の防犯"というと、一般的には「警察の役割」といったイメージが強いかもしれません。しかし、防犯ボランティアの広がりと活躍により、今や警察と地域住民は"治安維持のパートナー"として位置づけられています。
警察が行う「犯罪抑止」を中心とした防犯を、私は「警察防犯」と呼んでいます。「犯罪抑止」には、武器の所持や権限の行使などが含まれるため、一般市民では扱えない領域です。また、警察官は職務質問や捜査など、犯罪へ直接対峙する面もあるため「直接的防犯」とも表現しています。
一方で、「一般市民ができる防犯」を「市民防犯」と呼んでおり、地域住民やNPOなど一般市民が行う「犯罪防止」を中心とした防犯、という意味で用いています。「犯罪防止」と言っても力の行使は含まれず、「犯罪が起きにくい環境づくり」や「助け合いの環境づくり」を目的とした防犯活動です。"環境づくり"の意味合いが強いことから「間接的防犯」とも表現することができます。
ちなみに、「間接的」だから効果が弱い...わけではありません。防犯ボランティア活動での見守りやあいさつ、健全な声かけを通して、悪意や犯意をもつ者にとっては居心地が悪い環境を、地域の人々や子どもたちにとっては見守られることで安心感を得るような環境を生み出す力があります。見守りの優しいまなざしの中で「人と人とがつながり合える防犯」は、日本の地域がはぐくんだ安全文化ともいえるものです。
いま、子どもたちの安全を守るための通学路の防犯対策などにおいては、警察と地域住民等が協働・連携し、それぞれが地域を守る両輪となって取り組んでいます。市民防犯のあり方や意義を知ることは、防犯ボランティアを支援・推進される警察や自治体のみなさんにとっても重要であると考えています。
全防連の広報誌「安心な街に」で連載が始まりました
さて、5月から防犯に関する新たな記事の連載を担当することとなりました。公益財団法人全国防犯協会連合会(全防連)が発行する広報誌「月刊 安心な街に」です。「高めよう防犯力!広げよう見守り!」と題して、防犯ボランティア活動の意義や効果、防犯パトロールのコツなどをはじめ、児童・生徒向けの防犯指導のコツについても紹介してまいります。5月号から隔月で奇数月に掲載される予定です。
記念すべき連載第1回では、「『市民防犯』という視点」のタイトルで記事を書かせていただきました。私の専門である「市民防犯」のあり方や、その意義を解説しています。防犯ボランティアや見守りといった、地域住民が行う防犯活動(地域の分野)と、「自分を守る力」として一人ひとりが行う防犯対策(個人の分野)という、おもに2つの領域を扱っています。
「月刊 安心な街に」には、警察や防犯の専門家による記事をはじめ、各地で活躍されているみなさんの活動を紹介する記事も掲載されています。とても読み応えがある一冊ですので、手にする機会がありましたらぜひご覧いただければと思います。
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。