コラム
ネット 自分の身体を大切にする
専門家コラム:ネット編VOL.44 担当:谷山 大三郎
性犯罪に遭わないための、「生命(いのち)の安全教育」とは
近年、「生命(いのち)の安全教育」の取り組みが広がっています。「生命(いのち)の安全教育」とは、子どもたちを性犯罪・性暴力の加害者・被害者・傍観者にさせないことをめざして、文部科学省と内閣府が連携して作成した教育プログラムです。2021年4月に文部科学省が教材と指導の手引きを公開し、2023年度からは全国の小学校、中学校、高等学校での活用が推進されています。
この取り組みの背景には、子どもたちが性犯罪被害に遭うリスクの増加があります。例えば、警察庁によると、児童ポルノ事件の検挙件数は年々増加し、2022年は1,461人もの被害児童数が確認されました(警察庁「【児童買春事犯等】 検挙件数・検挙人員・被害児童数の推移」より)。
学校だけでなく、私たち保護者ができること
「生命(いのち)の安全教育」は、学校だけでなく、私たち保護者も積極的に取り組むべきものです。特に、性暴力被害を受けた子どもは相談するのをためらうことが多く、被害の早期発見が困難です。そのため、性暴力被害の予防と早期発見は保護者の重要な役割です。
日頃から家庭内でコミュニケーションをとることに加え、冒頭で紹介した「生命(いのち)の安全教育」のプログラムを活用するなど、家庭でできることを行うことが大切です。「生命(いのち)の安全教育」については、保護者向けの案内も提供されているので、ぜひ参照してください(注3)。
プライベートゾーンについて一緒に考える
ここで一つ事例として、「自分の体を大切にする」というテーマでの家庭内コミュニケーション方法を紹介します。以下の二つのイラストを紹介し、子どもたちと対話を行うというものです(イラストは当社が作成したものです)。
両イラストは赤い服を着た主人公が友達と遊んでいる際、体をタッチされるシーンを描いています。一つのイラストでは、ハイタッチをして楽しそうな表情をしていますが、もう一つでは、おしりをたたかれた際の複雑な表情が描かれています。
これらのイラストを通じて、「主人公はおしりをタッチされたとき、どんな気持ちだったのだろう」、「友達はおしりをタッチしたけど、悪いことをしたのだろうか」といった質問を子どもたちに投げかけ、一緒に考えます。そして「じぶんのからだ」も「ほかのひとのからだ」も大切であること、もし自分の大切なところに、誰かがさわってきたら「イヤだと言うこと」、「その場から逃げること」、そして「安心できる大人に相談すること」を伝えます。
学校と保護者がそれぞれの役割を果たし、子どもたちが性暴力の被害者、加害者、傍観者にならない社会を、大人が一丸となりめざすことが重要です。
谷山 大三郎さん
1982年12月生まれ。スタンドバイ株式会社代表取締役、一般社団法人てとり代表理事、千葉大学教育学部附属教員養成開発センター特別研究員。いじめに苦しむ子どもたちがいつでも相談、報告できるアプリSTADNBYの普及*1、アスリートと協働して、いじめなどの悩みを相談する窓口を周知するプロジェクトの推進*2、いじめ防止啓発を目指した学校向け教材の開発に取り組む。