公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

石川県七尾市における令和6年能登半島地震で被災した子どもの居場所支援事業

特定非営利活動法人 日本教育再興連盟

被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成

令和6年能登半島地震で被災した子どもの学びや育ちの支援活動助成 活動報告

代表者名
陰山 英男
事業名
石川県七尾市における令和6年能登半島地震で被災した子どもの居場所支援事業

支援地域/支援対象者/活動期間 活動地域や支援対象者の状況 支援の内容・方法 成果 考察

支援地域/支援対象者/活動期間

■活動地域
 石川県七尾市

■支援対象者
 令和6年能登半島地震によって被災した子どもとその保護者

■活動期間
 2024年1月5日~6月30日

活動地域や支援対象者の状況

令和6年能登半島地震によって被災した地域では、多くの人が住み慣れた地域を離れて生活することになったり、水道の復旧が4月頭までなされなかったりして、子どもたちも日常と異なる環境での暮らしを強いられており、こころとからだに不調をきたすリスクも高い状態にあると考えられた。
学校も1月は全面休校、2月に入って徐々に再開し始めたものの、体育館や校庭が避難所になっていたり、短縮時間割で早めの下校となったり、元通りの学校生活とは言えない状況であった。
そのため、教育に知見のあるスタッフが見守る中で、子どもが安心して過ごせる場所を確保することへのニーズは非常に高かった。
また、保護者も復旧作業等で外出が必要な場合があったり、保護者自身も被災してショックを感じている中でレスパイトの必要があったりしたため、子どもの一時預かりのニーズも高い状況にあった。

支援の内容・方法

■場所:石川県七尾市 矢田郷コミュニティセンター(1月~6月)、ひかりのここども園(4月~6月)
■対象:近隣に住む4歳~18歳の子ども 1日平均15名程度/拠点
■内容:子どもの預かり・居場所支援、学習支援
■活動スタッフ:当団体理事・職員、教育に一定の知見を持つ大学生・大学院生 約70名
■具体的な活動内容:
石川県七尾市において、日中子どもが遊んだり学習したりできる居場所拠点を運営した。
保護者が復旧作業等で外出が必要な場合には、拠点内にて子どもの一時預かりも行った。
子どもたちと直接関わるスタッフは、主に教育に一定の知見を持つ大学生・大学院生が担い、それぞれの希望に合わせた遊び(カードゲームや工作など)や、学習支援や休校中の学校のオンライン授業のサポートなどを実施した。
活動にあたっては、被災してこころとからだに不調をきたすリスクが高い状態にある子どもたちの些細な変化に気を配り、何かあった際にはメンバー内で情報をすばやく共有したり、送迎の際に保護者と積極的にコミュニケーションを取ったりするよう心掛けた。

■実施頻度、回数
計115日

■告知方法
各拠点でのポスター掲示、当団体ホームページ

避難所となっている地域施設の図書館を子どもたちの居場所としてお借りしました
校庭や公園は避難所になったり危険だったりして使えなくなっていることが多かったため、子どもたちは身体を動かしたくてうずうず。安全に気を付けながら、試行錯誤で室内でも運動遊びを行っていました
中高生は勉強しに訪れることが多く、大学生スタッフに質問に来ることも多くありました。受験生もいたので、静かに勉強ができるスペースを子どもの遊び場と離れたところに確保するように努めました
自習スペースでは、休校中に学校から出た宿題に一生懸命取り組む子どもたちが見られました
近隣の体育館を使えた日には、みんなでドッジボールなどをして遊びました。子どもたちは、日頃たまったストレスを解消するかのように思いっきりはしゃいでいました
居場所支援に従事したスタッフたち。毎日開放が終了となった春休み終了日に撮影

成果

安全管理と現地の迷惑にならないことを第一優先に地震発生直後から居場所を開放し続け、日によってバラつきはあるものの毎日10~30名ほどの子どもたちを受け入れた。1~3月はほとんど毎日居場所を開放していたところ、毎日のように通う子どもも多くおり、子どもたちにとって安心して過ごせる居場所として機能していたと思われる。
居場所内では、子どもたちとも相談しながら限られたスペースや道具を上手く使い、一緒に時間を過ごした。また、被災を経験した中でも子どもたちの学びが止まらないよう、学習支援にも力を入れることができた。居場所スタッフとしては、当団体に所属する教育に高い関心を持つ大学生や金沢近郊の大学生が数多く参加してくれ、比較的年齢の近いお兄さん・お姉さんとして子どもたちもリラックスした様子でかかわっていた。
これらの居場所支援活動の様子は教育新聞、読売新聞、中国新聞等のメディアにも掲載された。

考察

被災直後の混乱状況の中、子どもたちの支援は手薄になりがちだが、被災後のストレスを発散したり受け止めてもらったりできたかどうかは、その後の子どもたちの成長に大きく影響を与える非常に重要なポイントである。
今回、日常が失われている状況の中でも、自分のしたいことを自由にすることが許される場所を提供できたことは、子どもたちの心のケアには一定の価値があったと考えている。特に当団体が活動を行った石川県七尾市では、現地に定常的に子どもたちの居場所を開ける団体が存在していなかったこともあり、当団体の活動へのニーズは非常に強く感じられた。
また、イレギュラーな事態が起こり、状況も日々刻一刻と変化していく被災地での活動においては、学校視察や保護者との密なコミュニケーション等を通して情報をいち早く察知し、現地のニーズに合わせて柔軟に活動時間や頻度等を調整する姿勢も非常に重要であった。
今後は、今回の緊急支援の経験をもとに、防災に関する講演・発信活動等を行い、再び地震が発生した際に子どもたちへの支援がスムーズに行われる体制づくりを全国に拡げていきたい。

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