公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

令和6年能登半島地震で被災した石川県七尾市の学校支援事業

特定非営利活動法人 日本教育再興連盟

被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成

令和6年能登半島地震で被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成 活動報告

代表者名
陰山 英男
事業名
令和6年能登半島地震で被災した石川県七尾市の学校支援事業

支援地域/支援対象者/活動期間 活動地域や支援対象者の状況 支援の内容・方法 成果 考察

支援地域/支援対象者/活動期間

■活動地域
 石川県七尾市

■支援対象者
 令和6年能登半島地震によって被災した子どもとその保護者

■活動期間
 2024年2月1日~6月30日

活動地域や支援対象者の状況

■支援時の状況
令和6年能登半島地震によって被災した地域では、多くの人が住み慣れた地域を離れて生活することになったり、水道の復旧がいまだなされなかったりして、子どもたちも日常と異なる環境での暮らしを強いられた。
学校も2月から徐々に再開され始めたが、授業時間の一部縮小や簡易給食の提供など、元通りの学校生活が戻るまでには時間がかかっている。このような状況の中、子どもたちは、こころとからだに不調をきたすリスクが高い状態にあると考えられ、現地では、実際に「震災前と比べて明らかに様子がおかしい」「夜寝られなかったり、行動面に気になる点がある」などといった様子が保護者や教職員から聞かれ、子どもを見守る大人を増やすこと、子どもが安心して遊べる場所を確保することは喫緊の課題であった。
しかし、教職員自身も被災し、震災対応業務が増加する中で、教職員ですべて対応することは非常に厳しい状況であったため、外部団体による支援のニーズが高いと判断し、当団体で支援を行うこととした。
また、道路や建物の崩壊などによって通学路に危険な場所が多々ある等の事情のために、保護者による学校への送迎が必須となっている家庭もあり、迎えに行くまで安全に過ごせる放課後の居場所を学校内に用意することは、保護者のニーズも非常に高かった。

支援の内容・方法

①学校内における放課後の子どもの居場所支援
1.活動人数
約20名

2.活動場所
七尾市立小丸山小学校・和倉小学校

3.支援対象・件数
上記の小学校に通う子ども 10名程度/日
平日14時~17時に開放

4.具体的な活動内容
大学生を中心とした、教育に関して一定の知見を持つスタッフによる被災した子どもの放課後の居場所支援。子どもそれぞれに合わせた活動(カードゲームや工作、体を動かす遊びなど)の他、宿題サポートなどの学習支援を行った。また、送迎時には保護者と子どもの様子について会話し、何か変わったことがないか注意を払うとともに、気になる点があった際には適切な相談窓口に繋ぐ役割を担った。

②学校の授業補助、休み時間の子ども対応サポート
1.活動人数
約20名

2.活動場所
七尾市立中島小学校

3.支援対象・件数
上記の小学校に通う子ども・教職員

4.具体的な活動内容
学校の日中の支援員として、大学生を中心とした教育に一定の知見を持つスタッフを派遣。
授業の補助や休み時間に子どもと一緒に遊ぶ等の活動を通して精神的に不安定になっている可能性のある子どもを見守る体制を強化した。

■実施頻度、回数
計44日

■告知方法
各拠点でのポスター掲示、当団体ホームページ

放課後の居場所にて、みんなでかるたをして遊んでいる様子。 他のスペースでは、宿題をする子、お絵描きをする子、かけっこやボードゲームをする子などもいて、思い思いに自由に過ごしていました
年齢の垣根を越えてみんなで一緒に遊べるカードゲームは人気で、この日はババ抜きをして過ごしました
静かに過ごしたい子は、机に座って黙々とタイピングゲームや宿題に取り組んでいました
折り紙でつくった作品を大学生スタッフに自慢げに笑顔で見せてくれました

成果

地震から1ヵ月が経った2月以降、体育館や校庭が避難所となっていたり断水が続いていたりと、元通りの生活では全くないものの少しずつ学校が再開し始めたことを受け、七尾市教育委員会とコンタクトを密にし、市内3つの小学校において、それぞれ求められる形で放課後の子どもの居場所運営や日中のサポートを開始した。
学校が再開して喜ぶ子どもたちも多かったが、道路状況など様々な都合から保護者の送迎が必要になった子どもの放課後の受け皿がなかったり、教職員の業務負担が大きくなってしまっていたり等、学校が再開したことによって生まれた新たなニーズに応えることができたと感じている。
教職員自身も被災していたり、震災対応業務が増加したりする中で、教職員だけですべて対応することには無理があった中、学校からは、当団体が現場に入ることによって、学校における子どもを見守る体制を強化でき、教職員の負担軽減にもつながったとの評価をいただいた。

考察

被災直後の混乱状況の中、子どもたちの支援は手薄になりがちだが、被災後のストレスを発散したり受け止めてもらったりできたかどうかは、その後の子どもたちの成長に大きく影響を与える非常に重要なポイントであり、この点にいち早く取り組めんだことには大きな価値があったと考えている。さらに、学校が再開し始めた頃は、ちょうど地震から少し時間が経ち、子どもたちのこころやからだの不調が表に出てきやすい時期でもあり、ささいな変化を学校や家庭と共有できる関係づくりができたことも良かったことの一つである。
今後は、今回の緊急支援の経験をもとに、防災に関する講演・発信活動等を行い、再び地震が発生した際に子どもたちへの支援がスムーズに行われる体制づくりを全国に拡げていきたい。実際に、石川県内のPTA連合会から講演依頼なども受けており、いざというときにどう子どもを守るのか、学校や保護者と一緒に考える機会を提供できたらと考えている。

SNSでこの記事をシェアする

一覧に戻る