コラム
ネット うちの子がこっそりアダルトコンテンツを見ていたら
専門家コラム:ネット編VOL.43 担当:高橋 大洋
子どもが見ている動画の内容が気になる...
親子で共有しているタブレット。子どもが入れたであろう、性的な検索キーワードが残っている。閲覧履歴にもヘンなタイトルが。挙げ句の果てに、"そういう動画"を見ている最中に、子ども部屋のドアをうっかり開けてしまった...。
ここまでタイミングが悪いことはそうそう無いでしょうが、アダルトコンテンツに限らず、保護者にとって、子どものネット利用の中身をどう受け止めるべきかは、なかなか難しいものです。
たとえば、ゲーム実況者のショート動画を延々と見ている子どもには、時間の使い方をもっと考えて!と叱言の一つも出るでしょう。暴言や迷惑行為ばかりのYouTuberに夢中になっている子どもには、そういうのあんまり見ない方がいいよと言いたくなりますよね。
いずれも保護者なりに、そのコンテンツは無価値だ、または子どもに悪影響があると受け止めた結果、出てくる反応だと思います。
保護者としては、どう対応するのがいい?
では、子どもがアダルトコンテンツを見ていることがわかったとき、保護者としてはそのことをどのように受け止め、反応するべきなのでしょうか。
そもそも、性について子どもと話し合う機会がほとんどなかったというご家庭のほうが多いかもしれません。保健体育の授業の教材を見せてくれたときに、少し感想を聞いたぐらいではないでしょうか。
そんな状態で、子どもがこっそりネットでアダルトコンテンツを見ていたとします。
もちろん、即座に困ったことが起きるわけではありません。ひょっとしたら、そのまま何も影響はないかもしれません。
悪影響があったとしても、何か月、何年と経ってからのことでしょう。あわてなくても大丈夫です。冷静になり、順を追ってゆっくり考えていきましょう。
問題点はどこにあるのか、考えてみましょう
まず、アダルトコンテンツ視聴の悪影響はどこにあるのでしょうか?筆者が懸念しているのは、性的な行為についての子どもの見方が、著しく偏り、そのまま大人になってしまう可能性があるという点です。
本来、性的な行為というのは、それ単独で取り出して語れるようなことではありません。相手を対等な人格として尊重することを大前提とした、人と人、心と心の交わりの一部分であるはずです。
しかし、アダルトコンテンツの中でそうした部分が描かれることは、まずありません。最初から相手の人格を無視した筋書きが、一つのジャンルとして確立しているくらいです。
一方、性的な行為についての見方を育ててくれるような機会がほかにも数多くあるのなら、たかがアダルトコンテンツの視聴にそれほど目くじらを立てる必要もないでしょう。
アダルトコンテンツでの性の描き方は、とても極端に誇張されたもの、かつ一面的なものだということを、すぐに子ども自身が発見できるに違いありません。
ところが、性的な行為というのは、きわめてプライベートな話題です。子どもにとっては、他者のさまざまな考え方や経験を知り、学ぶ機会がきわめて乏しいのです。
言い換えれば、ただでさえ学びにくい性的な行為について、極端に偏ったアダルトコンテンツを唯一の教科書代わりにしてしまうところに問題点があるということです。
信頼できる大人として、真剣に向き合う
ぜひ一度、こうした視点について考えてみていただけると、子どもがアダルトコンテンツを見ていたという時の受け止め方や、反応のしかたが、少しすっきりとしてくるのではないかと思います。
そして、ぜひ機会を見つけてご家庭でお子さんと話をしてみてください。アダルトコンテンツを漠然と「子どもにはふさわしくない」存在ととらえるのではなく、暴力的、一方的で、「現実離れしたフィクション」なのだという見方を、信頼している大人が真剣に伝えてくれることは、とても大切な道しるべとなるはずです。アダルトコンテンツに興味を持ち始めた子どもにとって、自分を一人前に扱い、正面から話をしてくれる保護者の存在はとても大切なものだといえるでしょう。
高橋 大洋さん
フィルタリング開発会社での勤務をきっかけに、「ネットとのつきあいかたをオトナにも分かりやすく」に取り組む。子どもとネットについての調査・研究や教材開発、指導者養成の他、保護者・教員向け研修講師としても活動。著書(共著)『学生のためのSNS活用の技術』(講談社)。子どもたちのインターネット利用について考える研究会 事務局、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA) 事務局、ポールトゥウィン株式会社 契約パートナー、小樽商科大学・帯広畜産大学・北見工業大学 非常勤講師。札幌市在住、子どもは16歳と13歳。