公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 集合住宅でも、防犯対策を忘れずに!

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.84
担当:安全インストラクター 武田信彦


集合住宅内も、通学路の延長としてとらえる

 先日、分譲マンションの管理業務等を行う企業から防犯動画制作の依頼をいただきました。私はおもに地域防犯を専門としているので、施設警備は対象外...と思っていたところ、「マンションの周辺および敷地内で個人ができる防犯対策」ということで、地域防犯にふくまれる内容でした。子どもたちの防犯対策において、マンション等の集合住宅の敷地内での犯罪被害は目立っており、注意が必要な場面の一つといえます。私も助言を務めている警察庁制作の防犯コンテンツ・子ども編「みんなで守ろう!子供の安全!」においても、犯罪被害が目立つ場面として、①道、②駐車場・駐輪場、③公園、そして、④集合住宅の共有部分と明記されています。

 とくに児童の下校時などに、悪意や犯意ある者に尾行され、集合住宅等の自宅周辺で犯罪被害にあってしまうというケースがあるのです。通学路の防犯対策というと「公共空間」をイメージしがちですが、集合住宅等の自宅周辺、すなわち「プライベートな空間」での防犯対策も欠かせません。「家の玄関ドアのカギを内側からかける瞬間」まで、防犯対策や意識が欠かせない!ということをあらためて確認いただきたいのです。


建物の防犯設備を過信しない

 集合住宅の構造もさまざまです。居室の玄関先までだれでもたどり着ける構造のものもあれば、いわゆるオートロック形式など、建物のエントランスからは居住者のみが出入りできるシステムを導入している構造のものもあります。また、防犯カメラが各所に設置されていれば、安心感をおぼえることもあるかもしれません。

 しかし、防犯設備だけに頼る防犯対策には限界があることも知っておくべきです。オートロック形式のエントランスドアが設置されていても、裏手に回ると、駐車場や駐輪場に併設されている出入口が手薄なこともあります。防犯カメラについても、普及しているもののほとんどが記録型のため、異変を察知して即応してくれるわけではありません。また、防犯性の高い設備を有している集合住宅もありますが、作業員や配達員等を装った人物が入り込む余地は十分にあります。

 防犯設備には、悪意・犯意を寄せ付けない一定の防犯効果が期待できるものの、住宅に暮らす人たちがそれを過信してしまうと、「予想外の隙」を生み出すことにもつながります。くれぐれも油断は禁物です。


個人の防犯対策も忘れずに!

 こちらのコラムでもくり返し紹介しているように、「個人の防犯対策」も欠かさずに実施していただきたいと思います。たとえば、通学路を利用するお子さまであれば、ときどき後方を振り返ることが効果的です。危険をすばやく察知する予防力、悪意・犯意ある者に対して「コントロールされない!」という抵抗力を示すことができるからです。とくに、集合住宅の敷地に入る時、エントランスに入る時、エレベーターや外階段を利用する時、そして、自宅の玄関ドアを開ける時も周囲をしっかり確認してください。防犯ブザーも効果的です。とくに建物内で使用すると、壁に反響してより大きな音が発生します。ご自宅周辺でも危険を感じたら、迷わず防犯ブザーを鳴らしてください。

 また、集合住宅に暮らす大人のみなさんも、防犯対策を忘れずに。空き巣などの泥棒、自転車やバイクの盗難、自動車の車上荒らしなどの犯罪被害が発生しており、その多くが「無施錠」のところをねらわれています。短時間であっても、玄関ドアや乗り物の「カギをかける」、上階であっても窓の「カギをかける」を、お忘れなく。

 万が一、集合住宅の敷地内やその周辺で不安なことがあった場合は、警察へ通報・連絡することをおすすめします。また、防犯カメラや共有部のドアなど、建物の安全に関わる設備等の不具合を発見した際は、管理会社へすぐに知らせましょう。集合住宅に暮らす人たちが一番気づきやすく、すばやい対応や改善につながるからです。また、地域防犯と同じように、居住者同士があいさつを交わすなど、プライベートを守りつつもゆるやかにつながり合える環境づくりは、防犯対策として効果を発揮します。「おはようございます」「こんにちは」、気軽なあいさつから始めてみてはいかがでしょうか。




うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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