公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

能登半島地震でストレスを感じるこどもたちへの探求型の学びと遊びを通した心的ケア支援

公益社団法人 日本環境教育フォーラム

被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成

令和6年能登半島地震で被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成 活動報告

代表者名
阿部 治
事業名
能登半島地震でストレスを感じる子どもたちへの探究型の学びと遊びを通した心的ケア支援

支援地域/支援対象者/活動期間 活動地域や支援対象者の状況 支援の内容・方法 成果 考察

支援地域/支援対象者/活動期間

■活動地域
 石川県かほく市、福井県敦賀市、富山県富山市

■支援対象者
 能登半島地震で影響を受けた子どもたちとその保護者

■活動期間
 2024年5月30日~6月2日

活動地域や支援対象者の状況

■支援時の状況
  ※当団体が連携を行っている被災地支援団体の「RQ能登」にヒアリングを行ったところ、能登半島に現在残っている子どもの数が非常に少なく、また、インフラ未整備、学校教員らの負担が多く、受け入れ体制が整っていないため、本助成期限の6月までに直接子どもに向けて支援は不可能と判断。
その代わりに、二次避難所や被害が少なかったエリアで、受け入れ態勢を調整しやすい福井、金沢、富山市内にて、余震、急な環境変化等で不安やストレスがたまっている子ども、またたは親子に向けてワークショップを実施予定。

元旦の大地震の後、水道などのインフラ設備の復旧が未だに完了しておらず、大人たちの意識は街の復興に向いている。
子どもたちの遊び場には仮設住宅が建ち、遊び道具はがれきの下、習い事も再開の目途が立たないなど、子どもたちの日常の回復が後回しになっている(珠洲市からの避難者談)。また、継続的に震度3~5程度の余震が起きており、子どもや保護者にとって落ち着かない日々が続いている。

急な環境変化、そして又いつ地震が発生するか分からないという状況の中、不安やストレスが溜まっている子どもと親への心理的なケアが求められている。特に、避難所のような狭い場所でも、特別な道具を使わず、親子でホッとできるようなふれあい遊びや、子どもが時を忘れて夢中になれるような探究アクティビティのニーズが高いと想定される(現地の教育関係者談)。

支援の内容・方法

①子ども対象の探究ワークショップ
【対象者】福井県敦賀市の幼稚園児~小学生 のべ108名
【日時】2024年5月30日(木)16:30-17:30/18:30-20:00、5月31日(金)9:30-10:30/11:00-12:00
【場所】SAKURAゼミナール、さみどり幼稚園
【内容】小学校低学年の放課後スクールで光と色の探究を、幼稚園の授業で動物の生存戦略に関するプログラムをそれぞれ行った。
【実施者】鴨川光、木村佳葉(以上、JEEF)、職員11名、保護者11名 のべ24名で実施。

②親子対象のふれあい遊び&探究ワークショップ
【対象者】石川県かほく市、富山県富山市の幼児~小学生の親子 のべ47名
【日時】2024年6月1日(土)10:00-12:00、6月2日(日)14:00-16:00
【場所】太陽自動車学校(石川)、富山県民会館(富山)
【内容】親子でのふれあい遊びを実施した後、光と色の探究(石川)と、動物の生存戦略に関するプログラム(富山)をそれぞれ行った。
【実施者】鴨川光、木村佳葉(以上、JEEF)、現地スタッフ2名 のべ4名で実施。

■実施頻度、回数
①計4回実施
②計2回実施

■告知方法
①② 当団体サイト、SNS、現地関係者の声かけ

恐竜に食べられてしまう弱い動物の劇を食い入るように見つめる子どもたち。この後、弱い動物の型紙 を強い動物へと思い思いに進化させる
カラーフィルムを通してみると、色の見え方が変わることに驚く子どもたち。真っ赤なりんごが実は...。こ の仕組みを使って、絵の中に隠された秘密のメッセージを制作する
ふれあい遊びで笑顔になる親子。おうちでホッとする時間をつくるポイントを紹介した
秘密のメッセージを見せ合う親子。お互いのアイディアをおもしろがる
元・弱い動物を進化させ、恐竜とのバトルに挑む子どもたち。ライバルの恐竜役はお母さん
自分が作った動物を図鑑にして持ち帰る。子どもたちのアイディアが詰まっている

成果

①子ども対象の探究ワークショップ
幼児76名、小学校低学年32名にワークショップを実施することができた。 言葉が十分に育っていない幼い子どもは、不安やストレスをうまく処理できないことがある。
そこで、動物の生存戦略をもとに新しい強い生き物を生み出す(幼児)、光と色の仕組みを使って絵の中に隠された秘密のメッセージを描く(低学年)というアートの要素もあるプログラムを実施したところ、子どもたちは来た時よりもすっきりした表情で帰っていった。
先生方からは、「この子たちがこんなに創造力ゆたかだったなんて!」と驚きの声も聞かれた。

②親子対象のふれあい遊び&探究ワークショップ
幼児~小学生の親子17組47名にワークショップを実施することができた。 親子のふれあい遊びで緊張をほぐしてから、上記と同様のプログラムを行った。
さらに、公認心理士の資格をもつスタッフから、子どもたちの不安をくみ取るコツや、寄り添い方について紹介した。
保護者からは「子どもはもちろん大人もとても楽しめました。」「保護者向けに解説していただき、分かりやすかったです。参加したかいがあったと思いました。」との声をいただいた。

考察

現地の親子と交流する中で感じたのは、街の復興の陰に隠れて子どもたちの日常や気持ちの回復が置き去りにされていることだ。
本事業では、時間やスペース、特別な道具がなくても実践できる親子のふれあい遊びや、気持ちを表出できるアート系のプログラムを実施し、またその際の子どもへの寄り添い方を保護者や先生方に伝えた。

どのワークショップでも、最初は硬い表情をしていた子どもたちが、最後のころには頬を紅潮させて夢中で制作を楽しんでいた。
その様子を見た珠洲市から避難されている保護者たちからは、「今度は珠洲に来て、もっと多くの親子にやって欲しい」との声をいただき、メディアで取り上げられることは少ないものの緊急性の高い課題だと再認識した。

本事業から帰京した明朝に、震度5の余震が発生した。参加者たちに連絡したところ、「今朝はやはり地震のこともあってか、学校行きたくない、と言っていました。大人でも不安なので、子どもはなおさらですよね。教えていただいた情報を参考にさせていただきます!」と返信があり、どの保護者でも子どもたちの不安に寄り添える方法を紹介するという本事業の意義を感じた。

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