公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

ネット SNSトラブル...親には相談できない??

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:ネット編VOL.28 担当:菅原 邦美

SNSトラブルが起きたときは

今や、小学生(いや、幼稚園も?)から高齢者までがSNSを利用する時代。 正しく、注意して利用している人でも思わぬところでトラブルに巻き込まれてしまうことがあります。
小・中・高校生がSNSトラブルに巻き込まれた場合には、いちはやく周りの信頼できる大人(親・先生等)に相談し対処することがベストなのは言うまでもありません。
相談された大人は、子どもからそのトラブルのあらましを聞き、状況や内容によっては学校、警察、公的機関、弁護士、調査会社等々に相談するのが安心安全、迅速で確かな方法であるといえるでしょう。

親には相談できない??


しかし、ここで思わぬ足踏みや待った!がかかってしまうことがあります。
それは、トラブルにあった子どもの実に7割が親に相談せず、インターネットの知恵袋などの悩み事相談サイトや、SNS上・インターネット上の知り合いに相談しているという現実です。
実際に講座のアンケートやグループトークなどでも、「親とか、先生には相談しにくくて・・・。」という声をよく耳にします。
子どもたちが、トラブルにあって悩んだときに、周りの信頼できる大人(特に親)に相談しないというのにはいろいろな理由が考えられます。

① 親に心配をかけたくない。
② 親にとがめられる・叱られる⇒SNSをやめろといわれたり、スマホを取り上げられたりする。
③ 親に自分のしていること、SNSでのやりとりを知られたくない。
④ 親に相談しても、詳しくない・理解できない。

②、③の理由については、親に対する不信感がにじみ出ているように感じます。

平常心が子供を守る!

子どものSNSトラブルを知ったら、驚き、うろたえ、悩む...それは親として当然です。
ゆえに、勇気をふり絞って悩みを打ち明けた子どもに親が大声で矢継ぎ早に、
「トラブルの相手は誰なんだ?」とか、「今から担任の先生に話す。」とか、「だからSNSばかりしちゃダメと言ったでしょ!!」...などと平常心を失い質問攻めにしてしまいがちです。

激情にかられた親に鬼の形相でスマホを取り上げられたり、叱られたりした子どもは
【叱ってばかりで怖い】【子どもの事情を分かってもらえない】【もう、話したくない・相談しない】といった気持ちになってしまうのは無理もないかもしれません。

これでは、子どもを心配する親心が通じないばかりか、逆効果になってしまう...それはとても悲しいことです。
周りの信頼できる大人ではなく友達に相談する、という場合もあります。しかし、インターネット上のトラブルの安心安全な解決策を同年代の友達が熟知していることはなかなかないでしょう。

ネットでの相談がトラブルの連鎖になることも!

となると、行きつく先は"インターネットの中"ということになってしまいます。
インターネットの中の見知らぬ人に相談する...頭の中では、ちょっと怖くてやめておこうかな...と思うかもしれませんが、
いろいろ検索したりしているうちにいとも簡単に一歩を踏み出してしまったり、、、ということがあるのです。

では、なぜ、インターネットの中の見知らぬ人に相談しやすいのでしょうか?

① 素性を隠せる。匿名、ハンドルネームで相談できる。
② 立場、しがらみがないので自由な気持ちでなんでも相談ができる。
③ 相談していることを親、先生に知られたりしない。

という理由が挙げられます。

しかし、インターネットの中には、子どもの相談に乗るふりをして優しい言葉を繰り返しかけて、子どもの心を虜にして実際に出会うーーといった、悪意を持った人により危険な目にあったり、犯罪に巻き込まれていく危険性があることを知っておいてください。
土壇場で子どもに頼ってもらえるために...親は、トラブルに直面してもできるだけ冷静に対応することが大切です。

相談しやすい雰囲気は「つくる」もの

ある日突然のトラブルに備えて、普段から心に留めておくことを考えてみましょう。

①普段から何気ない会話の積み重ねを。

子どもが話しかけてきたときに限って夕飯準備でバタバタしていたり、家庭の中では一緒に生活していても親子ともに良いタイミングで話ができるとは限りません。
でも、うまくタイミングが合って子どもがポツポツと話しだしたら、はやる気持ちを抑えてまずは最後まで聞きましょう。
〇共感する=「そうなんだね。」「わかる。」「うんうん。」
このような言葉や相槌は、話すほうにとっても次の言葉を紡ぎやすくしてくれます。
✕問い詰める=「ちょっとそれ、どういうこと?」「相手は誰なの?」「なぜそんなことをしたの?」
一生懸命話そうとしても、遮られたり、あれこれ質問されたり、説教されたりすると一気に話す気がなくなります。

②パソコンは閉じ、スマホをオフにしてゆったりと。

親もしょっちゅう連絡が入ったりしてスマホが鳴り、ついつい画面を見ながら適当な返事をしてしまっていませんか?
そんなことが繰り返されたら、
「自分のほうを見てくれていない。」「きちんと聞いてくれていない。」
「スマホのほうが大事なの?」「もう いいよ。」
と、子どもはもう心を閉ざしてしまうかもしれません。
どうしても返信しなければならない時は、子どもにも相手にも一言かけてから、子どもの話を聞くようにしましょう。

③時には、家を出て環境を変えてみる。

家の中で対峙していては話しにくいことがあります。
自然の中で散歩やジョギング、ドライブ、公園でボーっとする...。
スーパー銭湯やジムに行ってみるなど、環境や相手をかえてみるとふとしたタイミングで、親も悩みや経験談など色々話せることもあります。おじいちゃんおばあちゃんの家もよいかもしれません。

④信頼できる相談先を家族みんなが知っておく。

子どものトラブルを知ったとき、親が慌てずに聞き、判断し、対処(相談)できれば、子どもも落ち着きます。
そのためには、いざという時の★相談先★を家族みんなで知っておくことです。
相談先一覧を冷蔵庫やトイレに貼ったり、各自が持ってお守りにしておけば、慌てず相談できます。
どうしても親に言いにくいことも、子ども自身で相談できます。
平常心を失っているときのインターネット検索は、そのサイトが安全かどうかの判断を誤ってしまい大変危険です。

※記事の最後に、★相談先一覧★を掲載しました。参考にしてください。

子どもの「安全基地」

私たち親世代も、子どものころ・思春期のころがありました。
大きな違いは、こんなに身近にインターネットがなかったことです。
でも、友達、好きな人、学校、家・親のことなど笑ったり悩んだり泣いたりしながら歩いてきました。今を生きる子どもたちと、心は同じなんです。
あの頃の自分を思い出して、子どもと話せたらよいな、と思います。

普段から心に留めておくことの①②③④は私の経験から痛感したことです。
特に②は、つい無意識にしてしまい悲しい思いをさせ、子どもに注意されました。
④は実際に子どもがトラブルに遭い、相談し難を逃れました。
(この顛末については、ベネッセ子ども基金 2020/5/19のコラム 「インターネットの危険性・依存性についての啓発活動~私のきっかけ物語」 に書いています。

親子の距離は、遠くなったり、近くなったり...。
でも、根っこでつながっていればよいのだと思います。
全部話してくれなくてもいいのです。
『困ったり、悩んだらいつでも聞くよ。あなたの味方だから。』
ということは、折に触れて伝えておきましょう。
『何があってもここは安全基地。』
という気持ちが芽生えたら、子どもは何があっても水際でふんばってくれる・・・。
SOSをだしてくれる・・・。ここに帰ってきてくれる・・・。

ここ

 は、あなたなのです。

★相談先一覧★

京都市教育委員会 誹謗中傷・いじめから子どもを守る「ネット・トラブル情報デスク」の受付窓口 もおすすめです。

京都府警察ネット安心アドバイザー、京都市教育委員会情報モラル市民インストラクター、近畿総合通信局e-ネットキャラバン認定講師

菅原 邦美さん

ネットトラブルをきっかけにインターネットについて学びはじめ、ソーシャルメディアを含むインターネットの危険性・依存性について保護者目線で共に学び・考え・話し合い、子どもを見守る学校・地域に根差した啓発活動を続けている。

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