コラム
ネット SNSでのドッキリについて考える
専門家コラム:ネット編VOL.39 担当:谷山 大三郎
こどもがいじめ被害者にも加害者にもならないために
夏休みも後半を迎えました。元気いっぱいのこどもたちが自由に楽しく遊ぶ姿を見ると、本当に素敵な時期だと感じます。ただ、楽しいひとときを夢中で過ごすからこそ、知らぬ間に友達を傷つけてしまうことがあるかもしれません。保護者にとっては、自分のこどもがいじめ被害者にならないことだけでなく、いつの間にかいじめ加害者になっていないかというのも気になるところ。今回のコラムでは、自分のこどもがいじめの加害者にならないために、夏休み期間だからこそできることをお伝えします。
こどもは「いじめをしてはいけない」と知っているが、いじめをしてしまう
「こどもはなぜいじめをしてしまうのか」。初めにここから考えていきたいと思います。 私は、悪意を持ってわざと他人をいじめるこどもは少ないと考えています。なぜならこどもたちが、学校や家庭で「いじめをしてはいけない」ということを学んでいるからです。実際に、文部科学省が行った児童生徒アンケートでも「いじめはいけないことだと思う」と回答する小学生は80%を超えています。では、なぜ「ダメだと思っていてもいじめをしてしまう」のでしょうか?
いじめをしてしまう原因の一つは、認知のゆがみにあると私は考えています。認知のゆがみとは、自分の都合のよいように事実を解釈することです。たとえば、いじめた理由を「みんな盛り上がっていたし、本人も喜んでいたから」とか「やられたからやり返しただけ」などと正当化しようとするといったことです。どんなことがあったとしても、いじめをしていい理由はありません。自分のこどもがいじめ加害者にならないために、人がされてうれしいと思うことや傷つくことはどんなことか、ふだんから家庭の中で話題にし、対話を重ねておくとよいでしょう。
ドッキリについてこどもといっしょに考えてみる
ここで、ドッキリを題材に考えてみましょう。ドッキリを、「うれしいドッキリ」と「うれしくないドッキリ」の二つに分けて考えてみます。「うれしいドッキリ」とは、たとえば誕生日のサプライズケーキやプレゼントなどでしょうか。相手が喜ぶことを一生懸命考え、相手の気持ちにも配慮したドッキリは、多くの場合喜ばれることでしょう。
逆に、「うれしくないドッキリ」とはどんなものでしょうか?最近ではSNS上で有名人が行うドッキリ動画が増えているのをご存じでしょうか。コーラのペットボトルに醤油を入れて持ち主が知らずに飲む様子を見て笑ったり、大切なものを隠して持ち主が慌てる様子を観察して笑ったりするといった動画です。まねをして実際にやってしまったら、相手を傷つけてしまいます。

学校生活の中でも起こりうる、ドッキリやなりすましといったSNSいじめ
一方、こどもたちの間でネットを通じたいじめの状況はどうなっているのでしょうか?学校現場で実際に起こっている事例として、本人に許可なく画像を加工し拡散するといったことも耳にします。友達の写真から上半身の画像を切り取り、ほかの友達の下半身と合成してクラスのSNSに投稿するといった事例です。一昔前と比べ、今はきれいな画像加工が簡単にできるため、加工された本人も気づかないことが多く、いつ気づくか友達と予想していたそうです。
また別の事例では、他人のSNSを使って本人になりすまし、「あなたが好きです」とウソの告白をしたといったものもありました。ウソの告白を行ったこどもは、周囲が慌てる様子を見て面白がっていたと話したそうです。このように誰かを困らせること、そして困っている様子を見て快感を覚えてしまい、だんだんエスカレートするといったケースは少なくありません。しかしこれらはいじめであり、どのような理由であっても、他人を傷つける行為は許されません。
夏休みの対話をきっかけに、こどもの想像力を育む
気づかないうちに相手を傷つけてしまうことがないよう、どうしたら相手がうれしい気持ちになるか、嫌な気持ちになるかといったことを家庭で話し合い、日ごろからこどもたちの想像力を育んでおくことが大切です。また、もし自分がドッキリを受けて嫌な気持ちになったらどうしたらいいかを話し合うのもよいでしょう。嫌なことがあったら保護者などにすぐに相談してほしいということや、友達にされて嫌だったことであればその気持ちを正直に相手に話すことなども伝えておきたいですね。
夏休みの時期にはこどもと過ごす時間が増える方も多いと思います。休みの過ごし方や楽しみ方などについて会話をする時間も増やせるとよいと思います。今回は題材としてドッキリやなりすまし、人が困っている様子を面白がる行為について取り上げてみましたが、何気ない話題をきっかけに、この夏休みにこどもとゆっくり対話を行ってみてはいかがでしょうか。
谷山 大三郎さん
1982年12月生まれ。スタンドバイ株式会社代表取締役、一般社団法人てとり代表理事、千葉大学教育学部附属教員養成開発センター特別研究員。いじめに苦しむこどもたちがいつでも相談、報告できるアプリSTADNBYの普及*1、アスリートと協働して、いじめなどの悩みを相談する窓口を周知するプロジェクトの推進*2、いじめ防止啓発を目指した学校向け教材の開発に取り組む。