公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

【第一回助成先団体のご紹介 Vol.4】特定非営利活動法人場とつながりの研究センター(兵庫県)

特定非営利活動法人場とつながりの研究センター

事務局長 大島様

経済的困難を抱える子どもの学び支援

第1回(平成26年度)「経済的困難を抱える子どもたちの学習支援活動助成」の助成先である、兵庫県三田市のNPO法人場とつながりの研究センター。助成を活用した事業として、地域の交流センター内のスペースを活用したまちの寺子屋「まなびあ」(水曜・金曜)、子どもが地域住民や学生とゆるやかなつながりを作ることを通して子どもの生きる力を育む「まなびサタデースクール」(土日祝に毎月1回程度)、そして、子どもの支援者育成のための研修会(年4回)に取り組んでいらっしゃいます。

今回は、助成対象事業を推進されている中心メンバーお二人にお話をうかがいました。

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お話をうかがったお二人。左から、大島一晃さん(場とつながりの研究センター事務局長)、中嶋和哉さん(『まなびあ』担当/Future Factory代表)

■活動の背景

場とつながりの研究センターは、もともと市民活動やNPOの支援を通じて、三田を中心とした阪神地域のまちづくりに貢献する団体として設立されました。そして、立場を超えて人が集う場づくりに取り組む中で、子どもの課題にも取り組むように。

「中高生のボランティアにアドバイザーとして関わるなかで、活動の一環として当市内のさまざまなボランティア団体の紹介ムービーを作ってもらったのですが、参加したメンバーに定時制高校に通う子が多いと感じていました。話を聞くと、不登校経験やいじめにあった経験のある子が多く、自尊感情が低くなっていたようです。そして、このボランティア活動を通して『自信が持てた』という、ある18 歳の女の子が、今度は『勉強したい』と語るのを聞いたことが、今回の『まなびあ』の活動につながっています。」(大島さん)

■三田まちの寺子屋「まなびあ」について

古くからの市街地である駅近辺、農村部、ニュータウン地域の大きく3 つに分かれる三田市内。学習スペース『まなびあ』は、市街内にある民家を改装した施設「県民交流広場 三田じばやん倶楽部」(地域市民の交流スペース)を活用して開かれています。

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<会場となる地域交流拠点「三田じばやん倶楽部」>


『まなびあ』は水曜と金曜の週2 回の放課後に開設。小学生から高校生、さらには卒業生など誰でも予約なく無料で利用できます。「まなびあ」とは、「まなび」ができるこの場所を経由して(via)社会に羽ばたいてほしい、という願いから名づけられました。

「1日の利用者は平均5~6人。毎回来る子が数人いて、さらにその日に来る子が加わるという感触です。3時間やっていますが、はじめから終わりまで過ごしている子も多いですね。」(中嶋さん)

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<活動中の様子> 

子どもたちを迎えるスタッフは、中嶋さんを中心に、さらに関西学院大学の学生2~3名が加わる体制になっています。地域住民が助っ人になってくれることもあります。スタッフのサポートを受けながら、集まった子どもたちは持ち込んだ教材で自主的な学習に取り組みます。主に宿題をする子どもが多いとのことですが、オープンしている時間内で「何をやっていてもOK」としているので、宿題が終わるとスタッフと、ゲームや工作などで一緒に遊ぶこともあります。

「異なる年齢の子どもたちが同じ場にいるので時にケンカも起きますが、関わりあいの中から子ども自身が気づきまなびあっていく関係を作っていきたいので、ニコニコ見守っていることもあります。」(中嶋さん)


■校区外の子も参加できる場づくり~まなびサタデースクール

放課後に開催しているので、どうしても家や学校から歩いて来れる子しか参加できません。校区外の子どももまた、まちの大人と出会いさまざまな体験ができる機会を作るにはどうすればよいか-と考えて取り組んでいるのが「まなびサタデースクール」。市内にある関西学院大学の学生の協力を得ながら、月に1回程度を行っています。

例えば、『30秒クリエイターズ』は、映像サークルに所属する学生の持ち込み企画。学生メンバーが自分たちの得意とするテーマで企画を持ち込み、企画立案の経験豊富なスタッフといっしょに議論を重ねてつくりあげていきます。

「子どもと大学生がチームを組み、テーマに沿って脚本、撮影、編集を行ってCM制作をしました。みんな初めての制作に戸惑いつつも、演技や撮影の中から笑顔が見えてきて、最終的には個性溢れる作品が完成しました。各々ひとつの作品を作り上げた達成感は大きかったと思います。」(企画を担当した、関西学院大学2回生の具志さん)

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<「30秒クリエイターズ」(2015年6月14日実施)>

また、企画に必要な人材を、団体が有する人脈から集めてくることもあります。10月に開催した『あの店、この人、どんなまち? わくわくレポーター』では、地元局の新聞記者に講師を依頼しました。過去には、地域の商店街の店主にゲストをお願いすることもありました。

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< 「あの店、この人、どんなまち? わくわくレポーター」(2015年10月3日実施)>

「企画づくりは、学生さんにとって普段の学生生活の中で"出会わない存在"と触れることができるチャンスだと思っているので、なるべく多くの人と出会ってほしい願ってサポートしています。自分たちが『4年間通ったまち』について関心を持つことで学生生活もまた違った視点で楽しめるでしょうし、将来何らかの形でまちづくりを担うときに役立つ力が身につくように、と"地域住民による学生の人材育成"といった位置づけにもしています」(大島さん)

もともと街の課題を自らの手で解決に向かって取り組む市民の創出を目指して設立された中間支援団体として、こうした地域の方を巻き込んだ場のしかけを意識して活動されています。

■今後について

きょうだいが少なかったり親戚付き合いも減っている昨今。そんな時代だからこそ、「わたしを知っている身近なお兄さんやお姉さん、おっちゃんやおばちゃんが地域にいるんだ」という実感を子どもたちが持ってほしい。そのことが子ども自身の自己肯定感や意欲につながるのではないか-そのような「子どもの居場所」としての機能をどうやって実現できるか、スタッフも地域住民もいっしょに議論しながら運営しています。

「家でもなく学校でもない、自分自身がいきいきとできる「第3の場(サードプレイス)」を地域の中にたくさん作りたいと考えています。例えば、子どもにとっては<まなびあ>のようなスペースが学区に一つあってもよいと思います。さまざまな思いをもった小規模な"居場所"が街中にたくさんたくさんあるイメージです。私たちの取り組みを一般化して、他の団体とも連携しながら、街中の他の地域にも広げていきたいと考えています」(大島さん)

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特定非営利活動法人 場とつながりの研究センター(http://batotsunagari.net/
関西学院大学の教員と学生、三田の地域住民とが協働して2005年に設立。ゆるやかなつながりづくりを通して、まちの課題を自らの手で解決に向かって取り組む「意欲する市民」をまちに生み出すことを目的に、さまざまな情報・ノウハウの提供やネットワークづくり、組織運営のアドバイスなどの支援を行っています。近年は、多様なテーマでの「居場所」の設立・運営とネットワークづくり支援や、子どもの貧困問題に対する地域の支援体制づくりにも力を入れて取り組んでいます。

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