プログラム活用事例
防犯 【パトロールプレートデザインプロジェクト】イラストの力で「見守り」を応援!~無料で使えるパトロールデザイン~
子どもたちの安全や防犯への関心は年々高まっています。子どもたちを対象とした防犯教室、保護者や地域住民による防犯パトロールなども全国で行われています。防犯パトロールは、徒歩によるもの、青色回転灯を装着した車両によるもの、そして、自転車の前かごにパトロールプレートを着けて行うものなど、方法もさまざまです。
とくに、パトロールプレートを使用する際に気になるのが、そのデザイン。 普段の生活でも使用する自転車につけるもののため、やはり見た目や雰囲気も気になるところ。より気軽に防犯活動へ参加してもらう、子どもたちを見守る目を増やすためにも、プレートのデザインは意外と重要なものなのです。 今回は、パトロールプレートのデザインを無料で提供するプロジェクトを紹介します。
「自転車用パトロールプレート」のデザインを無料で提供しているのは、本サイトの監修もいただいている安全インストラクター、武田信彦さんが主宰する「うさぎママのパトロール教室」。現在、14種類あるデザインの中から、好みのデザインを選ぶことができます。さらに、学校名や地域名などの文字入れも無料。デザインは、メールにてPDFデータで送られてくるので、各自で印刷やラミネート加工等すれば、パトロールで使うことができるのです。なお、防犯活動の範囲であれば、腕章やバッジなど、ほかのアイテムに使用することも可能だとか。 ちなみに、無料で使用できるこれらのデザインは、プロのイラストレーターたちがボランティアで制作したものです。
(パトロールデザインの一部。明るいデザインが印象的です)
このプロジェクトを始めたきっかけについて、うさぎママのパトロール教室を主宰する武田さんは、
「防犯パトロールが全国に広がり、自転車の前カゴに取り付けられたパトロールプレートを目にする機会も増えました。お出かけや買い物のついでに『見守り』ができるため、気軽に参加できるメリットがあります。一方で、犯罪抑止や防犯のメッセージが強いものだと、そのデザインも馴染みにくいものになってしまいます。実際に使用しているPTAや保護者のみなさんから、『もっとかわいいものでもよいのでは?』『防犯って書いてあるとちょっと取り付けにくい...』などの意見が多く寄せられていました。一般市民が行う防犯は、『見守り」の範囲で行われるものです。非行や犯罪と戦うものではありません。それであれば、「助け合える環境づくり』の視点でデザインを活かす方法もあると考え、かわいいデザインを提供することにしたのです。
あと、デザインは誰の目線を意識するのか...も重要だと思います。見守る対象である子どもたちや親子のみなさん、地域のみなさんにとって、声がかけやすい、分かりやすいものでなければ効果を生み出しません。あくまでも、『助け合える環境づくり』『あいさつがしやすい雰囲気づくり』のための道具ですが、そのことが、見て見ぬふりを減らし、犯罪が発生しにくい環境を生み出していくものだと思っています」
また、このプロジェクトに最初に加わったイラストレーターの津田蘭子さんは、その理由について、
「当時、パトロールプレートを付けた自転車が街に増えだした頃だったのですが、『防犯』を強く意識したものが多く、『つけさせられている』雰囲気をすごく感じました。自分からつけたい!と思うような、もっとかわいいデザインのプレートでもよいのに。せっかくやるなら、街の雰囲気を明るくして、楽しく前向きなものでもよいのでは、思いました」
と言います。
(イラストレーターの津田蘭子さん)
せっかく子どもたちの安全のために使うのだから、子どもたちが覚えやすく、好きになってくれるような、かわいいイラストの入ったデザインを考えたそうです。
プロジェクトに賛同して協力したイラストレーターの藤井アキヒトさんは、
「以前から、チャリティとかボランティアに自分のイラストを提供したいという想いがあり、話を頂いてすぐに協力を決めました。子どもは好きですし、犯罪に遭ってほしくないので、イラストを描くという自分の能力を、子どもの安全を守ることに使ってもらいたいという気持ちです」
と振り返ります。
(自らのデザインを手にお話しいただいた藤井アキヒトさん)
ところで、パトロールプレートのデザインを提供する中で、課題も生まれました。依頼の中には、「デザインだけでなく、プレートも作ってほしい」という声があったのです。当時、自転車に取り付けるプレートを製作するには、ある程度の数量を専門業者へ発注する必要がありました。数十枚に対応してくれるところは少なく、料金も高額になります。
この課題を解決したのは、100年以上の歴史がある印刷会社精興社のみなさんでした。一般的な印刷に必要な「版下」を使わないオンデマンド印刷を活用することで、少ない枚数でも製作できる専用のプレートを開発したのです。
「特殊な耐水・耐光用紙にデザインを印刷し、それをしっかりした厚みのある塩化ビニールプレートに張りつけ、さらに上から汚れや破損を防ぐビニール加工をしています。自転車の前カゴに取り付けられるよう、周囲8箇所に穴を開けてハトメも取り付けます」
と精興社の鈴木隆史さんは説明します。
(優れた印刷技術でパトロールデザインのプレート化を実現した精興社のお二人)
風雨や太陽の光に長時間さらされても劣化しにくい高クオリティのパトロールプレートは、1枚500円(税別)で、50枚から注文することができるようになりました。
「精興社のみなさんがプレート化をしてくれたおかげで、私たちもリリースに踏み切れました。デザインを無料で提供しても、『プレートはどう作ればいいですか?』と聞かれて、答えられないのは、こちらとしても残念なことですから...」
と武田さんは言います。
すでに、無料のパトロールデザインはPTAや自治会を中心に各地で活用され、好評を得ているとか。また、プレートへの注文も増えており、
「実際にプレートを納品して、自転車につけて走ってみると、やっている感がすごく出るのだと思います。とても評判がよく、こちらもうれしいかぎりです」
と精興社の斎藤智子さん。
助け合える環境づくりのための「見守り」を応援するパトロールデザイン。必要としている人たちへ届いてほしいものです。
○パトロールデザインについてのお問合せ : うさぎママのパトロール教室