公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

自然科学・防災をテーマとしたこどものワークショップおよび交流の支援

特定非営利活動法人 こども防災協会

被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成

令和6年能登半島地震で被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成 活動報告

代表者名
鹿島 美織
事業名
自然科学・防災をテーマとしたこどものワークショップおよび交流の支援

支援地域/支援対象者/活動期間 活動地域や支援対象者の状況 支援の内容・方法 成果 考察

支援地域/支援対象者/活動期間

■活動地域
 石川県金沢市, 能登町, 穴水市

■支援対象者
 石川県において下記の世帯に該当する小学生および保護者
 ・住宅被害をうけた世帯(輪島市, 珠洲市, かほく市が多数, その他市町村合計で1425世帯)をはじめ被害・影響をうけた地区
 ・金沢市をはじめとした二次避難所にて避難生活をおくる家庭(二次避難所:246施設, 5178人)およびその周辺世帯

■活動期間
 2024年2月10日~6月23日

活動地域や支援対象者の状況

■支援時の状況

  • 避難者数が500人を超える市町村が6地域(輪島市, 珠洲市, 七尾市, 能登町, 穴水町, 志賀町)あり、これらの市町村に存在する小学校数は35校で、児童数が約5000人存在する。
  • 道路(主にのと里山街道)の通行規制や水道復旧の難航、能登エリアにおける宿泊施設不足等の背景から、甚大被害を被った建物の復旧作業に携わる人員が不足しており、復興に時間を要している。(2/10~12に七尾市, 志賀町, 能登町、4/13~15に能登町, 珠洲市, 金沢市、4/30~5/2に能登町, 穴水市の視察, 避難所/市役所/教育委員会/児童クラブ等訪問, ヒアリングを実施)
  • 小学校が避難所として使用されている/地震被害のため安全が担保されない等の事由により、体育館や運動場が使用できず、こどもたちが十分に体を動かしたり運動/スポーツを行ったりするための場所が不足している地域が存在する。(5月ワークショップ終了時点)

支援の内容・方法

①現地の視察およびニーズヒアリング
七尾市, 輪島市, 志賀町, 能登町, 珠洲市, 金沢市の計6市町村にて町役場、消防団、社会福祉協議会、避難所スタッフ、被災者に対し現状のヒアリングを行うとともに5月のワークショップに向けた実地踏査を実施。

②サイエンスワークショップ
まつなみキッズセンター(能登町)等で科学実験ワークショップ(防災キャンドルづくり、スライム実験等)を実施

③防災1dayキャンプ
まつなみキッズセンター(能登町)、奥卯辰山健民公園(金沢市)で主として石川県の小学1~6年生を対象に、防災1dayキャンプ(メタルマッチを使用した火起こし、アルミホイルを使ったサンドイッチづくり、国際交流、建物の模型作り&倒壊実験等)を実施。また、防災科学技術研究所の研究員の方を招聘し、小学生児童及び保護者を対象に、研究資料や動画を用いた防災セミナーも行っていただいた。

④教材製作
防災科学技術研究所と連携し、建物の倒壊リスクを学び命を守ることを考えるための教材製作を実施。当該教材については③のキャンプにて使用。

■実施頻度、回数
①現地の視察およびニーズヒアリング
2/10(土)~12(月), 4/13(土)~15(月)、4/27(水)~5/4(土)の計14日間

②サイエンスワークショップ
4/30(火) 計1日間

③防災1dayキャンプ
5/25(土), 5/26(日)の計2日間
※ その他 2/10-6/30においてアクティビティや教材の製作やイベントの準備、テスト、調整、報告等を実施

■告知方法
1.地域住民・協力者を通じた告知:
②は事前に社会福祉協議会や①で繋がった方々を経由して児童クラブに開催相談し、児童クラブから在籍児童へ告知。

2.教育委員会の名義後援をいただき、小学校にてチラシを配布

3.インターネットでの告知

奥卯辰山公園は、金沢大学の協力もありブラジル、マレーシア、フィリピン、インドネシア、韓国、中国、ドイツ、マリ、ベトナム等10カ国のボランティアが参加
いざというときに役立つメタルマッチによる火起こしを実践。名前も知らない保護者が大多数。児童全員が初挑戦だったが、火花を生み出し綿や麻紐を燃やすことができた
日本に住む外国人を追いかけて防災クイズに挑戦。英語の挨拶やWhere are you from? Are you ready?等のフレーズを使って国際交流も実施
防災科学技術研究所の研究員による講評・レクチャー。研究所での実験映像でもプレゼンいただき、家屋倒壊の仕組みや命を守るためにできることを考えるきっかけとなった
防災科学技術研究所からの助言をいただきながら家の模型を作製し揺れて壊れるまでの様子を観察するコンテンツを開発
ティッシュペーパーや油など、身近な材料でろうそくを作るワークショップを実施。いざというときの光の重要性やろうそくを使用するリスクを考える機会とした

成果

1.助成によりしっかりとした実地調査が可能に
被災した方から地震でのできごとや今後の不安等を伺いながら企画を検討。生活圏内に倒壊した家屋が多く残存。避難所運営や二次避難者への対応等の優先順位が高く、安全確保には時間を要す状況があった。

2.地震や家屋の倒壊から命を守ることを目的に、家の模型づくりと倒壊を学ぶ企画に
時期尚早の感もあったが、余震で二次被害を避けることを重視。防災科学技術研究所と連携し、地震や家屋の倒壊を学ぶ教材づくりや企画に着手した。

3.被災経験者の協力の元で準備・広報を実施
教育委員会や小学校に加え、現地の児童クラブや社会福祉協議会、消防など、多様な方からのご協力を得てイベントを実施。初期企画からは変更があったが、より適切な会場選定を行い、怪我や事故のないイベント運営に繋げることができた。

4.150名近くの小学生が参加、関係者は300名に
ワークショップで18名、1dayキャンプ2回で130名、合計150名と当初目標の4倍近くの児童が参加。能登町の方も驚いていた。ボランティアや保護者向けのセミナーの参加者を含めると、300名弱の方と関係を持つ事業となった。

考察

【企画実施を通じた考察】
・模型がゆれる/倒れる様子をこどもたちがじっくり見たり、より強い家の模型を作ろうとしたりする姿勢が印象的であった。一方で、低学年には難しい面や時間が足りない面もあり、今後の改善も期待される。
・こどもたちは防災科学技術研究所の実験映像を集中して見ており、映像や実験などによる多角的なアプローチも有効であると考えられる (地震の影響から映像を見るのが児童は、別の場所で過ごせるよう工夫した。全体の10%ほどが別室へ)。
・実際に火を扱う/屋外で体を動かし学ぶ/外国人から直接、異文化について聞く/英語を使って話す等、イベント全体で「体感」を重視。防災や自然科学、異文化への興味関心を養うきっかけになったのではと感じる。

【実地調査を通じた考察】
・多様なニーズや希望があり応えられないものも多かった。
・家屋の復旧作業に時間を要しており、避難所運営や地震被害により小中学校のグラウンド/体育館の使用制限などがかかっている。そのため、こどもが心身ともに安全に過ごす場所は継続して求められている。こどもたちが安心・安全な環境で教育をうけ、周囲の人と交流できる配慮も重要と感じた。

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