公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

ネット 子どもがネットいじめ加害者にならないために、大人ができること

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:ネット編VOL.48 担当:谷山 大三郎


ネットやSNSのトラブルが起こりやすい夏休み

もうすぐ夏休みが始まります。子どもたちが自由な時間を持つこの季節は、インターネットやSNSの利用が増える時期でもあります。それに伴い、SNSでのいじめやネットトラブルも起こりがちに。近年、子どもたちが一人一台の端末を使用することが一般的になり、学校の中でもネットトラブルやネットいじめが問題となっています。また、SNSやメッセージアプリも、私たちのコミュニケーションの一部として欠かせない存在になりました。しかし、その便利さと手軽さゆえ、時に他者を傷つける手段として使われてしまうことも。特に、子どもたちがSNSを通じて無意識にいじめの加害者になってしまうケースが増えています。夏休みに前のこの時期に、今回ご紹介する具体的事例を通じて、SNSの使い方について子どもたちと一緒に考えてみてはいかがでしょうか。


自分のSNSなら何を書いてもいい?

こちら は、SNSへの書き込みについて問題提起をする、2分半ほどの動画教材です(YouTubeのアニメーション教材が再生されます)。

部員一同必死に練習して迎えた、サッカー部の夏の大会。試合の終盤でオサムはPKを失敗し、負けに終わってしまいます。チームメンバーのトモノリはもやもやした気持ちを抱え、その日の夜、自分のSNSのプロフィール欄に間接的にオサムへの悪口と取れる書き込みをしてしまいました。偶然書き込みを見たオサムはショックを受け、翌日学校を欠席。それを知ったトモノリは戸惑ってしまう、というストーリーです。

この教材のねらいは、SNSやメッセージアプリのプロフィール欄に誰かの悪口を書く行為について考えることです。近年、このように巧妙にぼかした悪口が書かれるケースが多く見られます。このようなぼかした表現を用いることで、自分の表現が他者にどれほどの傷を負わせるかについて無自覚になってしまう可能性があります。

SNSに書き込んだ瞬間は気が晴れたトモノリでしたが、教材の中ではその後の展開を受けたトモノリの気持ちの変化が描かれています。トモノリはこの後、どのような行動をとるのでしょうか。試合に負けた悔しさからつい書き込みをしてしまったものの、オサムを傷つけるつもりはなかったことも重要なポイントです。

教材の概要や詳細は「Changers(チェンジャーズ)」ウェブサイトにも掲載しています。


夏休みを迎える前に子どもと話し合っておきたい、おすすめのテーマ

この教材をきっかけに、例えは次のことについて子どもと話し合ってみてはいかがでしょうか。

①なぜ、メッセージアプリのプロフィール欄に悪口を書いてしまうのだろうか。
子どもが直接相手に伝えるのではなく、プロフィール欄に書くことで自分の感情を発散しようとする心理について考える。

②自分のプロフィール欄なら何を書いてもよいという主張は認められるだろうか。
自分のスペースであっても、他者を傷つける内容を書いて良いわけではないことを考える。

③間接的で冗談めいたメッセージであっても、受け手が強く傷ついてしまうことがある。
自分の発言が他者にどのような影響を与えるかを話し合う。

④SNSに悪口を書き込むことのリスク
SNSは誰が見ているかわからないこと、書き込みが切り取られて拡散される可能性があること、自分が誹謗中傷を受けるかもしれないことについて話し合う。

⑤悪口を書く以外に、イライラした気持ちを解消する方法はないだろうか。
ポジティブな感情の発散方法について話し合い、健全なストレス解消法を見つける。

インターネットやSNSを、子どもたちの学びの場として活用

インターネットやSNSは便利なツールであるとともに、子どもたちにとって重要な学びの場でもあります。今回の事例を通じて、他者を傷つける行為がどれほどの影響を与えるかを理解し、使う際のルールとマナーについてご家庭で話し合ってみましょう。インターネットやSNSは便利なツールですが、使い方を誤ると大きな問題につながることもあります。子どもたちに悪気がなくても、いじめの加害者になってしまうこともあり得るのです。そうならないためにもご家庭で話し合いを重ね、子どもたちがインターネットやSNSの健全な利用を心がけてくれることを願います。


スタンドバイ株式会社

スタンドバイ株式会社 代表取締役

谷山 大三郎さん

1982年12月生まれ。スタンドバイ株式会社代表取締役、一般社団法人てとり代表理事、千葉大学教育学部附属教員養成開発センター特別研究員。いじめに苦しむ子どもたちがいつでも相談、報告できるアプリSTADNBYの普及*1、アスリートと協働して、いじめなどの悩みを相談する窓口を周知するプロジェクトの推進*2、いじめ防止啓発を目指した学校向け教材の開発に取り組む。

*1 https://standby-corp.jp

*2 https://standbyyou.jp/

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