コラム
ネット オンラインゲームのこどもへの影響は? ~叱る前に大人ができること~
専門家コラム:ネット編VOL.55 担当:松田 直子
こどもの言葉遣いが心配...。のめり込みやすいゲームの特徴とは?
「最近、ゲームをしているときのこどもの言葉遣いが荒くなった気がする」
「人を攻撃するような言い方が増えて心配だ」
こうした声を、保護者からの話や教育現場で耳にする機会が増えています。背景にあるのが、バトルロイヤル系に代表される対戦型オンラインゲームの広がりです。
依存やのめり込みにつながりやすいゲームの特徴として、①終わりが見えにくい、②勝敗やランキングが明確、③短時間で強い達成感が得られる、という点が指摘されています。バトルロイヤル系ゲームは、最後の一人(または一組)になるまで勝敗が決まらず、「次こそは勝ちたい」「負けたままでは終われない」という心理が働きやすい構造をもっています。
なぜ言葉遣いが悪くなるのか
こうしたゲームでは、緊張感の高い場面が続き、仲間との連携や即時の判断が求められます。その結果、命令口調や強い言葉、相手を挑発するような表現が、ゲーム内では「当たり前の言葉」として使われやすくなります。こどもは環境に応じた言葉を吸収するため、ゲーム内で使われている言葉遣いを、無意識のうちに日常生活に持ち込んでしまうこともあります。これが、「言葉遣いが悪くなった」と大人が感じる大きな要因の一つです。
ところで日本には、ゲームの内容が年齢に適しているかどうかを示す「 CERO(セロ)によるレーティング制度」があります。これは暴力表現や性表現、反社会的行為の描写などの程度に応じて、対象年齢を定めたものです。しかし実際には、「友だちがやっているからいいだろう」「オンラインゲームだから大丈夫だろう」と、内容を十分に確認しないまま遊ばせてしまうケースも少なくありません。
大人がゲームの中身を知ろうとする姿勢が第一歩
言葉遣いや行動への影響を考えるうえでも、まずは大人がゲームの中身を知ろうとする姿勢が欠かせません。一緒にゲームを楽しめれば、ご家庭での会話が増えるきっかけにもなりますが、忙しくてそこまで時間が取れない保護者の方も多いでしょう。そうした場合でも、ゲームタイトルを検索するだけで、年齢区分マークによりそのゲームがわが子にとって適切かどうかをすぐに確認できます。
また、YouTubeなどではゲーム実況動画が多く配信されているので、短い時間でもゲームの雰囲気や言葉遣い、世界観に触れることができます。すべてを管理しようとするのではなく、知ろうとする一歩が、こどもとの対話につながっていきます。
こどもに伝えるときの「Youメッセージ」と「Iメッセージ」
そしてもう一つ重要なのが、こどもの言葉遣いの変化を感じたとき、保護者がどのように声をかけるかです。ここでの関わり方が、問題をこじらせるか、対話につなげられるかの分かれ道になります。
ゲーム中の言葉遣いが気になったとき、保護者はつい強い言い方になりがちです。
たとえば、
「人を攻撃するような言葉使いはダメ!」
「乱暴な言葉に慣れてしまうでしょ」
「そういう言葉を使ってはいけません」
といった言い方です。これらはいずれも、主語が「あなた」になっている、いわゆる「Youメッセージ」です。正しいことを伝えているように見えても、言われた側は「責められている」「命令されている」「制限されている」と感じやすく、反発心を強めてしまうことがあります。
同じ内容でも、主語を「私」に置き換えた「Iメッセージ」にすると、受け止められ方は大きく変わります。
たとえば、
「(私は)人を攻撃するような言葉づかいは好きではない」
「(私は)乱暴な言葉に慣れてしまいそうで心配だよ」
「(私は)そういう言葉は使ってほしくない」
という伝え方です。
ここでは、こどもを評価したり、行動を決めつけたりするのではなく、保護者自身の気持ちや価値観を正直に伝えることがポイントになります。「命令」ではなく「気持ち」として伝えることで、こどもは「否定された」のではなく、「大切に思われている」と感じやすくなります。
思春期にはどんな言葉がけが心に響くか
思春期のこどもは保護者の言葉に敏感になり、距離を取りたくなるなど関係性も揺れ動く時期です。だからこそ、それまでのように「こうしなさい」「それはダメ」という一律な指示や命令だけでなく、保護者の不安や願いを素直に伝える「Iメッセージ」がこどもの心に響くかもしれません。
ゲームや言葉遣いをめぐるやり取りも、対立のきっかけではなく、こどもと一緒に考える対話の入口にしてみてはいかがでしょう。
<参考>
※厚生労働省補助事業「ゲーム依存相談対応マニュアル」ゲーム依存相談対応マニュアル作成委員会
※CERO特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構
静岡県ネット安全・安心協議会委員
松田直子さん
2003年4月、子育て中の母親たちが中心となり、NPO法人イーランチを設立。「だれもがICTで豊かに暮らせる社会づくりの応援」を活動目的に、主に教育機関などで情報モラル啓発活動に取り組んでいる。また近年のインターネットやスマホ利用の低年齢化を見据え、全国の幼稚園や保育園で乳幼児の保護者向け講座「スマホのある子育てを考えよう」を実施している。一般社団法人セーファーインターネット協会認定インストラクター、静岡県社会教育委員、静岡県人権会議委員、こども家庭庁(元 内閣府)作成 令和5年度版リーフレット「スマホ時代の子育て」監修。