助成団体紹介
【助成先訪問】子どもが誰でも社会参画できることを目指して ~特定非営利活動法人寺子屋方丈舎
特定非営利活動法人寺子屋方丈舎
理事長 江川和弥様
子どもが誰でも社会参画できることを目指して、「フリースクール」「通信制高校」「自遊学キャンプ」「子ども食堂」「学童保育」などの事業を行っている特定非営利活動法人寺子屋方丈舎を訪問しました。 ベネッセこども基金には、2019年からの3年間で「どの子も社会参画ができる組織基盤整備事業」の実施で申請いただきましたが、特に人材育成に対して助成をしています。
理事長の江川和弥さんにお話を伺いました。
【寺子屋方丈舎の主な事業】
フリースクール
何らかの原因で学校に行くことは難しいけれど学ぶ意思がある小~高校生までが対象です。
午前中は、学校の教科書などを使って、各自の進路にあわせて学習します。大学試験対策やプログラミングなども行います。スタッフ2名が質問に対応する体制をとっていますが、子ども同士での教え合いもあるそうです。
お昼を挟んで、午後は体育館で運動したり、楽器の演奏をしたりと各自がやりたいことをする時間です。 現在15名ほどが登録し、平均7,8名の方が来るそうです。学校との報告や連携もスムーズに行えていました。
五感を刺激した学習も大切にしていて、特徴的だったのは、「みんなで一緒にする時間」というものをつくっているところです。週1回、みんなで、食事をつくります。何を作るかもみんなで決めるそうです。
来る時間もまちまちだったりするので、顔を合わせてのミーティングは難しいです。そのため、写真のような共有できるシステム(Keynote)を使って、各自の考えを発表し、議論します。 画面を見せていただきましたが、「絶対イヤなのが餃子で、1位が揚げ餃子」。ちょっと笑ってしまいました。
掃除も皆で一緒に行います。学校のように、今日はこの場所といった役割分担で行うのではなく、みんなで早くきれいにするためにどう動くのか常に考えながら行うということをモットーにしていて、学校での集団行動に馴染めない子どもも、目的意識をもつことで、集団での行動に意味が感じられ、動けるといったこともあるそうです。
子ども食堂
週5日、市内の3か所で開催しています。現在は子どもだけが利用する形をとっています。会津若松では、5,000人規模の大きな工場が閉鎖されたため、生活保護受給率は県内1位だそうです。
寄附が集まらなければ、継続は難しいと思っていたのですが、予想以上の寄附のおかげで、現在は順調に運営できているそうです。今後の課題は、この活動の理解者を増やしていくことだそうです。
子どもに困難な状況が見えた場合は、関係者につなぐことを行っているそうですが、保護者が制度を利用していなかったり、使用したくないといった意思があったりするケースが多いので、慎重に進めていっているそうです。
スタッフ育成
スタッフの育成は、これまの江川さんの経験に基づき、「子ども自身のあり方を認めて、子どもの生き方に寄り添い肯定できる人材を養成する」ということを念頭に工夫をされています。
スタッフの中には、なにかを教えないといけない、ルールや規定通りにやればよくなる、想いだけある、などをはじめは考えている。しかし、それだけではうまくゆきません。スタッフ自身がセルフマネジメントできるようになってほしいと、今は主にスタッフミーティングのやり方を工夫されています。
毎週金曜日21時からのスタッフミーティングは、顔を合わせての開催ではありません。ZOOMを使うのでどの場所で参加してもよいのです。子どもの情報共有などは、すべてソフトKeynoteに残して共有し、対応の確認は、次の支援の方法を検討します。
江川さんのこだわりの取り組みとして行っていることをご紹介します。 例えば、スタッフ全員で「東日本大震災の大川小学校に起こった事故」の記事を読み、それについて一人ひとりが意見を書き、Keynoteで共有します。各スタッフの意見について別のスタッフがコメントを残すといった取り組みをしています。
こうすることで、一人ひとりの内面を見る力を高めることができればと考えた手法だということです。ティーチングではなくコーチングであり、このコーチングを子どもたちにできるようにならないと、子どもの自己肯定感を高め、勉強に向かう力を育て、社会にでる希望を持たせることは難しいと江川さんはおっしゃいます。
大きな声でたくさんお話いただいた江川さんに、圧倒されましたが、大変勉強になりました。
この取り組みを重ねた結果も共有いただき、他団体のモデルにもなることを期待しています。これから3年間よろしくお願いいいたします。
●特定非営利活動法人 寺子屋方丈舎:https://www.terakoyahoujyousha.com/