助成団体紹介
活動報告|球磨郡多良木町・旧多良木高校避難所における、小中高校生を対象としたプログラミング体験
公益財団法人日本YMCA同盟
「令和2年7月豪雨」で被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成 活動報告
- 団体名
- 公益財団法人日本YMCA同盟
- 事業名
- 球磨郡多良木町・旧多良木高校避難所における、小中高校生を対象としたプログラミング体験
支援地域/活動期間 災害時の状況や支援対象者の様子 支援の内容・方法・成果 今後の課題および展望
支援地域/活動期間
球磨郡多良木町・旧多良木高校避難所/ 2020年10月4日、11日
災害時の状況や支援対象者の様子
旧多良木高校避難所は、球磨村から救助ヘリで2つの町をまたいで着の身着のまま運ばれ、避難されてきた球磨村の住民の方々が避難生活を送る村外避難所の一つ。この避難所は、熊本地震での避難所運営の評価から熊本県ならびに球磨村からの要請を受け、熊本YMCAが運営支援を行っている。
避難者は最盛期の210名から減少したものの、2020年11月現在でも約140名の方々が避難生活を余儀なくされている。現地には約30名の小中高生が生活をしており、日中は学校に通いながら、自宅の片付けや泥かきにも通う日々を送っている。10月下旬から11月には、仮設住宅等へ移る予定となっていた。
支援の内容・方法・成果
新型コロナウイルスの感染拡大により、これからの子どもたちは学業や就職といったさまざまな場面で、あたりまえのようにITスキルを問われる時代を迎える。今後、経済格差がさらにデジタル格差をもたらし、教育や体験の機会が奪われることで目に見えない貧困を生み、子どもたちの将来の可能性にも大きく影響していくと考えられる。
そこで、誰もが公平に夢をかなえるチャンスのある地域社会を目指し、プログラミング体験会を行う。避難所生活者自身が当事者として被災地、避難所生活の様子や支援活動について伝えるWEBサイトの制作に取り組み、小中高生自身の視点や言葉で発信する。コロナ禍にあって先の見えない避難生活も3か月が経過する。避難所での生活を大変な、つらい記憶だけに終わらせず、仲間たちとともに「ものづくり」を体験し、そこから得られる達成感やテクノロジーをもちいた将来への希望を見つける機会とする。
当初より予定していた2日間(10月4日、11日)でクラスを実施した。さらに両日ともに予定が合わず参加ができない、内容を深めたい子どもたちを対象に、平日の夜にもプログラミングを体験できる機会を設定した。募集はチラシ配布のほか個別に声掛けをしたり、実際に避難所にいるペット(犬)のWebサイトをスタッフが制作し、それを紹介するなど興味を引き出すように行った。
姉弟が互いを紹介し合うサイトを企画するなど、家族の強い絆を感じる一方、好きなアニメの書籍やグッズが流されてしまった参加者(小2)は、同じ体験をしている姉への気遣いから、「サイトを作っても誰にも見せたくない」と発言するなど被災地独特の状況が見受けられた。
参加者(小1)にとっては、大人が遊び相手になってくれることがうれしい様子であったが、訪れた保護者は、ほぼスタッフが作成したサイトを見ても感嘆するなどの反応があった。
情報処理の授業が苦手で、特にタイピングが難しいという参加者(高2)は、教材を利用してタイピングの練習をしたところ反応が良くなり、午後からはレッスンに打ち込んだ。
避難所では、子どもへのケアまで手が回らない現状があった。退所が近づいた時期ではあったがニーズの高まりが認知され、キッズルームがスタートした直後であった。
保護者には「子どもにいろいろな体験をさせてあげたい」という思いはあるが、生活再建や自身の親のケアや、仮設住宅への移動準備もあり、希望はあっても参加できない子どももいた。コロナ禍にもあって先の見えない避難生活の終盤に、避難所での生活を大変な、つらい記憶だけに終わらせず、仲間たちとともに「ものづくり」を体験し、そこから得られる達成感やテクノロジーによって広がる未来を感じる機会となった。
2週間を通して7名が参加し、うち3名が自作のウェブサイトを完成させることができた。また、子どもたちが作ったサイトはご家族だけが確認できる安全な形でそれぞれの手元に残すことができた。当初の目標としていた、避難所の現状を発信するためのサイトづくりに対しては、子どもたちの心の状態へ配慮し、この期間、避難所で、避難所だからこそ「楽しい」経験と記録を残すための取り組みにシフトした。しかし、子どもたちの集まる居場所作りに貢献することができたと考える。
今後の課題および展望
引き続き心の支援を行うべく、3月に再度イベントを開催予定である。
当避難所は、2020年10月31日をもって閉鎖し、住民は仮設住宅へ移動していることから、同じ形態での事業は行わない。
新型コロナウイルス感染拡大によってもたらされた分断は、テクノロジーによって新たな可能性をも生み出した。子どもたちがこれから生きる社会は、IoTで全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服する社会である。経済格差により引き起こされる体験の格差を生みださぬよう、今後も熊本YMCAとともに、さまざまな環境にある子どもたちへ、等しく教育の機会を提供し、自分自身の将来を描くことのできる、そして自己肯定感を高められるようなプログラムを検討していく。
YMCAは世界120の国と地域で、およそ6500万人の会員を有するNGO(非営利組織)です。日本国内では「みつかる。つながる。よくなっていく。」をスローガンに、地域や人々のニーズに合わせたプログラムを提供しています。日本YMCA同盟は、全国の都市YMCAおよび学生YMCAの加盟により組織され、国内および海外のYMCAとの連絡調整を主として活動しています。