公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2022活動報告|こどもの声から生まれた、ひとり親世帯の中学生向け学習応援の場「寺子屋みあちゃん家」

特定非営利活動法人mia forza

経済的困難を抱える子どもの学び支援

1年目の助成期間を終え、こどもの居場所・みあちゃん家についての取り組みをご報告いただきました。
事業の詳細などは以下からご覧ください。

2022年事業紹介 こどもの居場所・みあちゃん家:宮城県内のひとり親世帯のこどもたちを対象とした夕食付無料学習支援事業


mia forzaのこどもの居場所事業 「寺子屋みあちゃん家」誕生 「寺子屋みあちゃん家」の1日 2022年度の取り組みを通じて

mia forzaのこどもの居場所事業

私たち特定非営利活動法人mia forzaのこどもの居場所事業では、こどもたちひとりひとりに担当の大学生がつきます。大学生は、こどもたちの「アレ、やりたい!」を一緒に実現していくパートナーです。

大学生は、ひとりとして「教育大学」や「教育学部」の学生はいません。さまざまな大学・学部の学生が集まっています。「建築家」「住職」「福祉の専門家」「看護師」「公務員」「研究者」等、大学生スタッフが目指す職業はさまざまです。

そんな多様な大学生との交流の中で、こどもたちの将来の夢が広がっていきます。「私は、私みたいな面倒で手のかかるこどもの気持ちがわかる臨床心理士になりたいんです!」そう話してくれた中学生は、一年前までは将来の夢も志望する高校も見えていなかったと言います。
寺子屋みあちゃん家で、大学生とマンツーマンで勉強に励み、教育や心理を専門とするアドバイザーやゲストとの出会いの中で、将来の夢を描くことができたとのこと。
夢を叶えるために目指す高校を絞り、勇気を奮い起こして親に相談しようとなった時、担当の大学生と繰り返し親に気持ちや考えを伝える練習を行いました。1週間後、親に言えた、相談できたと、大喜びで寺子屋にやってきました。

mia forzaでは、「少人数」と「マンツーマン」にこだわったこどもの居場所づくりを進めています。
こどもたちひとりひとりに徹底的に寄り添うことを重視した結果、「少人数」と「マンツーマン」にこだわるスタイルを選びました。
こどもたちの小さな変化やSOSを見逃さず、どんなに厳しい状況でもピンチをピンチのままにせず、それをチャンスと捉え乗り越える伴走を行うには、この二つのこだわりは欠かせないと考えています。この二つをもってこどもたちと関わっていくことで、こどもたちの力の育みを応援していきます。

こどもたちが力を発揮したり、夢や希望を描き実現するためには、こどもたちの暮らす家庭の安定が不可欠です。そこで、私たちは、保護者や家庭へのサポートとして、ひとり親世帯への食糧提供事業やひとり親向けの相談事業(個別・グループ相談)も行っています。

こどもたちの生きる力を育み、夢や希望を描き実現していくために、私たちは、こどもたちと親御さんをあらゆる方向から応援しています。

特定非営利活動法人mia forza 2022年度こどもの居場所事業スタッフ集合写真。

「寺子屋みあちゃん家」誕生

「高校受験が心配。勉強を教えて欲しい」「友達のように塾に通いたいけど、お金がかかるから難しいって。くやしいな」「勉強を集中してできる場所が欲しい!」そんな声が、中学生から届き始めました。
「それならば!」と、平日夜に中学生限定の学習サポートの場を始めようと、準備を開始。 ありがたいことに、公益財団法人ベネッセこども基金さんとオーガニックレストラン・おひさまやさんのお力添えで、「寺子屋・みあちゃん家」を開設することができました。

毎週金曜日夜、仙台駅前のオーガニックレストラン・おひさまやさんにて、ひとり親世帯の中学生向けの「寺子屋・みあちゃん家」を継続開催しています(祝日が重なった日はお休みさせていただきます)。
寺子屋・みあちゃん家では、お子さん一人ひとりの学習メニューに沿って勉強を進めていきます。
学習進度やこれまでのテストや模試を踏まえた学習メニューを作成後、トレーニングを受けた大学生と一対一で勉強に取り組みます。

参加されたご家庭からお声が寄せられました。 一部ですが、掲載させていただきます。

「行く時は、渋々と曇った表情で出発しましたが、迎えに行った時はスッキリ明るい感じで帰ってきてくれたので安心しました。本人からも、『家だと取り掛かるのが後回しになっちゃうから、やらざるを得ない場所だと集中する』と言ってました。
今まで塾に行った事がなかったので、初めての雰囲気で気持ちも切り替わり、良かったのではないでしょうか。それと初めて一人で仙台駅まで行かせたので、自立心の面でも(親子双方)良い刺激になっています」

「帰りの車中で、こどもから、国語の文法を教えていただいたと聞きました。分からなかったところも解決したようで、テストに向けて自信もついたようです。今日も、昨日習った部分を復習しようと自分から勉強に取り組んで、やる気が出ていました。
教えていただいている先生が片道2時間もかけて来ていると聞いて、こどもがとても驚いておりました。遠方から指導のために来ていただいているご厚意に、感謝してもしきれません。また、うちの子は食べることが大好きなので、今回の海苔巻きやお菓子もとてもおいしかったと、大喜びでした。
いつもおいしいお食事をいただき、ありがとうございます。『来週も楽しみ!』と授業を心待ちにしていました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」

寺子屋みあちゃん家。こども&スタッフ記念撮影。ジャムはアドバイザーの方が育てたルバーブを使用したジャムが発売されたとのことで、こどもたちが喜んで記念撮影に入れています。
さまざまな職業に就いている方をお迎えしてお話を伺う「職業人講話・みあちゃん家大人図鑑」。この日は、東北少年院青葉女子学園首席の名護先生をお迎えして、少年院のことや国家公務員の仕事について伺いました。名護先生は、当法人の食糧提供事業や調査事業にもボランティアとして関わってくださっています。毎月こどもたちの自宅に届く食糧品の仕分けや梱包をされている方と伺い、こどもたちは親近感でいっぱい!かぶりつきで食い入るようにお話を伺いました。
寺子屋みあちゃん家の夜食の中で、一番人気の「玄米太巻き」。これまた人気の「糠漬け」と「おからボール」が添えられたある日の夜食。夜食はお菓子を含め、全てオーガニックの食材でつくられています。こどもたちの心身を大切にしたい、そんな気持ちがこもったお弁当です。

「寺子屋みあちゃん家」の1日

寺子屋みあちゃん家を利用しているこどもたちは、仙台市、名取市、塩竈市に住むひとり親世帯の中学生です。
彼らを応援するスタッフは、仙台市・多賀城市・大河原町、そして、なんと山形県米沢市の在住者。
「担当しているこどもの笑顔が見たくて」と、片道2時間の通勤も苦にならないと通ってきています。

19:00
会場のおひさまやさんに、スタッフが集まってきます。
事前のスタッフミーティングが始まります。
こどもたちの状況の共有、前回を踏まえ本日挑戦すること等を話し合い、こどもたちを迎える準備を行います。

19:25
こどもたちがやってきます。
こどもたちを送迎してきたお母さんたちから、この1週間の様子等を伺います。
こどもたちは、専用のテーブルで、担当の大学生スタッフとマンツーマンで勉強を開始します。 途中休憩を挟みながら、21:15まで勉強が続きます。

21:15
「残り15分!」の声がけがあり、各テーブル毎に、今日の学習の振り返りに入ります。振り返りが終わると、各テーブル毎に宿題(主に「学習づけ」のための1週間の「お約束」)を決めます。

21:25
全体で振り返りをして、終わりの挨拶をします。

21:30
お迎えに来た保護者の方へ、担当大学生スタッフより今日の様子をお伝えします。 こどもたちと保護者の方の後ろ姿が見えなくなるまで、スタッフは道路でお見送りをします。

21:35
振り返りミーティングでは、今日の振り返りと今後の工夫、共有事項を話し合います。また、事業アドバイザーへの質問等が出た際は、その整理を行います。

22:00
解散。みんなで戸締りをして帰ります。

毎週金曜夜になると、仙台駅前にある会場にこどもたちがやってきます。あたたかな雰囲気の中で、こどもたちは勉強に励みます。「学校外の友達ができて嬉しい!」「勉強が楽しくなった!」「お兄さんやお姉さんができたみたい!」。寺子屋みあちゃん家には、こどもたちの「嬉しい!」「楽しい!」がいっぱいです。
勉強の合間の数分間。こどもたちはスタッフと将棋やオセロ、トランプを楽しみます。この時間を経ることで、さらに集中力が高まることがわかってきました。現在、寺子屋みあちゃん家では、勉強前と勉強途中の2回に分けて、将棋やオセロを行うようにしています。
寺子屋みあちゃん家では、毎回、デザート付の軽食(夜食)を無料で提供しています。この日はひな祭りとあって、桜餅がつきました。クリスマスには、ケーキをいただきました。勉強の合間に、大学生スタッフと食べるのがこどもたちの楽しみのひとつとなっています。


ある時、自分の行動を変えていきたい、と話してくれた中学生がいました。
その中学生は、担当の大学生スタッフとアドバイザーと相談をして、自分の行動を記録していくことに決めました。
記録を続けることで、自身を客観的に見る力や自身の思考や行動のパターンを掴んでいくことに取り組もうとなったのです。

寺子屋に助成をしてくださっているベネッセこども基金様から届いたノートを「行動記録ノート」として、記録を書いていくことにしました。
書いた記録は、毎週寺子屋で、担当の大学生と振り返り、取り組めたことの確認や改善・工夫を行っていくことにしました。
寺子屋みあちゃん家では、勉強だけではなく、こどもたちの「変わりたい!目標を達したい!」という気持ちの応援もしています。

2022年度の取り組みを通じて

この一年間で、こどもたちは大きく成長しました。その成長を、こどもたちが自ら語ってくれました。

「勉強がわかるようになったり、成績が上がったり、英検に合格することができたり、すごい一年でした。ひとりでは自信がなかったことも、できるようになりました」
「学校の友達に、自分から話しかけたりできるようになりました。授業でも手を上げて発表できるようになりました」
「すぐに泣いてしまうことがなくなりました」

こどもたちの成長は、親御さんにもより良い影響がありました。
「ひとりじゃないんだと思うことが増え、こどもに対して余裕が生まれました」
「これまでは、ひとり親なので後ろ指を指されないよう、周囲の方以上に何もかも頑張らなくては、と気負っていました。辛くて、寂しくて、苦しくて、本当に悲しかったです。みあちゃん家でこどもたちがどんどん明るく変化している姿を見ていたら、肩の力を抜いて私らしくやっていこうと思えるようになれました」
「こどもたちとの会話が増えて、家庭が明るく楽しくなりました。私も頑張ろうという気持ちが出てきて、資格試験に挑戦し合格できました」
「こどもを応援してくれる人がこんなにいてくれるんだ、と心強いです。ひとりではないと思えることが多くなり、大変な毎日も頑張っていこうと思えるようになりました」。

どんどん変化をしていくこどもたちに力をもらったのは、親御さんたちだけではなく、私たちスタッフも同じです。
こどもたちがさらに力を育んで行けるよう、より良い居場所を目指して、意見を出し合い、お互いに学び合いながら、挑戦と工夫を繰り返しました。

一年目としては、全ての点において「上出来」となったことは、利用者(こども・保護者)アンケートとスタッフアンケートから知ることができました。
2023年度は、社会人リーダーのポジションを廃し、大学生リーダー3人を中心に大学生へ多くの業務を移行します。
2024年度には、大学生による事業として確立を目指します。

2022年度の成果のひとつとして、大学生スタッフが担い手育成の仕組みを作り上げました。「半人前・一人前リスト」というものです。
このリストを使いながら、スタッフの育成を進めることができるようになりました。

また、定期的にリストを活用することで、業務の徹底と見直しも行うこともできるようになります。
また、スタッフが各自の業務習熟度を測ることもできるようになります。大変優れたリストと育成の仕組みを構築することができました。

特定非営利活動法人mia forza

代表理事

門間尚子 (もんましょうこ)さん

大学卒業後、勤務の傍ら、2000年より、国や自治体・教育機関等で、性暴力やD V・デートD Vの講演や研修講師を担当。また、複数のNPO/NGOに所属し、こどもと女性に寄り添う活動を行っている。
2015年より性暴力被害女性とこどもに寄り添うチームとして「mia forza」を設立。その後、「せんだいこども食堂」「みやぎこども食堂ネットワーク」を立ち上げ、こども食堂を通してより多くの方へこどもへの寄り添いを働きかけた。コロナの感染拡大によりさらに深刻な状況となった女性やこどもを支えるために、2021年10月に「mia forza」をNPO法人化。
現在最も力を入れているのは、ひとり親世帯の親子・女子少年院出院者・性暴力被害者の方への応援。また、より多くの個人がNPOで力を発揮できるよう、NPOにおけるハラスメント問題の防止と解決に向けたしくみづくりにも力を入れている。

(元)特定非営利活動法人せんだいこども食堂 代表理事
(元)みやぎこども食堂ネットワーク 発起人代表・代表幹事団体代表 ほか、女性やこどもを応援する組織にて、アドバイザー、専門相談員、監修者等を務めている。

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