公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 通学路と子どもの防犯対策 Q & A

こどもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.93
担当:市民防犯インストラクター 武田信彦

市民防犯インストラクターの武田信彦です。今年度も各地で防犯に関する研修や講演を多数実施しています。また、多くの皆さまから質問もいただいております。今回は、私が印象に残った質問と私の視点からポイントを解説します。

Q. 付き添うことは過保護でしょうか?どこからが過保護ですか?(保護者)
A. 大人の付き添いは、最強の防犯力です!

「付き添いたいけれど、過保護でしょうか......」。PTAや保護者対象の研修では、このような質問をいただくことがあります。結論から言えば、過保護ではありませんよ!付き添う大人の存在は、子どもにとって「最強の防犯力」となり得るからです。子どもの防犯対策で重要なポイントは「子どもだけになる瞬間」に犯罪被害リスクが高まる傾向があること。その瞬間をなるべく減らす、無くすことこそが安全確保につながります。通学路での付き添いをはじめ、家の玄関先や集合住宅のエントランスで見送る、集団登校の待ち合わせ場所まで送る、学校や学童クラブへお迎えに行くこと等もおすすめです。

いま、仕事をもつ保護者が多く、ひとり歩きをせざるを得ない子どもたちが大勢います。一方、付き添いができる保護者の皆さんが通学路を歩いていただくことは、ひとり歩きする児童たちにとっても「見守る力」となります。なお、「子どもをひとりで通学させなければいけない」といったルールはありませんので、「付き添いたい」と思ったら、ぜひ堂々と付き添ってください。
ちなみに、「どこからが過保護か......」という点ですが、例えば、下校途中、お子さまとともにコンビニでアイスを買って食べる......といったことは避けるべきかと思います。「おやつは家に帰ってから食べようね」といったメリハリは大切ですね。

Q. 児童への防犯指導は、どの程度行う必要がありますか?(教員)
A. くり返し確認することで習慣化します!

教職員対象の防犯研修も各地で実施しており、熱心な先生方から質問をいただきます。とりわけ防犯指導の内容や実施頻度については関心が高いように思います。とくに小学校では年に1回程度、セーフティ教室や防犯セミナーといった名称で「防犯」を学ぶ場が設けられています。私のような外部講師や警察官等が学校に招かれ、危険からの身の守り方などを伝えています。なお、児童への防犯指導には課題もあります。詳しくはコラム92をご覧ください。

セーフティ教室や防犯セミナーは、数十名規模、多いときは200名ほどが参加して行われることがあります。大人数での実施のため、児童一人ひとりへ細かなフォローができません。このようなイベント的に行われる防犯指導は「きっかけ」ととらえていただければと思います。防犯に関する大切な要素やキーワードを知る機会であり、この場ですべてを理解することは不可能です。防犯は「生きる力」の実践のため、日常的にくり返し確認することで習慣化します。たとえば、朝の会や帰りの会などで少しずつ確認いただくことが効果的です。
私が実施する防犯セミナーの場合、ふりかえり教材として役立つのがベネッセこども基金といっしょに作成した「こどもの安全教室実施プログラム」です。画像やシナリオが用意されていますので、教室のモニターを使いながら復習することができます。ぜひ活用してくださいね。

Q. 最近、子どもたちへ声がかけにくいです......。あいさつや声かけのコツ、注意点などはありますか?(見守りボランティア)
A. 子どもの様子をみながら、あいさつや健全な声かけをしてみましょう!

「心配な児童へ声をかけたら、避けられた......」「見守り中にあいさつをしたら、無視された......」など、各地で見守りボランティアの方たちと子どもたちとの間で生じるコミュニケーション不全に関するお悩みをたくさんいただきます。一因は、「知らない人に気をつけろ」「不審者に注意」といった防犯指導のあり方にあります。ただちに調整がもとめられており、私も各所に働きかけていますが、まだまだ時間がかかりそうです。また、長期のコロナ禍を経て、身近な大人以外の人とのコミュニケーションが苦手な子どもたちが増えたようにも思います。そして、このことは、ピンチの際に「たすけて!」が言えない、逃げることができない、といった防犯的な問題を生じさせています。見守りを行う皆さんによるあいさつや健全な声かけは安全のためにも重要な要素です。緩やかな人と人とのつながり合いこそが「子どもだけになる瞬間」を減らし、犯罪を遠ざける予防力となり得るからです。ためらわず、ひるまずに声をかけていただければと思います。

なお、声かけにはコツもあります。たとえば、声のボリューム。大きな声でハキハキとあいさつするのは、子どもたちへのプレッシャーになるかもしれません。小さな声、笑顔、会釈、手を振るなど、子どもの様子を見ながらあいさつの方法を調整いただくことがもとめられます。なお、過度に触る、飴や飲み物をあげるといった行為はやめましょう。また、保護などの緊急時以外に車や自宅へ招き入れることは違法行為となりますので、絶対にやめましょう。

Q. 通学路の見守りボランティアは、災害発生時の助け合いの底力にもなりますか?(自治体職員)
A. 見守り・助け合いは、防犯を超える底力になります!

仕事柄、各地の自治体職員や警察官の皆さんと情報交換する機会も多いです。防犯に特化すれば、「ボランティアの人数が減ってきた......」「子ども110番の家が減少している......」といった課題が目立ちます。一方、見守り・助け合いの実践のあり方は防犯分野だけではありません。地域の人々の暮らしを見守る民生委員・児童委員をはじめ、青少年育成、交通安全、高齢者の見守りに関わる方々、そして自治会等の地域活動団体と、あらゆるところで防犯だけでなく防災にも取り組まれています。私が各地で出会う皆さまの中には、防犯と「兼務」している方たちも多いのですが、それだけ各分野とも親和性が高いと言えるのではないでしょうか。とくに災害発生時は、長期的な見守り・助け合いがもとめられます。自治体等の公助だけでは行き届かない部分を支えることができるのは地域の底力です。その底力は突然生まれるものではなく、日頃からの地道な取り組みによって育まれていくものです。通学路や子どもたちの見守り、若者や高齢者の見守りなど、一見すると防災と直結しない地域活動こそが底力となり得るのです。

地域活動の担い手不足が広がる昨今、そろそろ分野を超えて「見守り・助け合い」の底力を結集する試みが始まってもよいのかもしれません。そのための一歩として、協働・支援・所管する自治体等の関係機関が分野横断的に連携することがもとめられています。

Go! Go!! 市民防犯推進プロジェクト

市民防犯インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの実践活動を経て、2006年よりフリーの講師として活動。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施するほか、中央省庁の助言も務める。こどもたちを対象とした体験型の防犯セミナーも好評を得ている。著書には「活かそうコミュ力!中高生からの防犯」(ぺりかん社)ほかがある。



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