助成団体紹介
2019活動報告|児童養護相談施設の子を支える学びの様子
特定非営利活動法人HUG for ALL
報告者:代表理事 村上綾野さん
2019年度の活動から、児童養護施設での活動の様子についてご報告いただきました。
*現在は新型コロナへの対応した支援の方法に変更しています。
HUG for ALLとは 学習支援 進路支援 ワークショップ
HUG for ALLとは
HUG for ALL(以下HFA)は、「すべての子どもが安心できる居場所を持ち、生きる力を育むことができる社会をつくる」ことを目的に、児童養護施設でくらす子どもたちの学習・体験・進路支援を行っているNPO法人です。
HFAは「信頼できる大人」の存在により、子どもたちの「安心できる居場所」づくりと「生きる力」を身につけるための支援を行います。HFAのボランティアである「HUGメンバー」は、「信頼できる大人」として子どもたちと継続的な関係を構築し、「安心できる居場所」のひとつとなることを目指しています。また、その信頼関係を基盤に「生きる力」を身につけるための支援を行います。
HFAでは児童1人をボランティア(HUGメンバー)2~3名で担当する「担当制」による支援を行っています。継続して関わる「信頼できる大人」との関係性を軸に、学習・体験・進路支援等を通して、安心できる居場所と生きる力を育んでいます。
現在は月2回の訪問による学習・体験・進路支援と、デジタル教材の取り組みに対しての日々の見守りをベースに活動を行っています。
学習支援
不安定な生活や一時保護などで、勉強どころではない時期があることも多い子どもたち。また、幼少期の言語体験の乏しさから、読解力や表現力に課題のある子どもも多く、積み上がり教科の算数と読解力・表現力を補うため、月に2回の訪問による学習支援を行っています。
主な取り組みの1つに「作文プログラム」があります。読書も苦手な子どもが多い中、大人と子どもが同じテーマで作文を書き、相互に読み合う時間を通して、文章に親しみながら、語彙力や言葉の力、表現力を伸ばしていく活動ですが、国語の力だけでなく、子どもたちの個性も見出すことができました。
キツネの子どもをテーマに毎回短編を書いてくれる子もいれば、気持ちを表現することが苦手で「やったこと」の羅列になる子もいます。また、自分の書いたものを自慢げに見せてくれる子もいれば、大人の書いたものを読みたがる子どももいて、それぞれの個性や得意・苦手をより一層深く知ることができました。
進路支援
高校や大学等に進学する際の進路選択。子どもにとって重要な決断であるにもかかわらず、忙しい日々の中ではじっくり対話を重ねた学校選択ができないという課題があります。
2019年度は中学2年生に向けて「高校選択ワークショップ」と併せて、その前の土台作りとしての「お仕事ワークショップ」を実施しました。世の中にどんな職業があるか考えてみるところから、HUGメンバーの仕事についてのインタビューや、職業図鑑からの「面白そうな仕事探し」、さまざまな仕事の条件の比較検討などを盛り込み、仕事について考えることを通して、将来働くことや進路について、じっくり話し合う時間を設けることができました。
ワークショップ
子どもが自分の『好き』や『得意』を見つけるためのワークショップを定期的に行っています。
2019年度は「遠足プログラム」として高尾山への遠足の計画・実施を行うPBL型プログラムや、移動水族館を呼んでの水の生き物の見学プログラムなどを実施しました。遠足は台風で実現が叶いませんでしたが、子どもたち同士で当日のコースを含めて相談して決めるプロセスによって、子どもたちそれぞれの調整力やリーダーシップなどを発見することができました。
また、移動水族館では、葛西臨海水族館から水の生き物の水槽トラックにきていただき、子どもがそれぞれ興味関心を惹かれるものに夢中になる様子が見られました。
そのほかにも、言葉の力を育むカルタ大会や、アート系のプログラムなどを実施し、子どもたちの様々な個性を見つけることができました。
村上綾野 さん
Teach for Japan松田氏の講演会で、日本の子どもの7人に1人が貧困状態であると知り、子どもの貧困に関わるさまざまなボランティアに関わり始める。児童養護施設出身者のための奨学金プログラム「カナエール」に2013年より参画した縁で、現在の支援先施設から相談を受けて、子どもたちの学習支援を行うプロジェクトを立上げ、NPO法人HUG for ALLを設立。現在はフルタイムで働きながら、平日夜や土日にNPOの活動を行う「二足の草鞋生活」を満喫中。
採択団体一覧|2019年度<経済的困難を抱える子どもの学び支援活動助成>