公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

活動最終報告|はままつ子どもの学び支援&セーフティネット強化事業2019

認定特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター

井ノ上 美津恵さん

経済的困難を抱える子どもの学び支援

2か年の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。
事業の詳細は以下からご覧ください。


助成事業の概要|浜松NPOネットワークセンター

事業の目的/目指す状態 事業内容と活動経過  1年目 事業内容と活動経過  2年目 2年間の事業の成果と評価 課題および今後の展望

【学習支援の検討委員会】当事者団体や教育専門家等による委員会を設置し、支援事例に関わる課題共有と解決に近づけるための各専門分野からアドバイス、情報交換、事業評価等を行った。

事業の目的/目指す状態

浜松市内に学習支援教室が増えたが、交通の便や不登校で教室に通えない子もいるため、アウトリーチ型で対応する。 また、障害や不登校、言語文化など重複困難を抱える子どもに適切に対応できる人材が少なく、支援のニーズに応えきれていない。子どもに寄り添い、支える人材の育成・研修を行い、その人材のネットワーク化をはかることで、地域のセーフティネットを強化する。

・浜松地域の多様な子どもに対応できる学習支援が質・量ともに向上している。
・学習支援の視点だけでなく、子どもや家庭の孤立化を防ぐために互いの活動力を融通しあえる子ども支援ネットワークと、活動のための資金支援が可能な企業との連携ができている。

事業内容と活動経過 1年目

《活動内容》
1.アウトリーチ型学習支援 
・生徒:14名(11家族)・講師:7名 
・回数、時間:358回(562.75h) 
・対象:幼児1、小学生2、中学生8、高校生3
・状況:一人親9、養父母1、祖父母1、外国ルーツ4、不登校8、障害6

2.学習支援の検討委員会
・6回開催
・委員5名(有識者2、支援団体1、当事者団体1、教育現場支援者1)

3.支援者研修 
・全3回 延56名参加(①13,②13,③30)
・1,2回目:小さなつまずきが多い子どものための学習支援法 MIM勉強会
・3回目:アナログゲームと療育

4.シンポジウム
コロナ禍で中止

《結果》
・学習支援の中3生3名は全員第一志望の学校に進学した。
・学習支援に至らない不登校気味の生徒と長く支援を継続させてきた講師とは信頼関係ができ、生徒の狭い人間関係の中から一歩でた第三者の大人の姿を見せることができた。
・検討委員会では、学習支援が困難な事例に対し、具体的な支援方法についてのアドバイスをいただき、学習支援現場ではアナログゲームを多用した支援を実施。別事業で行ったボードゲームを使った交流会に母子で参加することもでき、子ども自身からは不登校の生活からの変化を希望するつぶやきが出た。
・MIMを活用した授業を行った子どもは、毎回の評価のための問題に取り組むことに意欲をもち、毎回点数があがることで自信を持った様子が見えた。
・スクールソーシャルワーカーとの情報交換も密に行うことができ、子どもの現在の環境にあった支援を相談しながら進めることができた。
・シンポジウムは今回コロナウィルス感染問題のため中止にしたが、毎年開催してきた成果もあって、子ども支援に関わる地域のキーパーソンたちが出会う機会であると参加希望者たちが認識されている様子が見えた。

【小さなつまずきが多い子どものための学習支援法 MIM勉強会】 読み書きに困難をもつ子どものための多層指導モデルMIMの活用について学んだ。

事業内容と活動経過  2年目

《活動内容》
1.関係者連携支援会議
・1回開催(+特定家庭のケース会議1回、就労支援)

2.アウトリーチ型学習支援
・生徒:9名(6家族)・講師:4名
・回数、時間:324回(461.25h)
・対象:幼児1、中学生5、高校生3
・状況:一人親4、祖父母1、外国ルーツ3、不登校6、障害6

3.子ども支援者研修会
・2回開催(ZOOM)
・延23人参加(11人継続参加)、支援ボランティア希望者1人

4.実務者ネットワーク構築のための調査活動
・10団体訪問調査 活動内容をWEBに記事として掲載
・きらきらBOX7団体、ニュースレター3団体、ブログ3団体、SSW等支援者に情報提供。

《結果》
・教科学習だけでなく、講師がその子の状態を見て工作や外出など臨機応変に対応できたのも、複数年にわたって寄り添いができている結果であると思う。
・家庭の保護力の弱さから複数の困難を抱えた子どもについては最悪の状況にならないよう家庭丸ごとの見守りが続いているケースがあり、当法人のフードバンク機能や他の福祉機関や教育機関との連携力を生かすことができている。
・MIMについては、個々の子どもの感覚が多様であるため、授業のUD化が大切なことを伝えることができた。
・草の根で活動している団体と繋がることができ、中間支援としてネットワークの強化が可能になった。

【実務者ネットワーク構築のための調査活動・ふれあい子ども食堂もも】10団体を訪問調査したうちの一つ。地域の福祉施設内にある食堂を使い、子どもと高齢者の交流も可能。

2年間の事業の成果と評価

経済的貧困も抱えながら不登校状態の子どもなど訪問型の学習ニーズがあるケースについてSSWからの支援依頼が定着してきた。
また、アナログゲームやMIMの活用をすすめる研修会を通して、多様なこどもたちへの支援法の選択肢をふやすことができ、実際に訪問型学習支援の中で取り入れたケースでは、教科学習だけでは見えないこどもの別の側面を発見し、講師の支援の一助となっている。子ども支援の専門家や団体等との連携も強化され、子どもの支援ニーズに合わせた動きが可能である。
草の根で活動している子ども支援団体を掘り起こし、情報発信のサポートができたことで、社会資源の厚さを社会に伝えることができた。しかしながら、シンポジウム開催が可能とならず、学習支援に留まらない資金支援など幅広い支援者層の開拓のチャンスを逃してしまった。

課題および今後の展望

・経済的貧困状態にある学習支援対象者に不登校の子どもが多く見られるが、訪問型で実施しているため、特にスクールソーシャルワーカーから支援要請が増えている。またそうした子どもたちは、発達障害もしくは愛着障害による関係性の貧困も生じる可能性が大きいと感じている。前半活動期では、講師の訪問時、中に入れず、授業が休みになるケースもあったが、継続することで講師との信頼関係が築け、今では個々の状況にあった支援の形ができてきている。
・こうしたことから何をおいても継続が肝要と感じるが、講師と生徒の相性も大きく、寄り添い型の支援ニーズも高く、豊富な講師人材とつながることが必要である。
・今年度は講師と事務局の情報交換や意思疎通を深めることに注力できたが、事業担当者の力量に負うことが多かった。そうしたコーディネイター人材の確保も重要である。研修会や支援関係者との連携会議等の機会を利用して、人材確保と支援の多層化についても可能にしていく。
・関係性の貧困について少しでも解決できることを願って、信頼できる大人と出会い、自尊感情を回復することができるよう、安心できる多様な居場所作りに取り組む必要性を感じている。

認定NPO法人 浜松NPOネットワークセンター

代表理事

井ノ上 美津恵さん

(認特)浜松NPOネットワークセンター代表理事。1998年NPOを設立。同じ志をもった自由で柔軟な多くの個人が出会い、つながることで「なにかできるんじゃないか」と平和や環境問題に取り組んでいた中、NPOという新しい動きに出会いました。個人的に寺子屋のような私塾を長く続けながら、視覚障害者支援や里親活動もおこなっていたため、NPOでは特に障害のある人のためのICTや就労、子どもの環境などに関わる事業に取り組んできました。あっというまの20年。次世代に期待しています。

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