公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2020年活動報告|学校現場における病気を抱える子どもの支援課題調査と啓発事業

認定特定非営利活動法人ポケットサポート

病気・障がいを抱える子どもの学び支援

1年間の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。 事業の詳細などは以下からご覧ください。


2020年活動報告|学校現場における病気を抱える子どもの支援課題調査と啓発事業



事業の目的 事業の内容 結果 成果 自己評価 課題および今後の展望

事業の目的

・白血病などの小児がんや先天性の心臓の病気などの難病治療のため長期入院や療養を余儀なくされた子どもは、院内学級に通級することになる。新しい学習環境や友人関係に戸惑うことが多く、不安も大きい。また長期入院の後、退院してもすぐに体調が戻るわけではなく、復学も困難である。命を救うために必要な治療や感染症対策等により行動や食事が制限されており、「子どもらしく遊ぶ、学ぶ、体験するといった、将来の成長発達のために必要な子ども時間」が十分に保障されていない。

・これまでのICTを活用した学習支援や地域連携コーディネートを展開する中で、子どもたちや保護者の要望にできる限り対応できるよう教育委員会や学校・医療機関と協力して取り組みを進めてきた。しかし、学校現場において長期療養している子どもの担任になる機会は少なく、どのように関わり、どのような配慮や支援が必要なのか、先生方の不安や悩みが大きいと感じている。

・病気や年齢など個別性の高い病気を抱える子どもたちの支援において、当団体のこれまでの様々な支援ノウハウを活かすためにも、学校現場の先生方(担任教諭や養護教諭)がどのような悩みや支援策を望んでいるのかをアンケート調査し、今後の子どもたちの支援活動や学校現場との連携強化に活かしていきたい。

事業の内容

①学校現場における病気を抱える子どもたちの支援課題およびニーズ調査と調査報告書作成
⇒岡山県内の小学校、中学校、高校、特別支援学校を対象とした養護教諭へのアンケート調査実施

②学校現場における病気を抱える子どもたちの教育支援を考えるシンポジウム開催
⇒アンケート調査から見えてきた課題や、県外各地域で展開されている取り組みなどの情報共有

③入院中でも子どもの学びを支え孤立させないオンライン支援~ 保護者・医師・支援団体の思い ~【事業追加】

⇒コロナ禍で入院中の子どもたちの支援拡充や啓発を目的としたYouTube配信を実施

結果

■岡山県内の学校現場における病気を抱える子どもたちの支援課題及び事例に関するアンケート調査
・対象:岡山県内の小学校から高等学校、特別支援学校
・回答期間:2020年8月~9月末/配布649校 回答数273校(回収率約42%)
(詳細はこちらをご覧ください→

アンケート調査紙については、大守 伊織先生(岡山大学大学院教育学研究科教授)、森 宏樹先生(就実大学教育心理学科教授)、平賀 健太郎先生(大阪教育大学教育学部准教授)にご助言をいただき作成しました。また、岡山県教育委員会特別支援教育課、岡山市保健福祉局保健所健康づくり課からも本調査紙にコメントを寄せていただきました。完成した調査報告書は岡山県内だけでなく、全国の医療機関及び教育委員会などにも調査報告書を配布しました。

アンケート調査報告書冊子


■「入院中でも子どもの学びを支え孤立させないオンライン支援」(2020年8月2日開催)※事業追加
・視聴者:全国各地から126名が参加
(詳細はこちらをご覧ください→

香川で病気を抱える子どもたちの支援活動をしている「NPO未来ISSEY」の代表の吉田ゆかりさんから「病気を抱える子どもの家族の立場で入院中の学習はなぜ必要か?」、ポケットサポートが支援活動を行っている国立岡山医療センター小児科医の樋口洋介先生から「小児科医師の立場で入院中の子どもの学びをどう支えるか?」と、それぞれの題で講演いただき、ポケットサポートの三好とのトークセッションを行いました。

吉田さんからは
 ①学び続けること
 ②入院中の非日常を、学びによって日常に戻してくれる
 ③学ぶことは孤独を解消し人間関係を広げる
 ④学習習慣による自己管理
 ⑤学力を下げない(学びを止めない)
とわかりやすく5つのポイントでお話いただき、樋口先生からは新型コロナウイルス禍で小児病棟での対面支援が休止となってからオンラインでの支援活動の導入に至る経緯や、勤務する病院に入院している子どもたちの現状についてお話いただきました。

「入院中でも子どもの学びを支え孤立させないオンライン支援」(2020年8月2日開催)


■学校現場における慢性疾病を抱える子どもたちの支援課題および事例に関するアンケート調査報告シンポジウム
・2021年2月28日にオンラインYouTubeライブ配信で開催
・視聴者は346名/参加者アンケート回答は117名
(詳細はこちらをご覧ください→

大阪教育大学の平賀健太郎先生から「病気の子どもたちを取り巻く現状と課題」、京都女子大学の滝川国芳先生からは「病気を抱える子どもの教育を守るために」という題で登壇・講演いただき、各先生方とポケットサポート代表理事の三好祐也とのトークセッションを行いました。先生方の許可をいただきシンポジウム当日の発表スライドと、トークセッションも含めた当日の様子を録画編集したアーカイブ版動画を公開させていただきました。報告会の中では、文部科学省特別支援調査官の深草瑞世先生、国立成育医療研究センターの理事長でベネッセこども基金の理事長でもある五十嵐隆先生からもメッセージをいただきました。

アンケート調査報告シンポジウム(2021年2月28日開催)

成果

アンケート調査報告書の発送後、来年度の岡山市教育委員会の養護教諭研修で発表および講習を行う依頼をいただきました。今回の事業により、市内の学校や教員との連携が前進したと成果を感じています。また、アンケート調査報告シンポジウムのアンケートも学校教員をはじめ、当事者やご家族、医療関係者、行政関係者など117名の回答を得ることができ、内容からも課題を感じて頂くことや他地域でも取り組みを進めていきたいなど前向きな回答を得ることができました。病気の子どもたちが置かれている環境の理解が深まったことに加え、当団体のような病気の子どもたちの支援団体の認知、支援の拡充につながっていく一定の成果を感じることができました。

シンポジウム等のアーカイブ動画配信:
(こちらをご覧ください→

成果物:
アンケート調査用紙、アンケート調査報告書、各イベントの参加者アンケート結果、イベント広報チラシ、団体公式ホームページおよび活動ブログでの記事掲載

課題および今後の展望

アンケート調査結果から、復学支援に関する知識やノウハウが共有されづらい状態にあり、事例共有や研修の場が必要な事がわかりました。分析を行うことで慢性疾病の子どもたちが、学校へ復学し安心した生活を過ごすために「学習支援」や様々な関係機関との「連携」「情報の共有」、先生方が慢性疾病の子どもの担当になった際の「相談先」や「専門的な知識を学ぶ場」が必要という事が示唆されました。今回得られた課題から、来年度は関係機関との「連携」を行う事業、そして先生方の「相談」や「専門的な知識を学ぶ場」を作る、教育と医療が近づくための講演会事業などを展開する予定としています。

当団体としては初めての試みでしたが全国規模でオンラインシンポジウムを開催することができ、全国の支援者等とつながることができました。コロナ禍というピンチをチャンスに変えて、オンラインの強みを最大限に活かしながら事業展開や寄付者とのコミュニケーションを密にしながら、助成金だけに頼らない組織基盤強化やマーケティングを行い、個人や企業からの資金調達にもより一層力を入れていきます。

新聞掲載記事(山陽新聞2021年2月22日朝刊)

認定特定非営利活動法人ポケットサポート

代表理事

三好 祐也さん

5歳で慢性のネフローゼ症候群を発症。義務教育のほとんどを病院で過ごす
岡山大学経済学部卒業
岡山大学大学院保健学研究科修士課程修了
研究テーマ:病弱教育、院内学級
自身の経験を通じて10年以上にわたり、病弱児の学習・復学などの自立支援と環境理解のための講演活動を行う。講演は学会や大学、小・中学校、福祉関係など多岐にわたっている。

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