公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

オンラインによる能登半島地震被災地の子どもたちの学習支援

一般社団法人 フリースペース道

被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成

令和6年能登半島地震で被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成 活動報告

代表者名
髙橋 雅道
事業名
オンラインによる能登半島地震被災地の子どもたちの学習支援

支援地域/支援対象者/活動期間 活動地域や支援対象者の状況 支援の内容・方法 成果 考察

支援地域/支援対象者/活動期間

■活動地域
 石川県能登町、志賀町

■支援対象者
 能登町の小学生・中学生・高校生⇒約800名
 志賀町の小学生・中学生・高校生⇒約1,200名

■活動期間
 2024年4月1日~6月30日

活動地域や支援対象者の状況

■支援時の状況

◇能登町
・家屋の全壊・半壊・一部破損が多数あり、正確な数値は把握できない状況。一部地域の断水も続いている。
・道路の陥没や亀裂も多数見られる。
・避難者数:172名。在宅避難、石川県内外への2次避難者数は含まれない。児童生徒数は公表されていないが、一定数いると思われる。
・金沢市からの主要なアクセス道路である「のと里山海道」は、半島中央部にある西山IC以北が、多数道路の崩落・陥没があるため、片側一方通行の交通規制が敷かれていた(5月10日訪問時)。
本来であれば金沢市より車で2時間あれば到着できるが、今回の現地への訪問は3時間半ほどかかった。7月2日に全線両面通行が再開されたが、速度制限や渋滞等が発生することにより、アクセスは容易でないことが予想される。

◇志賀町
・県内で唯一震度7の揺れを計測した地域。家屋の全壊・半壊・一部破損が多数みられる。
・避難者数:指定避難所5ヶ所への避難⇒122名。2次避難⇒26名。児童生徒数は公表されていないが、一定数いる思われる。
・罹災証明申請希望数が多く、役所の担当窓口に長蛇の列ができていた(5月10日訪問時)。

支援の内容・方法

①関係機関・連携機関への事業の周知と挨拶まわり
・能登町:日頃フリースクール運営で連携を行っている大崎市教育委員会からの紹介で、能登町教育委員会総務課へ訪問。担当の薮下次長へ事業説明を行った(5月10日)。
事業内容の把握と情報の周知協力を快諾していただき、定例で開催している能登町の校長会にて情報提供と周知を行っていただいた。
・志賀町:志賀町議会議員の梢正美氏を訪問。現地で活動しているボランティアの宿泊や活動拠点の開設を行っている。事業内容の把握と情報の周知協力を快諾していただき、志賀町内外に情報発信を行った。
また、珠洲市・輪島市の関係機関への情報提供や紹介を依頼した。

②オンラインによる被災地児童生徒への学習支援
・能登町・志賀町の中学生・高校生とオンライン上にてWeb会議ツール「zoom」を使用し、学習支援を行った。
4月1日よりSNSを中心に情報を発信。問い合わせをいただいた家庭と事前にヒアリングを行った(担当:髙橋)。
支援者の個々の状況に合わせて学習支援の頻度や内容を決定し、支援を開始。担当のスタッフ・ボランティアは、担当髙橋にて割り振りを行った。

■実施頻度、回数
2024年4月~6月の実施状況
中学3年生女子A(志賀町)⇒支援回数:16回。支援内容:受験相談、数学、社会。
中学3年生男子B(志賀町)⇒支援回数:14回。支援内容:受験相談、数学、英語。
高校3年生男子C(志賀町)⇒支援回数:11回。支援内容:受験相談、化学。
中学3年生女子D(能登町)⇒支援回数:8回。支援内容:受験相談、数学、英語。
高校3年生女子E(能登町)⇒支援回数:15回。支援内容:受験相談、英語。

■告知方法
弊法人ホームページ・Facebook・X(旧Twitter)・Instagram
能登町教育委員会総務部からの情報発信。校長会を通して各小・中学校へ発信。
志賀町議会議員梢正美氏を通して、志賀町行政や現地で活動している民間団体、地域住民へ情報発信を行った。

5月10日能登町教育委員会を訪問した際、能登町役場内に宮城県各地から送られた被災地への応援メッセージが掲載されていた。大変胸が熱くなった
担当スタッフが支援対象の生徒とオンラインによる学習支援を行っている様子
能登町高校3年生の生徒が学習支援を受けている様子(保護者の承諾のもと写真撮影)

成果

  • 能登半島の被災地の子どもたちとオンラインを通して繫がり、困りごとや悩みなどのヒアリングを行い、現地の状況を伺いながら直接支援することができた。
  • 支援を行った子どもたちは全員高校受験及び大学受験を控えている中学3年生・高校3年生の生徒であり、被災生活が続く中で進路に対する悩みを共有し、ご家族を含めて抱えている不安を軽減することができた。
  • 情報発信や現地の関係機関との連携にあたり、フリースペース道の活動拠点がある大崎市教育委員会を通して、能登半島の市町村教育委員会と直接つながり、情報提供を行うことができた。
  • 現地視察や学習支援対象の生徒からの情報を通して、被災地の状況や情報を直接得ることができ、それらをフリースペース道のSNS等を通して発信することができた。
  • 道路の陥没や損壊などにより、物理的に訪問が困難な地域への支援の一つとして、オンラインを活用した支援が有効であることが示された。
  • 能登半島の現地で活動されている行政や市民団体、地域の方々とつながり、今後の支援連携の土台作りが行えた。

考察

  • 能登半島へ視察・見学を行い、現地の状況を確認できたことは大きな意義があった。
    想像以上に道路の陥没や崩落の被害が大きく、現地へ向かうための唯一の幹線道路である「のと里山海道」の通行が非常に困難であったため、輪島市・珠洲市方面へのアクセスが予定の時間より大幅に超過した。7月2日時点でこの道路の全線開通が発表されたが、今後もこれらの地域へのアクセスは非常に労力を要すると思われる。このような状況にあって、オンラインによる被災地支援は被災者と支援者の双方にとって大変有益であったと考える。
  • 今回の活動を通して、中学3年生と高校3年生のいわゆる受験生の悩み・不安、支援のニーズが多いことが分かった。
    特に中学3年生については、高校受験を石川県外も含めて検討している家庭も多く、現地の被災状況の深刻さが伝わってきた。また、珠洲市の高校に通う高校3年生も、未だ学校の水道が使えない状況で通学を続けている。この結果を受けて、夏休み期間に受験生対象の相談会・勉強会をオンラインにて開催する。
  • 輪島市と珠洲市は、ライフライン等の復旧のため現地が手一杯の状況で、学習支援まで対応が回らない状態であった。

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