活動実績
清瀬市の児童養護施設「子供の家」を訪問しました!
12月6日に行うベネッセこども基金MeetUp2021#2は『社会的養護のもとの子どもの現状と課題』をテーマに児童養護施設などで育つ子どもたちのよりよい育ちや学びについて、児童養護施設の施設長の方や、児童養護施設の支援をしている当財団の助成団体の代表の方々にご登壇いただき、ともに理解を深めていきたいと思っています。
ご登壇いただく早川悟司さんが施設長を務める清瀬市の児童養護施設「子供の家」を訪問させていただきました。
※Peatixサイトページで無料視聴チケットをお申し込みください。
27年前から最先端をいく小規模グループホーム
清瀬駅から歩いて10分ほどの住宅街に、「子供の家」のロゴにもなっている三角屋根の建物がありました。
元は27年前に、大舎制(一緒に生活するグループが20人以上)から小規模のグループホーム型にかえた、国の方針に先駆けた当時最先端の建物を数年前にリニューアルしたもので、グッドデザイン賞にえらばれたそうです。
1ホームは基本的に6人の子どもたちが暮らします。2ホームが1棟で、敷地内には3棟あり、2~22歳が暮らしています。
1階はリビングとお風呂やトイレ、個室、スタッフの部屋があります。2階にもリビングと個室があります。スタッフの部屋は1棟に1つで、2つのホームとつながっています。
1ホームに5人のスタッフが子どもたちに寄り添います。もちろん夜も宿直しています。
本園の外の場所に立てられているグループホーム(6か所)を含め、来年スタッフ80人になる予定で、スタッフの充実が子どもへのサポートへの質に直接関わる、施設を作る前にまず採用、研修が重要であると強く語っていらっしゃいました。
事務棟のようす
2階建ての事務棟には、事務所のほかに、相談ルームがあり、心理士や自立支援員などとゆっくり話すことができたり、2階のホールでは、コロナ前は地域の方と一緒にこども食堂を開催したり、ボランティア団体の学習支援を実施したりしているそうです。 この日も、キャリア支援のワークショップが行われていました。
ハードは大切!地域にある新築のグループホームの見学
清瀬市内にある6つのグループホームのうち、2か所を見学させていただきました。どちらも2つずつ並べて建てていることにこだわりがあります。ケアをする職員は一人でホームにいることが多いですが、2つずつ並べることで職員同士が相談しやすい環境をとなるなど、メリットが多いそうで、他の地域でもこの形が増え始めたそうです。
地域の中のグループホームは、本園よりすべてのスペースが広く、ゆとりがありました。2階にもリビングがあるなど基本的な構造は同じですが、2階にもキッチンがついています。ここでは高年齢の子どもたちが料理の練習をすることができ、施設にいるうちから自立への力をつけているのです。
「ハードは大切!」と早川さんはおっしゃいます。新しく広い建物は、子どもの心によい影響を与えているそうです。新しくできたグループホームには、本園で生活していたグループごと移ってきましたが、リビングも個室も広く壁も厚いので、思いきりごろごろできたり、お互いの声やテレビの音も響きにくく、トラブルが確実に減ったそうです。
建設中の「地域の子どもの居場所」
「子供の家」は、これから社会的養護の元に来た子どものケア(インケア)だけでなく、地域支援が重要であるという思いから、来年早々に「子どもの居場所」を始めることになりました。建設中の建物も見せていただきました。日本財団×清瀬市×子供の家 3者協定を提携し運営を行っていくそうです。
近所の経済的に厳しく孤立しそうな子供と家族の支援として、毎日「子供の居場所」を開き、夕ご飯を一緒に食べるという活動を行います。ショートステイも行える場とします。本当はすべて開放としたいということですが、最初は確実に支援したい子どもを登録制で利用します。
樹木をふんだんに使った吹き抜けの建物。とても居心地がよさそうです。オープンしたらまた見学させていただけたらと思っています。
「子供の家」運営マニュアル
子供の家では、5つの職務委員会を設立し、全スタッフどれかの委員会に入る決まりになっています。各ホームから委員が集まって会議をして、ホームに情報を持ち帰って共有する、つまり、ホームのチーム☓委員会 のマトリックス組織で運営されているそうです。
かつては他のホームのトラブルについて、別のホームの人がなかなか対応できないといった問題もあったそうですが、こうすることで、一人一人が園全体の課題に対応できる体制になったそうです。
そして職員がよりどころとできるマニュアルがしっかりと整い、各委員会ごとに毎年更新されていました。全国からの希望にお応えしてお渡ししているそうです。
大切にしている点をたくさん伺いました。
・子どもを選ばない。預かる預からないの議論はしない。すべて預かる。
・存在と行動は分ける 「発達は社会との関わりにおける反応の過程である」
・ケース会議では、これまでの達成点と子どもの強みを話し、スタッフの気持ちをリセットする。
・制度は使うか使わないかではなく、どう使うか。
訪問を終えて
何らかの事情で、家族とともに健やかで充実した毎日を送ることが難しくなった子どもの心は、大きく傷ついていると思います。早川さん以下職員の皆様が、日々の丁寧なかかわりを通して、子どもの成長に寄り添い、傷ついた心の回復に向けた援助をされている様子を拝見いたしました。
また、子どものためにもっとよい方法があるのではと常に考えていらっしゃることも感じました。
地域と共に子どもを守る「子供の家」の始動も楽しみです。
お忙しいところお時間をいただき、ご説明いただいた早川様、ありがとうございました。