公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2022年事業紹介 病気の子どもたちが、いつでも・どこからでも体験的な学びにアクセスできるプラットフォームづくり事業

公益社団法人 日本環境教育フォーラム ジャパンGEMSセンター

病気・障がいを抱える子どもの学び支援

病気の子どもたちが、いつでも・どこからでも体験的な学びにアクセスできるプラットフォームづくり事業


重点実行項目
プログラムを院内でも実施可能にアレンジし、撮影した動画コンテンツを団体HPに掲載する

助成金額
1,617,000円

選考にあたっての評価点
・実験などの体験的学習が弱点であった病児教育において、病院ニーズを把握した上で、実績のある貴団体が取り組む意義を評価しました。
・動画に加え、周囲の大人も関わりながら、子どもの主体的な学びが生まれることに期待します。

1)団体の紹介

カリフォルニア大学で開発された科学・数学の体験学習プログラムGEMS(ジェムズ)*の日本における普及とリソースセンターとして2001年に設立。以来、教育機関、行政、企業や他NPOやNGOと連携しながら、体験をベースにした科学・数学学習によって基礎学力を身につけるとともに、自ら考え、学ぶ姿勢を育てるワークショップを展開しています。
*Great Explorations in Math and Science(科学と数学の偉大な冒険) =カリフォルニア大学バークレー校ローレンスホール科学教育研究所で1980年代より研究開発されている幼児から高校生を対象とした科学・数学領域の参加体験型プログラム


2)今回助成を受ける事業の紹介(課題、実行項目)

病気の治療のために⾧期入院中、あるいは入退院をくり返す子どもたちにとって、継続した学びの機会を得ることは困難です。特に実験を始めとした体験的な学習は、病院に持ち込める備品が限られるなど実施が難しいとされ、コロナ禍においては外部講師を招くこともできず停滞しています。そのような状況に対して、オンラインで体験型のワークショップを提供していますが、当日の体調や急な検査で参加できない子どもが毎回いらっしゃいます。
そこで、団体HP上に無料の実験動画を掲載するページを作成して、いつでも・どこからでも観られるようにし、すべての子どもたちが安心して楽しめる学びのチャンスを提供していきます。


3)事業を実行していく上でのポイント・抱負

GEMSでは、子どもたちが自分の想像力と創造力を使って、自分たちで実験を企画し話し合い、結論を導き出していくことを大切にしており、その姿は好奇心と探究心をたっぷり持った科学者そのもの。身近なものを使ってできる実験のため、先生や保護者の方が材料を準備しやすく、子どもたちの状態に合わせてアレンジもしやすいのが特徴です。
算数やアート、環境、自然科学や物理、化学など幅広いジャンルのプログラムがあるので、子どもたちが外の世界に興味をもち、未来への楽しみが増えるようなコンテンツを配信していきます。

事務所を訪問しました

東京都荒川区にある日本環境教育フォーラム ジャパンGEMSセンターさんの事務所をベネッセこども基金事務局が訪問しました。

左から事務局柴原さん、鴨川さん。

「GEMSという考え方がまだ理解できていないのですが」と切り出すと、体験するのが一番とのことで、即興で算数のワークショップ「池に飛び込めゲーム」をやってくださいました。

簡単なワークシートでできる、白熱の「池に飛び込めゲーム」

2つのサイコロの出た目の和のレーンにいるかえるを動かしていき、一番早く池に飛び込めるかえるは、1~12のどのレーンのかえるかを賭けるゲーム。
どのかえるにかけるかをはじめは適当に決めましたが、「もしやこのレーンのカエルが勝つ確率が高かったのではないか?」とゲームが進むと気づき始めます。(ああ失敗した!と後悔したり。)その過程で論理的な考え方、確率という考え方を体感していくことができました。
シンプルで特別な道具も必要ありませんが、とても練られたコンテンツと、適切なポイントでの学びにつながる声掛けで、学びが深まることがよく理解できました。

GEMSの手法は未就学児から高校生までを主に対象とし、理数を中心に多様なテーマで体験しながら学べるコンテンツをこれまでパッケージ化していますが、そのどれもが特別な道具を必要とせず、家に普段あるようなもので実施できるもの。また、学年を規定せず、1つのプログラムで幅広い年齢がそれぞれの深さで学べることも特徴だそうです。

「浮力」「溶解」「規則性」「文化遺産調査」...など正面から学ぶには難しいテーマも知的好奇心を刺激して楽しく考えることができる。様々なシリーズの中から、院内での学びに適した形にアレンジしたコンテンツを作成予定。

コロナ禍でワークショップのオンライン実施を模索したこと、また院内学級の支援団体や母子支援施設などとのつながりの中から、体験的学びにアクセスしにくいところにいる子どもたちにも届けたい、という思いが強まり、今回の企画に至ったそうです。

病気があっても、特別な準備を必要としなくても、良質な学び体験ができるGEMSさんの今回のトライは、病児の学び支援をされている支援者・指導者だけでなく、経済的困難を抱える子ども含め、多くの方に役立つコンテンツになるのではないかと期待しています。

公益社団法人 日本環境教育フォーラム ジャパンGEMSセンター

主任研究員

鴨川 光 さん

茨城県生まれ。早稲田大学大学院教育学研究科で子どもの思考力の発達やファシリテーション について研究し、2013年より現職。幼児からシニアまで様々な人たちと年間50本以上の ワークショップをしながら、一緒に成長中。

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