公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 多様な担い手による、多様な見守りを

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.81
担当:安全インストラクター 武田信彦



さまざまな人たちが地域防犯の担い手に

 6月17日(土)、東京都庁にて「防犯ボランティアのつどい」が開催されました。東京都が主催する、都内の防犯活動の活性化を目的としたイベントです。私は、講演と情報交換会での進行を担当しました。当日は、会場となった都庁大会議場への来場のほか、オンラインでの参加もあり、対面とオンラインでのハイブリッド開催となりました。

 現在、通学路での見守りなど、地域での防犯活動の必要性は高まっています。一方で、防犯ボランティアの高齢化やメンバー減少が課題となっています。今回の「つどい」においても、「多様な担い手による、多様な見守り」がテーマとなり、実際にさまざまな分野から参加者が集まりました。自治会、防犯ボランティア団体、PTAやおやじの会、ジョギングの団体、愛犬とのわんわんパトロール、大学生、高齢者福祉施設、ドローン事業者、ご当地アイドル...。すでに活躍している方々をはじめ、「できることがあれば、取り組みたい!」と情熱をお持ちのみなさんが多く、大きな可能性を感じることができました。

 これまで育まれてきた見守り・助け合いの安全文化を広げていくためには、継続的に活躍されている防犯ボランティアを応援するとともに、新たな視点で防犯を活性化していくことも大切です。たとえば、「きっかけがあれば参加したい」「何かできることがあれば取り組みたい」という想いをもつ潜在的な防犯力を掘り起こしたり、地域で活動する企業や他分野の団体とのコラボレーションなど新しい防犯力を創出したりと、防犯を広い視野でとらえていくことがもとめられています。



コミュニケーションが育む地域の安全と安心

 さて、8月29日(火)には、栃木県等が主催する「栃木県誕生150年記念・安全安心シンポジウム」が開催され、「地域防犯力の強化に関するワーキンググループ」で取りまとめた方針を実行していく、キックオフの場となりました。このワーキンググループは昨年度設置されたもので、私が座長を務めました。シンポジウムでは、県知事をはじめとする皆様のあいさつ、「とちぎ安全安心アンバサダー」の任命などに続き、私は講演とパネルディスカッションの進行を担当しました。

 パネルディスカッションでは、栃木県内で活動している防犯ボランティア団体、地域との連携を育んでいる小学校の校長先生、地域の防犯活動を推進している防犯協会のご担当者、さらに、防犯講習を受講して防犯啓発に取り組む高校生のみなさんがパネリストとして登壇されました。ディスカッションの中では、「活動を継続していくコツ」「仲間や意識を広げるためにできること」「気軽に取り組むためのアイデア」などについて活発に意見が交わされました。市民防犯は、目に見える達成感が得にくい分野ではあるものの、あいさつやありがとうの声かけ、世代を超えた交流など、人とのつながりを感じられることに多くのやりがいが見出されていました。

 また、住民とともに協働・連携して地域の防犯力向上をめざす自治体や警察、関係機関においては、誰もが無理なく参加しやすい「きっかけづくり」を後押しすることや、多様化する防犯活動をサポート・フォローすることも重要です。一人ひとりがライフスタイルに合わせて行う「ながら見守り」が普及する中、防犯ボランティア団体数が「平均月1回以上の活動実績、メンバー5名以上」といった従来型のスタイルをベースにカウントされていることについても、新たな視点が必要なのかもしれません。



うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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